58 / 115
第五十八話 腐った夢
しおりを挟む
「ふぅ、一息つけるのであるな!」
ラクレは椅子に座りそう言う。
カミネ達はあれから、無事アジトへと戻り、束の間の休息を享受していた。
閑散としたバーでカミネもテーブルに添えるように置かれた椅子に座り、ホッと息を吐く。
ここにくるまで怒涛の勢いで事が進んでいた、ため休む暇すらなかった。
「はぁ」
思わずため息が出てしまう。
いつのまにか気が張っていたのだろう。
未だ夢の中なので妙な話だが、やっと平凡な現実に戻ってきた、とカミネは感じた。
「二人とも、とりあえず少女は寝かしてきた」
すると階段から、アールが降りてくる。
金髪の少女をどうやらこの酒場の二階に寝かしつけてきてくれたようだった。
「おお! サンキューである!」
ラクレの言葉にアールは軽く手を上げ
て返した。しかし、良いのだろうか。カミネはとあることを疑問に思った。
「ここも、夢が消えたらここも倒壊したりするんじゃないんですか?」
そう、大半の街がそうは見えないとは言えここはすでに夢によって形作られた、幻想の都。
そんなところに少女を置いておいて良いのだろうか。
「大丈夫である」
そんなカミネ疑問にラクレは答える。
「ここは神獣の襲撃の被害に合わなかった唯一の地点なのである。だから万が一夢が覚めても2階の寝室などは消えたりしない」
それを聞いてカミネは安心した、そして同時になぜここが拠点としているのか何となく察しもついた。
ここの酒場はおそらく夢があまり干渉していないのだ。
他の区画はほぼ壊滅状態だった、それ故に夢で強く補強する必要がある。
だがここはその必要がない、だから夢の侵食をあまり受けていないのだと。
そのためこうしてラクレもアールも安心してここに通っているのだろう。
「さて、今日は大役をご苦労だったのである! カミネ姫、今日は休むと良い! 次の作戦は明日にするとしよう!」
一旦のやるべき事が全て終わったのを見計らいラクレはそう言う。
「え、もう明日やるんですか!?」
カミネは思わず、そう言ってしまった。まさかここまでハードな出来事をやった次の日にまさかの連続でやるのか、流石に気後れしたカミネにラクレは笑う。
「大丈夫である! カミネ姫には先ほどのように少しだけやってくれれば良い!」
それでも結構大変なんですけど、とカミネは突っ込みそうだったがしかしやらない訳にもいかないと言うことも理解しているつもりだった。
「あの……ラクレさん、私もいつか夢に飲まれてしまうんですよね?」
「ああ、そうである」
「……あとラクレさんの見立てでどれくらいですか?」
「……君に出会った時瞬時に吾輩のアビリティをかけた、だからしばらくは大丈夫だ。だが……」
ラクレはカミネに向かって指を指す。
どうやらそれが自身の胸元に向かって伸びていると理解したカミネはふと目線を胸に落とした。
ネックレスがあった。金のそれも綺麗な青の宝石と細工が施された、見たことのないアクセサリーがカミネのいつのまにかかかっていた。
「……衣装の変化……夢に飲まれていく初期症状だな」
アールの説明の付け足しにカミネはゾッと怖気が走る。
自分ももしかしてああなるのだろうか、いつしか自分の首を絞め落とそうとしたあの傀儡のような男に。
そんな想像が頭をよぎる。
「カミネ姫」
するとラクレの声が響く。
「君は、この都をどう思う」
「どうって……少し怖いと思います……みんな楽しそうだけどどこか大切な部分を支配者に握られているような気がして……」
それは率直な感想だった。カミネがこの都に抱いた第一印象だ。ラクレはその返答を聞き静かに頷いた。
「その通りである。街の皆は所詮は奴隷、そしてここはただの檻なのである」
「え?」
「皆、夢を見ていると言ったであろう?」
ラクレの言葉にカミネは頷いた。
「それはどう言うことかわかるであるか?」
「え、それは……ど、どう言う……?」
「この世界にサプライズはないと言うことである」
サプライズ、その表現にカミネは首を傾げた。しかしアールは実感しているのかただため息をついた。
「この世界はほぼ住人の理想の世界が広がる、念じたものは何でも出で何でも手に入る──」
「── 一見、良いことしかないように感じるが実際は違う皆、自分の『想像の檻』に閉じ込められているのである」
「想像の檻?」
「そうである、カミネ姫。この都の住人達は皆、想像通り、予定通りの生活しかしていないそこに楽しみはあっても驚きは無い。全てが思い通りになるからこそ、新しき外部からのインスピレーションもなく、ただ退廃的な日常を繰り返していく」
カミネはそこでやっと気がついた理解した。この世界の異常性、歪さが。
「カミネ姫、良いであるかこの世界は変化ができない世界なのである。自分の想像の外へといく事ができない、皆、自分の世界に引きこもった停滞の世界なのである」
そう、この都はきっと腐っているのだと。
ラクレは椅子に座りそう言う。
カミネ達はあれから、無事アジトへと戻り、束の間の休息を享受していた。
閑散としたバーでカミネもテーブルに添えるように置かれた椅子に座り、ホッと息を吐く。
ここにくるまで怒涛の勢いで事が進んでいた、ため休む暇すらなかった。
「はぁ」
思わずため息が出てしまう。
いつのまにか気が張っていたのだろう。
未だ夢の中なので妙な話だが、やっと平凡な現実に戻ってきた、とカミネは感じた。
「二人とも、とりあえず少女は寝かしてきた」
すると階段から、アールが降りてくる。
金髪の少女をどうやらこの酒場の二階に寝かしつけてきてくれたようだった。
「おお! サンキューである!」
ラクレの言葉にアールは軽く手を上げ
て返した。しかし、良いのだろうか。カミネはとあることを疑問に思った。
「ここも、夢が消えたらここも倒壊したりするんじゃないんですか?」
そう、大半の街がそうは見えないとは言えここはすでに夢によって形作られた、幻想の都。
そんなところに少女を置いておいて良いのだろうか。
「大丈夫である」
そんなカミネ疑問にラクレは答える。
「ここは神獣の襲撃の被害に合わなかった唯一の地点なのである。だから万が一夢が覚めても2階の寝室などは消えたりしない」
それを聞いてカミネは安心した、そして同時になぜここが拠点としているのか何となく察しもついた。
ここの酒場はおそらく夢があまり干渉していないのだ。
他の区画はほぼ壊滅状態だった、それ故に夢で強く補強する必要がある。
だがここはその必要がない、だから夢の侵食をあまり受けていないのだと。
そのためこうしてラクレもアールも安心してここに通っているのだろう。
「さて、今日は大役をご苦労だったのである! カミネ姫、今日は休むと良い! 次の作戦は明日にするとしよう!」
一旦のやるべき事が全て終わったのを見計らいラクレはそう言う。
「え、もう明日やるんですか!?」
カミネは思わず、そう言ってしまった。まさかここまでハードな出来事をやった次の日にまさかの連続でやるのか、流石に気後れしたカミネにラクレは笑う。
「大丈夫である! カミネ姫には先ほどのように少しだけやってくれれば良い!」
それでも結構大変なんですけど、とカミネは突っ込みそうだったがしかしやらない訳にもいかないと言うことも理解しているつもりだった。
「あの……ラクレさん、私もいつか夢に飲まれてしまうんですよね?」
「ああ、そうである」
「……あとラクレさんの見立てでどれくらいですか?」
「……君に出会った時瞬時に吾輩のアビリティをかけた、だからしばらくは大丈夫だ。だが……」
ラクレはカミネに向かって指を指す。
どうやらそれが自身の胸元に向かって伸びていると理解したカミネはふと目線を胸に落とした。
ネックレスがあった。金のそれも綺麗な青の宝石と細工が施された、見たことのないアクセサリーがカミネのいつのまにかかかっていた。
「……衣装の変化……夢に飲まれていく初期症状だな」
アールの説明の付け足しにカミネはゾッと怖気が走る。
自分ももしかしてああなるのだろうか、いつしか自分の首を絞め落とそうとしたあの傀儡のような男に。
そんな想像が頭をよぎる。
「カミネ姫」
するとラクレの声が響く。
「君は、この都をどう思う」
「どうって……少し怖いと思います……みんな楽しそうだけどどこか大切な部分を支配者に握られているような気がして……」
それは率直な感想だった。カミネがこの都に抱いた第一印象だ。ラクレはその返答を聞き静かに頷いた。
「その通りである。街の皆は所詮は奴隷、そしてここはただの檻なのである」
「え?」
「皆、夢を見ていると言ったであろう?」
ラクレの言葉にカミネは頷いた。
「それはどう言うことかわかるであるか?」
「え、それは……ど、どう言う……?」
「この世界にサプライズはないと言うことである」
サプライズ、その表現にカミネは首を傾げた。しかしアールは実感しているのかただため息をついた。
「この世界はほぼ住人の理想の世界が広がる、念じたものは何でも出で何でも手に入る──」
「── 一見、良いことしかないように感じるが実際は違う皆、自分の『想像の檻』に閉じ込められているのである」
「想像の檻?」
「そうである、カミネ姫。この都の住人達は皆、想像通り、予定通りの生活しかしていないそこに楽しみはあっても驚きは無い。全てが思い通りになるからこそ、新しき外部からのインスピレーションもなく、ただ退廃的な日常を繰り返していく」
カミネはそこでやっと気がついた理解した。この世界の異常性、歪さが。
「カミネ姫、良いであるかこの世界は変化ができない世界なのである。自分の想像の外へといく事ができない、皆、自分の世界に引きこもった停滞の世界なのである」
そう、この都はきっと腐っているのだと。
10
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です
小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)
ファンタジー
元々、トラブルに遭いやすい体質だった男の異世界転生記。
トラブルに巻き込まれたり、自分から飛び込んだり、たまに自分で作ったり、魔物と魔法や剣のある異世界での転生物語。余り期待せずに読んで頂ければありがたいです。
戦闘は少な目です。アルフレッドが強すぎて一方的な戦いが多くなっています。
身内には優しく頼れる存在ですが、家族の幸せの為なら、魔物と悪人限定で無慈悲で引くくらい冷酷になれます。
転生した村は辺境過ぎて、お店もありません。(隣町にはあります)魔法の練習をしたり、魔狼に襲われ討伐したり、日照り解消のために用水路を整備したり、井戸の改良をしたり、猪被害から村に柵を作ったり、盗賊・熊・ゴブリンに襲われたり、水車に風車に手押しポンプ、色々と前世の記憶で作ったりして、段々と発展させて行きます。一部の人達からは神の使いと思われ始めています。………etc そんな日々、アルフレッドの忙しい日常をお楽しみいただければ!
知識チート、魔法チート、剣術チート、アルは無自覚ですが、強制的に出世?させられ、婚約申込者も増えていきます。6歳である事や身分の違いなどもある為、なかなか正式に婚約者が決まりません。女難あり。(メダリオン王国は一夫一妻制)
戦闘は短めを心掛けていますが、時にシリアスパートがあります。ご都合主義です。
基本は、登場人物達のズレた思考により、このお話は成り立っております。コメディーの域にはまったく届いていませんが、偶に、クスッと笑ってもらえる作品になればと考えております。コメディー要素多めを目指しております。女神と神獣も出てきます。
※舞台のイメージは中世ヨーロッパを少し過去に遡った感じにしています。魔法がある為に、産業、医療などは発展が遅れている感じだと思っていただければ。
中世ヨーロッパの史実に出来るだけ近い状態にしたいと考えていますが、婚姻、出産、平均寿命などは現代と余りにも違い過ぎて適用は困難と判断しました。ご理解くださいますようお願いします。
俺はアラサーのシステムエンジニアだったはずだが、取引先のシステムがウイルスに感染、復旧作業した後に睡魔に襲われ、自前のシュラフで仮眠したところまで覚えているが、どうも過労死して、辺境騎士の3男のアルフレッド6歳児に転生? 前世では早くに両親を亡くし、最愛の妹を残して過労死した社畜ブラックどっぷりの幸薄な人生だった男が、今度こそ家族と幸せに暮らしたいと願い、日々、努力する日常。
※最後になりますが、作者のスキル不足により、不快な思いをなされる方がおられましたら、申し訳なく思っております。何卒、お許しくださいますようお願い申し上げます。
この作品は、空想の産物であり、現実世界とは一切無関係です。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる