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10話 戦艦にて
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「古代の飛行戦艦……マジらしいな……」
ドンキホーテさんは船内の装飾や何かしらの計測機器を見つめてそう呟く。
「これはスピードメーター? 魔力バリアの残量が可視化されたバリアメーターまである……古代機械文明の後期……滅亡期間近に作られた奴みたいだな」
ドンキホーテさんはそう言うと笑った。自信に満ちたその表情でスイケシュさんを見つめた。
「やれるなスイケシュ」
「ふん、確かにこの戦艦ならあの東京にも近づけそうだな」
まさかこの二人は……。
「二人だけであの東京に行くつもりですか?!」
「東京? ああ、あの空飛ぶ異世界の国か……」
ドンキホーテさんは冷静にそう返すとうなずいた。
「ああ、多分だが……今、離れればタイミングを逃す、今は同盟国の領地内だが……あの東京……だんだんアバール国の、敵国の領地内に移動している。やるなら今しかない」
二人の覚悟は本物だ、てっきりこのまま本隊と合流すると思ったが、ドンキホーテさんの言葉の通りならば……今、やるしかない。
オレはドンキホーテさんとスイケシュさんに頭を下げる。
「トオル?」
「どうした急に頭が重くなったか?」
ドンキホーテさんとスイケシュさんが訝しむ。
「ありがとう……ございます……! オレ……オレ……飯まで貰った上に……」
ただ、感謝が口から溢れた。
この二人はもう仲間が全滅している本来オレを助ける道理なんてない。救援要請だって無視をすればよかった。
なのにオレの家族のためにオレの街のために、命を本気でかけてくれる。
それがただ嬉しかった。
「バカが」
するとスイケシュさんからそんな言葉が溢れる。
「お前は俺達に感謝することなどない。俺たちは当然とされることしかやっていない」
「出た照れ隠し」
「殺すぞドンキホーテ」
オレは笑う。
「それでもオレは感謝したいんですよ二人に」
いつかオレも14人目に受け継ぐその時が、死が来るかもしれないのだから。
「利用権限を持つユーザーを確認しました!! こんちは!!」
こんちは? 唐突に艦内にそんな言葉が響いたかと思うと、ブリッジの各計器類が弧を描いて並ぶその中心のスペースに床のハッチが開き、中からそいつは飛び出してきた。
「はい! 出ました! 私です!!」
鋼鉄のボールに可愛らしい楕円形の目が二つ、トサカのある兜を被ったマスコットみたいなやつが現れた。
「どうも戦艦ヘイローウィングの管理補助機構アレスです!」
その鉄のボールはコロコロと転がりながら俺たちのいるブリッジ全体が見渡せる操舵輪のところへと移動してくる。
「え、と桜間トオル様ですね? 妹と父がお世話になっています」
「妹と父?」
疑問を浮かべたその時、オレの視界の端、ブリッジの計器類がある場所にタイプライターとアリスが現れる。
「久しぶりだなアレス」
「そちらにおいででしたか! 父さん」
アレスとタイプライターはその口ぶりからしてどうやら親子の様だ。
ではつまりこの船もあのタイプライターが関与しているのだろう。
「タイプライター?」
ドンキホーテさんが首を傾げる。
「あ……」
しまった。オレは思わず声を挙げた。このアレスの声、ドンキホーテさん達にも聞こえるのか?
確かに先ほど艦内に響き渡っていたが、対面はテレパシー的な感じで喋っているのかと思ったじゃないか!
「アレスは実態を持つ機械だ、テレパスなど使えん」
タイプライターがそう言った。クソ! こんな時になんか面倒ごとが起きそうな予感がする!
「トオル……君の神ってタイプライターなのか?」
ほら、ドンキホーテさんが苦い顔をしている。
どういう感情なんだ?! その顔、なんか犬のフンでも踏んだ様な顔じゃないか!
「ファック」
スイケシュさんに至ってはシンプルに暴言が出た。
「まさか、古代機械文明を滅ぼした神がお前に加護を授けているとはな……」
は?
「しかもその様子だと神格そのものが常時周りにいるだろう? 全く……」
オレは恐る恐るタイプライターを見る。嘘だよな、そんな怖い……いや見た目は異形だけどそんな酷いことをする奴じゃ……。
アリスは肩をすくめている。え、なんだよその態度、え? まさかほんとに……。
「気にするなトオル、若気の至りだ」
気にするわ、ボケ。
「まあ、気にすんなよトオル。タイプライターは邪神じゃない! ちょっと公平性に頭やられてるだけだ」
「そうだ、大丈夫だ。気の難しすぎるジジイだと思えばいい……ああ、学校の風紀にクソうるさい教師から人間性と情熱を引いた奴だと思えばいい」
タイプライター……。
「なんだトオル?」
お前……何やったんだよ。
「黙秘する」
……怖いよぉぉ!!
─────────────
勇者歴2100年 5月12日 時刻19時30分、アバール国国境付近、『東京』にて。
「レンナール様」
空を飛ぶつぎはぎの東京。そのスクランブル交差点に貼られたテントの中で紅いローブを纏った男が目を覚ました。
その男こそ、アバール国の大魔導士“レンナール・フィンラル"。空を飛ぶ東京を呼び出した張本人である。
「……吉報か?」
レンナールは静かにそう言いながら、座禅を解いた。
精神統一の邪魔をされた。
士官用の一段と大きいテントの中心で、イラつきを隠そうともせず報告に来た背後の兵士にぶつける。
「……その、それが……例の逃亡者を追った隊の……連絡が途絶えました」
レンナールは指揮棒の様に人差し指を振るう。
その時だった、レンナールの背後にいた兵士の左腕が吹き飛ぶ。
「が!? ああああ!!!」
「なんど言わせる気だ?」
レンナールのイラつきが明確な殺意に変わる。
「私の命令は一つだけだ。脱走し邪神の加護を受けたあのガキを捕らえ持ってこい……それだけだ、それだけが……なぜできない?」
「す、すみっ……! すみません! お許しを! た、ただ私は連絡係でして!!」
レンナールはうずくまる兵士を見下し、頭を踏みつけた。
「なあ、貴様ら無能は何ならできるんだ? 私が召喚してやった異世界の生贄どもは貴様らが対空監視を怠ったせいでソール国第13騎士団に見つかり今も結界内……この異世界の四角い城の中に籠城されている……」
レンナールは踏みつける足に体重をこめた。「うぐぁ」と兵士が叫びをあげる。
「さらには、警備の隙をつかれ脱走まで許す。私に教えてくれないか? 貴様らは私の味方か? それとも敵か?」
すると兵士はすがる様に言った。
「お、お許しを異世界の建物に急に囲まれ! と、土地勘もなく! 対応が! こ、これ以上の失態は絶対に──!」
しかし、そのすがる様な懺悔が、言い訳がレンナールの感情のダムにヒビをいれた。
「……貴様ぁ!!」
レンナールは兵士の頭を思い切り蹴り上げる。
「私が!」
兵士の頭が蹴りの力で浮き上がったところをさらに踏みつけ、
「生贄を!」
さらにまた頬を砕く様に兵士の顔に蹴りを入れた。
「召喚したせいで! こうなったと言いたいのかぁ!!」
レンナールはさらに蹴り続ける。
「私は悪くない! 私は悪くない!! 私は最高の効率で! 最高の最善で!」
レンナールは蹴る、蹴る、蹴る。そして蹴り上げる。
「私は全力を挙げて国に! 民に! 愛を捧げているのに!! 貴様はそれを愚弄するのか?! ああ!?」
やがて、兵士がもはや返事ができないことを悟るとレンナールは舌打ちをした。
「ストレス発散にも使えん……ゴミ以下の命が……!!」
レンナールが苛立ちを覚えながら、再びテントの中心に戻ろうとしたその時だった。
再びテントの中に兵士が現れる。
「レンナール様……!! うあっ!?」
兵士はレンナールのテントの中にあった蹴り殺された死体に驚きながらそれでも、叫んだ。報告すべきことを。
「見知らぬ飛行戦艦が高速接近中です! 数は一隻!」
レンナールはその兵士の首を風の魔法で吹き飛ばしながら、テントを切り裂き、空中へと飛んだ。
そして彼方より近づいてくる、それを睨みつける。
「来たか……あのガキが!!」
ドンキホーテさんは船内の装飾や何かしらの計測機器を見つめてそう呟く。
「これはスピードメーター? 魔力バリアの残量が可視化されたバリアメーターまである……古代機械文明の後期……滅亡期間近に作られた奴みたいだな」
ドンキホーテさんはそう言うと笑った。自信に満ちたその表情でスイケシュさんを見つめた。
「やれるなスイケシュ」
「ふん、確かにこの戦艦ならあの東京にも近づけそうだな」
まさかこの二人は……。
「二人だけであの東京に行くつもりですか?!」
「東京? ああ、あの空飛ぶ異世界の国か……」
ドンキホーテさんは冷静にそう返すとうなずいた。
「ああ、多分だが……今、離れればタイミングを逃す、今は同盟国の領地内だが……あの東京……だんだんアバール国の、敵国の領地内に移動している。やるなら今しかない」
二人の覚悟は本物だ、てっきりこのまま本隊と合流すると思ったが、ドンキホーテさんの言葉の通りならば……今、やるしかない。
オレはドンキホーテさんとスイケシュさんに頭を下げる。
「トオル?」
「どうした急に頭が重くなったか?」
ドンキホーテさんとスイケシュさんが訝しむ。
「ありがとう……ございます……! オレ……オレ……飯まで貰った上に……」
ただ、感謝が口から溢れた。
この二人はもう仲間が全滅している本来オレを助ける道理なんてない。救援要請だって無視をすればよかった。
なのにオレの家族のためにオレの街のために、命を本気でかけてくれる。
それがただ嬉しかった。
「バカが」
するとスイケシュさんからそんな言葉が溢れる。
「お前は俺達に感謝することなどない。俺たちは当然とされることしかやっていない」
「出た照れ隠し」
「殺すぞドンキホーテ」
オレは笑う。
「それでもオレは感謝したいんですよ二人に」
いつかオレも14人目に受け継ぐその時が、死が来るかもしれないのだから。
「利用権限を持つユーザーを確認しました!! こんちは!!」
こんちは? 唐突に艦内にそんな言葉が響いたかと思うと、ブリッジの各計器類が弧を描いて並ぶその中心のスペースに床のハッチが開き、中からそいつは飛び出してきた。
「はい! 出ました! 私です!!」
鋼鉄のボールに可愛らしい楕円形の目が二つ、トサカのある兜を被ったマスコットみたいなやつが現れた。
「どうも戦艦ヘイローウィングの管理補助機構アレスです!」
その鉄のボールはコロコロと転がりながら俺たちのいるブリッジ全体が見渡せる操舵輪のところへと移動してくる。
「え、と桜間トオル様ですね? 妹と父がお世話になっています」
「妹と父?」
疑問を浮かべたその時、オレの視界の端、ブリッジの計器類がある場所にタイプライターとアリスが現れる。
「久しぶりだなアレス」
「そちらにおいででしたか! 父さん」
アレスとタイプライターはその口ぶりからしてどうやら親子の様だ。
ではつまりこの船もあのタイプライターが関与しているのだろう。
「タイプライター?」
ドンキホーテさんが首を傾げる。
「あ……」
しまった。オレは思わず声を挙げた。このアレスの声、ドンキホーテさん達にも聞こえるのか?
確かに先ほど艦内に響き渡っていたが、対面はテレパシー的な感じで喋っているのかと思ったじゃないか!
「アレスは実態を持つ機械だ、テレパスなど使えん」
タイプライターがそう言った。クソ! こんな時になんか面倒ごとが起きそうな予感がする!
「トオル……君の神ってタイプライターなのか?」
ほら、ドンキホーテさんが苦い顔をしている。
どういう感情なんだ?! その顔、なんか犬のフンでも踏んだ様な顔じゃないか!
「ファック」
スイケシュさんに至ってはシンプルに暴言が出た。
「まさか、古代機械文明を滅ぼした神がお前に加護を授けているとはな……」
は?
「しかもその様子だと神格そのものが常時周りにいるだろう? 全く……」
オレは恐る恐るタイプライターを見る。嘘だよな、そんな怖い……いや見た目は異形だけどそんな酷いことをする奴じゃ……。
アリスは肩をすくめている。え、なんだよその態度、え? まさかほんとに……。
「気にするなトオル、若気の至りだ」
気にするわ、ボケ。
「まあ、気にすんなよトオル。タイプライターは邪神じゃない! ちょっと公平性に頭やられてるだけだ」
「そうだ、大丈夫だ。気の難しすぎるジジイだと思えばいい……ああ、学校の風紀にクソうるさい教師から人間性と情熱を引いた奴だと思えばいい」
タイプライター……。
「なんだトオル?」
お前……何やったんだよ。
「黙秘する」
……怖いよぉぉ!!
─────────────
勇者歴2100年 5月12日 時刻19時30分、アバール国国境付近、『東京』にて。
「レンナール様」
空を飛ぶつぎはぎの東京。そのスクランブル交差点に貼られたテントの中で紅いローブを纏った男が目を覚ました。
その男こそ、アバール国の大魔導士“レンナール・フィンラル"。空を飛ぶ東京を呼び出した張本人である。
「……吉報か?」
レンナールは静かにそう言いながら、座禅を解いた。
精神統一の邪魔をされた。
士官用の一段と大きいテントの中心で、イラつきを隠そうともせず報告に来た背後の兵士にぶつける。
「……その、それが……例の逃亡者を追った隊の……連絡が途絶えました」
レンナールは指揮棒の様に人差し指を振るう。
その時だった、レンナールの背後にいた兵士の左腕が吹き飛ぶ。
「が!? ああああ!!!」
「なんど言わせる気だ?」
レンナールのイラつきが明確な殺意に変わる。
「私の命令は一つだけだ。脱走し邪神の加護を受けたあのガキを捕らえ持ってこい……それだけだ、それだけが……なぜできない?」
「す、すみっ……! すみません! お許しを! た、ただ私は連絡係でして!!」
レンナールはうずくまる兵士を見下し、頭を踏みつけた。
「なあ、貴様ら無能は何ならできるんだ? 私が召喚してやった異世界の生贄どもは貴様らが対空監視を怠ったせいでソール国第13騎士団に見つかり今も結界内……この異世界の四角い城の中に籠城されている……」
レンナールは踏みつける足に体重をこめた。「うぐぁ」と兵士が叫びをあげる。
「さらには、警備の隙をつかれ脱走まで許す。私に教えてくれないか? 貴様らは私の味方か? それとも敵か?」
すると兵士はすがる様に言った。
「お、お許しを異世界の建物に急に囲まれ! と、土地勘もなく! 対応が! こ、これ以上の失態は絶対に──!」
しかし、そのすがる様な懺悔が、言い訳がレンナールの感情のダムにヒビをいれた。
「……貴様ぁ!!」
レンナールは兵士の頭を思い切り蹴り上げる。
「私が!」
兵士の頭が蹴りの力で浮き上がったところをさらに踏みつけ、
「生贄を!」
さらにまた頬を砕く様に兵士の顔に蹴りを入れた。
「召喚したせいで! こうなったと言いたいのかぁ!!」
レンナールはさらに蹴り続ける。
「私は悪くない! 私は悪くない!! 私は最高の効率で! 最高の最善で!」
レンナールは蹴る、蹴る、蹴る。そして蹴り上げる。
「私は全力を挙げて国に! 民に! 愛を捧げているのに!! 貴様はそれを愚弄するのか?! ああ!?」
やがて、兵士がもはや返事ができないことを悟るとレンナールは舌打ちをした。
「ストレス発散にも使えん……ゴミ以下の命が……!!」
レンナールが苛立ちを覚えながら、再びテントの中心に戻ろうとしたその時だった。
再びテントの中に兵士が現れる。
「レンナール様……!! うあっ!?」
兵士はレンナールのテントの中にあった蹴り殺された死体に驚きながらそれでも、叫んだ。報告すべきことを。
「見知らぬ飛行戦艦が高速接近中です! 数は一隻!」
レンナールはその兵士の首を風の魔法で吹き飛ばしながら、テントを切り裂き、空中へと飛んだ。
そして彼方より近づいてくる、それを睨みつける。
「来たか……あのガキが!!」
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