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CHAPTER_02 バカなチカラは使いよう ~what’s the strength on my mind~
(08)拘束 ~rope~
しおりを挟むシュウとリンは、昨日リオラが乗り込んだという道場まで急いで向かう。学園からは距離があり、到着した頃には日が暮れていた。
「何があったんだ……」
道場の中で激闘が繰り広げられたことは、外からでも一目瞭然だった。慌てて中に入るも人ひとりおらず、床や壁の破片が飛び散った悲惨な痕だけが残る。
「リオラちゃん……どこいったんだろ」
道場の中を歩いて辺りを見渡すも、破片を踏む足音だけが鳴り響く。
人がいる気配はない。
「これからどうしよっか?」
「……なにか聞こえないか?」
――トンッ ――トンッ
遠くから聞こえる、何かを叩く音――
リンも耳を澄ます。
音が鳴っては、少し間をおいてまた音が鳴る。
小さな音だが、2人の耳にはその音が微かに届く。
「これって、もしかして……」
「……ああ、おそらくリオラだ」
シュウたちは音を聞き漏らさないよう小声で話し、静かに音がする方へと移動する。
音は、道場の外からだった。
無造作に生えた草むらの奥――
小さな物置小屋がある。今では使われていないのか、外壁にはツタが絡み、金属製の扉にはサビが目立つ。
慎重に小屋へと近づく。近づけば近づくほどコンコン叩く音は大きくなる。扉を叩いているようだったが威力が弱く、音が響くだけで扉はビクとも動かない。
「……リオラ?」
シュウは、恐る恐る扉の外から声を掛ける。
扉の鍵は壊されていた。
直近で誰かが侵入したことは、間違いない。
扉を叩く音が止む。
「リオラちゃん、いるの?」
「……んむー んむぅー」
リオラのうめき声だ。
リンとシュウは顔を見合わせ、重い扉を勢い良く開ける。
「――っリオラ?!」
「んむーっ!!」
リオラは小屋の真ん中で椅子に縛り付けられ、口と目元は布で覆われていた。
○○○○○○
エリスも急いでいた。
校長室を出たときには、既にリンとシュウが学園に居ないことを知り、急いで目的の道場へと向かっていた。
エリスが向かうのは、魔法軍が待ち伏せしようとしている道場だった。学園から一番近い道場とは言え、それなりの距離がある。
「……こっちね」
<防壁>の上を次々に飛び移り、魔法による浮遊を駆使して一直線で目的地へと向かう。そのお陰で、思っていたより早く目的地に着くことができた。
リンとシュウはいない。
先回りで来たか、そもそもこの場所を知らないか――
道場の中からは光が漏れている。
数人の練習する声が聞こえたが、エリスは念のための確認で道場の扉をそっと開ける。
「……大丈夫そうね」
元気に声を張り、練習に打ち込む門下生たち――
エリスは、ひとまず安心して扉をそっと閉める。
「どこに行ったのかしら……」
すっかり夜が更け、辺りの人通りはゼロに等しい。木々に囲まれた道路は街灯も少なく、不穏で危険な雰囲気が常に漂っている。
エリスは悩んだが、リンとシュウの行き先も分からずに魔力を無駄に消費するわけにもいかなかった。考えながら暗い通りを歩き、学園の寮に戻ることにした。
そして、1人の男とすれ違う――
エリスは時間差で振り返る。
男は、エリスに構わず道場に向かっていた。
「――待ちなさい!」
咄嗟にエリスは、男を呼び止める。
男は、振り返らずも足を止めた。男からはまさしく怪しい雰囲気が漂っている。
「……あなた、道場破りね」
男はしばらく溜めた後、大きなタメ息を漏らす。
「その制服、セントラルだな?」
「……目的は?」
「予想はしていたが、思っていたより早かったな」
男は残念そうに振り返る。
残念そうだが、顔は笑っていた。
自分か、誰かをあざ笑うように――
タケルは笑っていた。
「悪いが、邪魔をするなら容赦しないぞ」
「魔法軍があなたに目を付けてるわ、時間の問題よ」
「時間か……いつ来るのか知らんが、逃げる時間が無いとも限らないぞ――」
タケルは、カラテの構えで体に力を入れる。
エリスも負けじとロッドを取り出すが、タケルから放たれる勢いに既に負けそうだった。
模擬戦とは違う――
独特の空気感がエリスの体を強張らせる。
「数日もあれば、十分だ……っ!」
先手必勝――
タケルは、勢いよくエリスに飛び込んだ。
○○○○○○
リオラは椅子に縛られ、目元は布で覆い隠されている。
周りが見えていないながら必死に抵抗し、ジタバタと暴れている。
シュウは、急いで布を取り上げた。疲れ切ったリオラの顔が現れる。
「ぷはあーっ! あんのやろーっ!」
口元の布が取れた途端、リオラは勢いよく大声を発する。
これでもかと怒っていた。
「リオラちゃん、ロッドは?」
「取り上げられた、気づいたらこのザマだ」
シュウは、リオラの手足と体を縛る縄も解いていく。
リオラはロッドも無しに、内なる魔力だけで魔法陣を描き、繰り出し扉を叩いていた。恐るべし魔術適正である。
「誰に取り上げられたの?」
「くそっ、タケル……っ!」
「り、リオラ!」
縄を解いた途端、リオラはボロボロな体でどこかへ向かおうとする。
すぐによろけて倒れそうになり、リンが慌てて肩を支える。
「リオラちゃん、落ち着いて――」
リオラに≪治癒魔術≫を施す。幾分か顔色がマシにはなるが、リンの≪治癒≫では全快までは至らなかった。
「はやく、しないと……っ!」
「早くって、そんな体でどこ行くつもりだよ」
リオラは、唇をかみしめる。
特定の人物のことで頭が一杯のようだった。
「まさか、道場破りか?」
リオラは小さくうなずいた。
道場破りの犯人は、リオラの知り合いで間違いないようだ。
直近でリオラに元気がなかったのも、道場破りが原因だったに違いない。
「……おれらもついて行くぞ?」
「好きにしてくれ、ワタシは急ぐ」
「あ、リオラちゃん――」
リオラは、「着いてこれるか?」と言わんばかりに無言で先を急ぐ。多くは語らないが、ボロボロになってまでも行く必要があるらしい。
リオラは、急いで心当たりのある次の道場へと向かう――
そんなリオラを、シュウとリンは追いかける他なかった。
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