種々雑多(しゅじゅざった)

梁瀬

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梅木と楠木

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 師走に入り、寒さも一段と厳しくなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 くすのきは、神社や公園、寺院などでよく見かける樹木ですが、ご存じですか?
楠は常緑高木です。芳香のある揮発油を含み、葉を千切ると独特の匂いがします。
 中国名は、樟。
どのような匂いかは、和ダンスに防虫剤としていれるショウノウの匂いです。
 実際に、楠から取れる成分で、ショウノウは作られます。
だから、ショウノウはと表記されます。

 急に何?って感じですよね…。
実は着物の虫干しをしてなかった事を、今更ながら思い出しまして…。
 忘れることなく1月には、必ず寒干しをしなくては!

 この書き出しでは読み難いかも知れませんが、
常に、〝思い付きだけで書き進められている種々雑多〟という事でお許しを。


 本日も、どうぞよしなに。



 学びの形は、古くからほとんど変わらないものと考えていましたが、
コ□ナ禍で、生活スタイルや日常の常識、集団行動の在り方、学びの場、
職場等の環境が、急速に大きく変わりました。
 それによって物事や考え方、価値観も変わったように思います。
今までは〝こうでなければ〟という形に、無意識に当てはめていたものや考え方も、
枠を外せば良いと考えられるようになり、自ら枠を外したり、外れる事があっても、
悪い事という意識も変わり、価値観の多様性が広がたと感じました。

 今回は〝梅木うめのき学問〟と〝楠木くすのき学問〟という言葉です。
梅木学問というのは、梅の木は成長は早いけれど、幹も太くならないし、
大木にはならない事から、〝にわか仕込み〟とか〝不確実な学問〟の事を指します。
楠木学問は、楠の成長は遅いけれども、幹も太くなり、大木になる事から、
ゆっくりでも少しずつ〝着実〟に〝積み重ねた学問〟の事を指して言う言葉です。
 恐らく、この言葉が出来た頃は、良い例と悪い例という手本であり、
比較と事例だったのでしょう。
 私も本来の意味通りに習いましたし、認識していました。
でも、今の時代に当てはめた時、本来の意味だけではない、受け取り方が出来るのではないかと考えました。

 多くの事が数年で急速な変化を遂げる今、必要な事だけを優先的に学び、
次々に新しいものを吸収して行く時代には〝にわか仕込み〟と言われた梅木学問は、むしろ時代のニーズに合った対応力を具えた、学びのスタイルとも言えます。
 急速な進化を求められる分野では、ゆっくり成長して行く楠木学問は不適応かも
知れません。

 また、膨大な時間の流れを知り、分析、検証、実験を行う、例えば歴史や地層、
文化や文芸という類いを扱う時には〝着実〟で積み重ねた知識と、じっくりと腰を
据えた学びのスタイルこそが必要になると考えます。
 こちらでは、新しさや速さを求められていないので、梅木学問は適応し難いかも
知れません。

 現代では、多種多様な職業があります。それぞれに専門的な知識や資格が生まれ、
適性や適応力に合った、仕事が選べる時代になりました。
 このような時代には、〝梅木学問〟〝楠木学問〟を比較し、安易に善し悪しを
判断するという、昔ながらのされた〝ものさし〟では計れなくなります。
 多様性を求められ、社会が受け入れる時代には、木の成長速度、木の持つ特性は、
善悪でも、もちろん優劣でもなく、と言えるからです。

 今、進学や就職を考え、悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
多くの仕事から職業を選べる自由がある時代、故に、迷いや不安もあると思います。
 一度決めたら変えられない訳でも、最短コースで目指す職業に就かなければなら
ない訳でもありません。
 他者と何かを比較した優劣で、幸福度を量り判断すると、自分の心を置き去りに
してしまい、いつか身動きが取れなくなってしまう時がきます。
 自身が、梅木だろうと楠木だろうと、努力し学び成長していると信じて、
遠回りでも、時には迷子でも、人生を楽しんで歩み続けてみてください。
 
 木々の成長と等しく、ものさしでは、人生の重さも幸福度も、決して計れない。
…私はそう考えます。



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