あなたの隣で夢を見る。

マイユニ

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  今日も飽きずにハルさんの動画をチェックする。
 相変わらず新作は上がらない。
 そういえば、僕と初めてしたときの動画は上げないのだろうか?
 あれ、その後は撮ってないけど良かったのかな?

 好きな子って僕だったりしないよね……?
 そんな事ありえないって思っているのに、心のどこかでそうだったらいいのにと思ってしまう。
 ハルさんが僕にとって憧れの存在であることには変わりない。
 でも憧れだけでは片付けられない想いを抱くようになっている。

 ここ最近は忙しいみたいで会えていない。
 動画を見ていたら少しムラムラしてきた。

 手を伸ばして、少し勃ちはじめたものを触る。
 あっ、ディルドとローション出しておかなきゃ。
 お気に入りのディルドを置いて、動画に集中する。
 はぁ、かっこいい。
 この人が自分を何度も抱いてくれてるなんて信じられない。

「ハァ……ハルさん……
 アッアッ――」

 いつの間にか動画ではなくていつも抱いてもらってるハルさんの姿を思い出していた。
 僕を見つめる眼差し、息遣い、いつもどんな風に触れられているか……鮮明に思い出せる。
 ハルさんは僕が望む事を何でも叶えてくれる。
 指を挿れて、物足りなさを感じる。
 ハルさんの指ならもう少し奥まで入るのに。
 指をやめてディルドを取り出す。

「ンッ……」

 ハルさんとエッチするようになってから、出番がなかったディルド。
 こんなんだったかな……。
 前までこんなふうにしていたはずなのに……。

「アッ……」

 必死に動かして快感を得ようとするけれど、前のようにうまくできない。

「ンッ……ンッ――」

 ダメだ……。
 うまくイケない……。
 諦めてディルドを取り出す。
 不完全燃焼のまま横たわる。
 ハルさんがいい。
 目を閉じてハルさんを思い浮かべているとインターホンが鳴った。

 どうしよう、出られる状況じゃない。
 そのままいないふりをした。
 また鳴った。
 無視すると、また鳴った。

 しつこいな。
 ティッシュで拭いて立ち上がり画面を確認した。
 玄関のインターホンを鳴らすのはハルさんしかいない。 
 慌ててパンツとズボンを履いて玄関に行きドアを開けた。

「ハルさん?」

「入ってもいい?」

 あっ、マズイ
 全部出したままだ。

「ちょっと待ってもらえませんか?」

「待てない」

「……じゃあどうぞ」

 どうしよう。
 見られたくない。

 部屋に入ってベッドの上に散乱しているディルドやらティッシュやらを見られてしまう。

「声聞こえたんだけど、やっぱりやってたんだ」

「すみません、また聞かせてしまって」

「なんで1人でやってるの?
 なんで俺に連絡しないの?
 1人でやる方がいい?」

「そうじゃないけど
 ハルさんにエッチして下さいなんてお願いできないし」

「は?
 それで1人でやってたの?」

「はい」

「ねぇ、俺がさ、
 なんでゆうくんの家に来たりホテルとかご飯に誘ったりしたと思う?」

「ご近所だから……?」

「そんな訳ないでしょ
 ゆうくんが好きだからだよ」

「えぇ!?」

「こんなにアプローチしてんのにぜんっぜん気付かないし」

 パニック。
 僕がハルさんの好きな人!?

「俺の事好き?嫌い?
 どっち?」

「そりゃ好きです」

「じゃあさ、俺と付き合ってくれない?」

「僕とハルさんが恋人になるんですか!?」

「いや?」
 
「嫌じゃないです」

「金曜日の夜空いてる?」

「はい、空いてます」

「初めて会ったカフェで待ち合わせ
 その後ホテル行くから」

「ホテルですか?」

「俺がどれだけ好きか、まずはその体に教え込むから
 ここじゃ本気出せないし」

「本気……」

「今日は優しく抱いてあげる
 いってないでしょ、まだ?」

「分かりますか?」

「イクときの声じゃなかった」

「1人じゃ全然イケなくて
 いいんですか?」

「当り前じゃん
 おいで」

 ハルさんに近づいた。
 優しくキスをしてくれた。

「ハルさんとしたいって思ってたんです
 ハルさんじゃなきゃダメだって」

「はぁ、やっぱりかわいいね、ゆうくんは
 俺じゃなきゃダメな体になったんだ」

 キスをしながら服を脱がされる。

「んッ……はい……」

「今日はどうして欲しい?」

「いつもみたいにいっぱいキスしながら奥突いて欲しい」

「分かった」

 絶え間なく押し寄せる快感に身を委ねた。
 欲しかったものを与えられて、心も体も満たされる。

「ゆうくん、こっち来て」

 優しくキスをして抱き寄せられた。

「あの、ハルさん」

「ん?」

「動画ってもう上げないですよね?」

「やめるに決まってるでしょ
 ゆうくん以外とするとかおかしいじゃん」

「そうですよね……消さないですよね?」

「全部消すよ」

「えっ、消しちゃうの!?」
  
「なんでここに俺がいるのに、そんなに動画がいいの?
 ショックなんだけど」

「だってハルさんを見る事が習慣になってるから」

「じゃあ、データあげるよ」

「いいんですか!?」

「そんな喜ぶんだ……
 生身の俺の事もちゃんと見てね」

「ちゃんと見てます
 僕と最初に撮った動画はあげなかったんですか?」

「誰にも見せる訳ないでしょ
 あれは特別なものだから」

「そっそうなんですか」

 何だか照れてしまう。

「はぁ、帰りたくなくなるな」

「お仕事ですよね?」

「うん
 ゆうくんは?」

「明日は午後だけです」

「ふーん、そうなんだ」

 ハルさんが体制を変えて僕に覆いかぶさってきた。

「あの、ハルさん?」

「ちょっとくらい無理させても平気だよね?」

「えっ、いや、そんな事は」

「もうちょっと付き合って」

 そう言ってまた僕の中に入ってきた。
 あぁ、ダメだ。
 絶対に断れない。
 この気持ちよさを知ってしまっているし、何よりも僕はハルさんのことが好きだから。
 そうして、ハルさんが満足するまで僕はいかされ続けた。

◆◆◆

 最近忙しくてゆうくんに会えていない。
 ゆうくんが不足している。
 顔が見たい、声が聞きたい。

 疲れた……。
 帰宅して床に倒れ込む。
 ゆうくんは何をしているんだろうか。
 壁にもたれて目を閉じかけた俺の耳にゆうくんの声が聞こえて一気に目が覚めた。

「ンッ……」

 は?何やってんの。
 なんで1人で?
 連絡してって言ったじゃん。
 切なげに俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。

 また俺の動画見てんの?
 画面の中の自分にどうしようもなく嫉妬する。
 なかなかイケないみたいで、声が途切れた。
 イライラして、玄関を出てゆうくんの部屋に向かった。

 インターホンを鳴らしても出ない。
 しつこく鳴らしているとドアが開いた。

 待ってほしいと言われたけど、待てないと言って部屋に入った。
 はぁ、やっぱりな。
 1人でしていた痕跡が残ったまま。

 気まずそうに目を伏せているゆうくんを問いただす。
 なぜ誘ったと思うか聞いたらご近所だから?と返ってきた。
 笑いそうになった。
 なんの気もない子を誘うわけないのに。
 本当に鈍い子だな。
 今までも自分に向けられてる好意に気づいてなかっただけじゃないの?
 まぁいい、おかげで彼の初めてをもらえたんだから。

 ゆうくんが好きだと告げるとものすごく慌てふためいた後に顔が赤くなった。
 畳み掛けるように好きか嫌いか聞くと好きですと返ってきた。
 まぁ嫌われてはないと思ったから聞いたんだけど。
 付き合うことを受け入れてもらえて安心する。
 無理やり感は否めないし、好きの重さは違うかもしれないけれど。
 ゆうくんにまずは体から教え込もうと金曜日にホテルへ誘った
 しっかりと体感してもらうから。

 イケていなかったゆうくんを優しく抱いてあげる。
 かわいい声で喘ぐゆうくん。
 誰にも聞かせたくないから程々にしたいのに、俺の欲はおさまらない。
 散々いかせた後に、俺もゆうくんの中に精を吐き出した。

 ゆうくんがこの期に及んでまた動画の事を聞いてきた。
 全部消すと言うとショックを受けた。
 その姿にショックを受ける。
 とりあえずデータをあげると伝えると喜んだ。
 いいけどさ、俺はここにいるんだけどね。
 いつか俺自身のことを本気で好きになってくれるだろうか。
 
 最初に撮った動画の事を聞かれた。
 誰にも見せるわけがない。
 こんなにかわいい姿を見るのは俺だけでいい。
 特別なものだと言うとまた赤くなった。
 反応がかわいすぎる。

 ゆうくんと離れたくない。
 つい本音がこぼれ落ちた。
 明日は昼からだと聞いた俺は、じゃあもうちょっと堪能しようとゆうくんに覆いかぶさる。
 戸惑うゆうくんを無視して、また襲いかかった。
 ごめんね、やめてあげられなくて。
 好きだから、もっともっと俺を感じてほしいから。
 ゆうくんの体に跡を刻みまくって、もう無理だというゆうくんの奥まで挿れて俺の欲を全部吐き出した。

 涙を浮かべるゆうくんにそっと口づける。

「ごめん、またやってしまった」 

「いい、ハルさんのこと好きだから
 いっぱいしてもらえて嬉しい」

 ここにきてそんな事言う?
 どこまで俺を翻弄したら気が済むんだろう。

「俺の事ほんとに好きなの?」

「うん、好きだよ」

「憧れじゃなくて?」

「そうじゃなくて、なんていうか……
 ハルさんと同じ気持ちなんだけど
 伝わってる?」

 顔を赤くしながら懸命に伝えてくれる。
 俺と同じ……。

「ありがとう」

 思いっきり抱きしめた。

「ハルさん、苦しいよ」

「ごめん、嬉しくて」

 体を離して、ゆうくんを見つめた。
 ゆうくんも俺を見つめてくれる。
 幸せな瞬間。

「シャワー浴びよっか?」

「一緒に?」

「一緒に」

「うん」

 恥じらう顔がかわいくてどうにかなりそう。
 シャワーを浴びると予想通り帰るのが嫌になった。

「朝起こさないようにするから、泊まってもいい?」

「いいよ
 ギュッてしてくれる?」

「うん、こっち来て」

 ゆうくんを抱きしめて眠りについた。

 アラームの音で目を覚まし、慌てて止める。
 ゆうくんが少し目を開けていた。

「ごめん、寝てて」

「ハルさん玄関まで見送ってから寝る」

 朝から嬉しくてテンションが上がる。
 このかわいい子が俺のものになった。
 着てきた服を持って帰ろうしたら洗濯しとくよと言うからそのままにした。

「じゃあ借りてるやつ洗っとくから」

「うん
 ハルさんお仕事頑張ってね」

「また夜来てもいい?」

「うん、待ってるね
 行ってらっしゃい」

 行きたくない。
 けど行かないわけにはいかない。

「行ってきます」

 ため息をついて、自分の部屋に戻った。
 
 仕事が終わったらゆうくんに会える。
 多分我慢できなくて今日もやっちゃうんだろうな。
 なんであんなにかわいいんだろう。
 さっきまで一緒にいたのにもう会いたくなる。
 重症だな……。

 もう寝たかな。
 ダメだ、ゆうくんのことばっかり考えてたら遅刻する。
 今はひとまず考えることをやめよう。
 頭を振って、家を出る準備を始めた。
 
◆◆◆

 ハルさんを見送って、大きく伸びをする。
 もう少し寝ようかな。
 ハルさんの来ていた服を持ってベッドに入る。
 クンクンと匂いを嗅いだ。
 ハルさんの匂い。
 香水をつけているのか分からないけれど、いつもとてもいい匂いがする。

 ハルさんが僕を好きだと言ってくれた。
 初めてできた恋人がずっと憧れていた人だなんて、こんな奇跡が起きると思わなかった。
  
 僕なんかのどこが良かったんだろう。
 分からないけれど、嫌われないように頑張らなきゃ。

 今日はするのかな。
 昨日いっぱいしたからさすがにしないか。
 金曜日の夜も約束してるし。
 ハルさんの本気ってどんなのだろう。
 今までのが本気じゃないっていうのが信じられないんだけど……。

 ハルさんの部屋にも行ってみたいな。
 いつも来てくれるから。
 今度お願いしてみよう。

「ハルさん、好き……」

 声に出して呟くと、とても恥ずかしくなってしまった。
 さっきまで隣にあった温もりがなくなって寂しくなってくる。
 ハルさんの服を顔の近くに置いた。
 匂いを嗅いだら余計に寂しくなってきたから抱きしめることにした。 
 
 少し眠くなってきた。 
 早く夜にならないかな……。
 ハルさんの事を想いながら、僕はゆっくりと瞼を閉じた。
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