魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_00 始まりは長い一日 ~have long way to go~

(05)トラブル発生 ~accident~

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 円形のドームに、外側には多数の観客席が設けられている。闘技場は想像以上の広さだった。
 シュウは、そこの男子更衣室に案内され、アンナから30cmほどの白い棒を渡される。

「……これは?」

「ロッドです、同じものがエリスさんにも支給されます。模擬戦では支給されたロッドのみが使用を許可されます」


 ロッド――
 少し前にも同じ言葉を聞いたような――


「衣装はここにあるものを自由に使ってもらって構いません。……と言っても、その作業着が動きやすければそれでも構いません」

 アンナは必要最低限のことを話し終え、さっさとその場を立ち去ってしまう。シュウは衣装に着替える気にはなれず、ボーっとロッドを見つめるしか出来なかった。

「どうすればいいんだよ……」




 ○○○○○○




 エリスは制服を脱ぎ、戦闘用の魔法着に着替えていく。白と赤を基調とした、エリス専用の魔法着だった。

「……どうかしたの、リンさん」

「――っ!」

 ロッカーの角からエリスの着替えを覗くリン――
 エリスは、始めから気づいていたらしい。

「いやー 気づいてた?」

 笑ってごまかしながら、エリスに近づく。

「えとー、エリスちゃんにね、ちょーっとだけ相談があって……」

「相談?」

「今日の模擬戦なんだけど……負けたり、できないかなーなんて……」

 リンは歯切れが悪そうに提案する。
 エリスは、首をかしげた。

「……どうして?」

 当然の返しだ。
 恥しくなり、リンは顔をそらす。

「ほら、今日のこと……聞いているかもしれないけど、私が悪いだけなの。どうして模擬戦なんて話になってるか分からないけど、エリスちゃんになんか勝てっこないし、彼がクビになっちゃうのもイヤだし……」

「そう……」

 エリスは、淡々と答える。

「悪いけど、負けることはできない」

「やっぱりだめ?」

 予想はしていた。
 エリスに利点がないし、八百長やおちょうに応じる義理もない。

「私が負けたところで、マリー校長が納得のいくような勝ち方でないと状況は変わらないと思うわ」

「そうかもしれないけど……」


 ――ファァァーン


 試合の始まる合図だ。闘技場内に鳴り響く。

「もう行くわね」

 エリスは、試合会場のドームに直結するエレベータに乗り込んだ。

「せ、せめて、ケガはさせないであげて」

「……あたりまえでしょ」

 エレベータの扉が閉まり、上へと昇る。
 リンも観客席へと急いだ。


 エレベータは、すぐに試合会場へと到着する。
 エリスにとっては、緊張感もないふざけた試合だった。

 大きな半球型の透明なドーム――
 ドーム内は、先のとがった大きな岩々に囲まれ、外側には観客席がある。遠くてハッキリとは見えないが、そこそこの観客で席が埋まっていることが分かる。

 それもそのはずだ。
 エリスはこの学園セントラルの首席――
 そんなエリスの模擬戦ともなれば、学園関係者の多くが興味を示し、観戦に来る。

「……ふう」

 エリスとは離れた会場の正反対、そこにもエレベータが上がってきて人影が現れる。
 オロオロとこの状況に困惑している。

『ただいまより、模擬戦を開始します。試合内容は予定を急遽変更――1on1、環境岩山ロック、時間無制限での開催となります』

 闘技場内にアナウンスが鳴り響く。ドーム外中央の看板に時計が00:00でセットされる。


 ――ファァァーーン


 模擬戦開始の合図――時計が1秒、2秒と刻み始める。同時にエリスはロッドを握り、詠唱えいしょうを開始した。




 ○○○○○○




「な、なんだこれ……」

 シュウは絶えずあわてふためいていた。


 巨大なドーム、巨大な岩々、大勢の観客――


 冷静でなんかいられなかった。

 その間にも遠く離れたエリスは、何かを唱え始めている。
 魔法を使うための呪文――のようなものだろうか。

「アブラカタブラ~ ビビデバブデブ~」

 シュウもロッドを握り、見よう見まねでやってみる。

 すると、突如として岩々の中腹ちゅうふく辺りに大きな魔法陣が多数浮かび上がった。

「まさか、おれにも魔法がっ……?」

 すぐに勘違いに気づく。
 当然だが、エリスが出した魔法陣だった。

 その魔法陣をボーっと眺めていると、ほうけたシュウを叩き起こすかのごとく、大きな≪衝撃≫が会場に走る。
 ≪衝撃≫は魔法陣からだった。
 魔法は上空の巨大な岩々を削り取っていく。

「ななな、なんだなんだ?」

 ポロポロと岩の崩れた破片がこぼれる中、≪衝撃≫による粉塵ふんじんで辺りは真っ白になり、シュウからは何も見えなくなった。
 シュウが立つ地面も小刻こきざみに揺れ、思うように身動きが取れない。

「いったいどうすれば……」

 とりあえずガムシャラに直進する。


 どのくらい走ったか――
 ドームの中央くらいには来たのか――

 もう、泣きたかった――


 そんな泣きそうなシュウを迎えに来たのか、エリスは既に背後を取っていた。

「へ?」

 フワリと体が浮くとクルリと体が回転し、背中から地面に倒れこむ。そのまま、シュウが事態を把握するより前に、エリスは、シュウの手足に魔法陣を発現させた。
 地面がコンモリと≪変形≫し、シュウの手足が地面に直接しばられる。シュウの動きは、完全に封じられた。

 さらに、白い棒きれだったロッドの形を、魔法陣を通すことで細長い槍へと≪変形≫させ、シュウの眼前に突きつけた。

「これで終わりね」

 何もできなかった。

「……な、なにが、なんだか」

 既に半分泣いていた。
 ドームの外からは、エリスの技術力に歓声が上がる。こうしてシュウの学園セントラルでの生活は、早くも終わりを告げるのであった。




 ○○○○○○




 ドームの外、VIP御用達ごようたしの高級なシート席――
 そこで、マリー校長とアンナは観戦していた。

 シュウがあっけなくエリスにやられる姿を確認し、マリー校長はアンナに命令する。

「やってちょうだい」

「……本当に、よろしいんですね」

 マリー校長は、相変わらず冷たい目をしていた。

「ええ、これで助からなければ……それまでね」

「承知しました」

 アンナは、ドームの中に向けて手をかざす。

 すると、まるでスイッチを押したようにドームの中で異変が起きた。




 ○○○○○○




 ――ゴゴゴゴッ……

「こ、今度はなんだあ……」

 ドーム内に鳴り響く轟音――
 岩々がどうも限界を迎えているような音だった。

 エリスも異変に気付き、いぶかしげな表情を浮かべる。エリスも何も聞かされていないらしい。




 そして、そのときは突然現れた――




 ドーム内に響く「ゴンッ」という衝撃音とともに、近くにあった大きな岩の先っぽが折れる。

 それは折れてもなお、巨大な岩だった。

「なん、で……」

 エリスは、目を見開いて立ち尽くす。
 シュウとエリスの真上、少し離れた上空から巨大な岩が降って落ちてきた――
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