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CHAPTER_02 バカなチカラは使いよう ~what’s the strength on my mind~
(11)楽しいのが大事 ~enjoy~
しおりを挟む昼休み――
リンは、いつも通りカバンからおにぎりを取り出した。
最近はシュウに言われて気をつけているものの、疲れた日はどうしても朝が遅くなり、結果おにぎりになってしまう。
おにぎりの頂点をひとくち頬張る。
おにぎりは、最初のひとくちが1番美味しい。
――しあわせ……
「やっぱり……おかず食べたほうがいいって話しただろ」
「――っ?! んー、んー!」
急な登場に驚き、ご飯のカタマリを飲み込んでしまう。
のど元を叩いて何とかご飯を胃に落とす。
「ほら、これ……」
「んっ――ふう……また用意してくれたの?」
嬉しい反面、自分で用意していないのが恥ずかしくもあった。
今度こそお返しで、シュウの分もお弁当を作ってこよう。
「もしかして、迷惑だったりするか?」
「しないよ! しないし、嬉しいし、その、その……」
「――うぐっ!」
リンが返答に困っていると、シュウの体はうめき声とともに震えだす。見上げると思った通り、リオラに首を絞め上げられていた。
「よおシュウ! メシいくぞ、メシ! 今日はワタシがおごってやるよ!」
「リオラっ、ぎぶ、ぎぶっ――」
リオラの腕を叩いても、リオラは体を密着させて首を締め付けるのをやめない。
「ワタシ相手に説教したこと、忘れさせないからな」
「せっきょう? なんのことでしょう? あははーあぐぁっ――」
やめないどころか、力を強めたようにも見える。
「ほんとに、ぎぶっ――りん、リンさんっ、助けて……」
リオラは笑う。楽しそうだった。
それは、シュウへの信頼と好意の表れ――
一方のシュウも、元気なリオラが戻って嬉しそうだった。リンには2人の姿が羨ましく見えてしまう。
「ずいぶんと嬉しそうですねっ!」
「へ?」
「ご勝手に、お弁当だけいただきますねっ」
「そんなあ……」
リンはお弁当だけを引き取り、シュウは首根っこ引っ張られて教室の外へと連れ去られていった。
○○○○○○
「エリス、勝手な行動は慎みなさいと言ったはずね」
「……申し訳ありません」
校長室では、マリー校長とエリスが対峙する。もう何度目か分からない。
先日の1件――
道場破りの張本人タケル・オノヅカは、魔法軍が到着してすぐに救急搬送された。一命は取り留め、徐々に回復には向かっているそうだが目覚めても意識の混濁は免れず、記憶を保てる可能性も薄いらしい。
結局、今回もブラッディ・ダイヤの正体に繋がる糸口は見つからなそうだった。
魔法軍にはマリー校長が根回しをしていたようで、事情聴取も学園ですることになり、今に至る。
マリー校長は、こうなることを見越していた。だからこそエリスは好意を抱けなかった。
「事情は把握しました。今後注意していただくということで、特に罰則も設けません」
「……他のみんなは?」
「同じよ、あなたから伝えておきなさい」
ホッとした。
マリー校長が今回の1件をどう見ているかは分からないが、大ごとにならないのは何よりである。
だが、エリスにはどうしても聞きたいことがあった。
「……1つ、聞いてもよろしいですか?」
マリー校長は「はい」とも「いいえ」とも言わない。エリスは、それを勝手に了承の意味で受け取った。
「シュウの……彼の魔法を、校長先生はなにかご存知ですか?」
白く光り輝く、六芒星の魔法陣――
かつてエリスが初めて見た魔法によく似て、強さだけでなく美しさまで兼ね備えている。
マリー校長は何も答えない。エリスは勝手に話を続ける。
「今回は≪治癒魔術≫に似た効果を発揮していました。それも、かなり強力の――」
エリスがシュウの魔法を最初に目の当たりにしたのは模擬戦のとき、魔法陣の模様は違えど≪波動魔術≫と同じ効果を繰り出していた。
次は直接見ていないが、リンから聞く話では≪防壁魔術≫そのものだったという。
どれも共通して言えるのは、ロッドも詠唱もなしで、絶大な力を誇っていたこと――
「校長先生は何か知っていますよね?」
距離を詰めるに、マリー校長はビクとも動かない。
見兼ねたアンナ副校長がエリスを止めようとする。マリー校長はそのアンナの制止を止めた。
「エリス、あなたが知るにはまだ早いわ。ごめんなさいね」
「……いえ、もう――期待していませんから」
エリスは校長室を無言で去る。
やはりここからは、自分自身で調べる他なかった。
「……はぁ」
久しぶりに深いタメ息が漏れる。事件続きで疲れているのかもしれない。
そんなエリスのいる廊下が、ふいに騒がしくなる。
「ふんふふんふふーん」
「やめっ、普通に歩くから! だから放してくれっ」
シュウを引きずり回し、リオラは廊下を楽しそうに闊歩する。
「あっ、エリス! 助けっ――ぐえっ!」
「……リオラさん、体調は平気?」
「おう! この通りばっちりだぜ!」
シュウを片手でブンブンと振り回し、リオラは元気な姿をアピールする。エリスはホッとした。
「じゃあ、また教室で――」
『ミス・リオラ!』
終わったと思えば、さらに廊下に響き渡る声――
メガホンを通した電子的な声でとても耳に障る。
振り向いた先には、くるくる縦に巻かれた銀髪ツインテールの女の子――
廊下の真ん中に、学園の生徒会長を務めるシャエラ・エイブリンが立っていた。髪留めの細いリボンが可愛らしさを付け加えている。
シャエラは、リオラに近づくとメガホンを下ろして電源を落とす。
音量増幅に特化した生徒会特注のメガホンだ。電源に合わせてメガホンの先に浮かぶ魔法陣も消える。
「ミス・リオラ、廊下では騒がないよう注意してくださる?」
「騒いだのはワタシじゃない、こいつだ」
リオラは地べたを這いつくばるシュウを指差した。
「お、おれは……」
「わたくしは、あなた方お2人に申し上げましてよ。くれぐれも気をつけてくださいまし……」
シャエラはそれだけ言い残して去ろうとする。廊下でメガホンを使用するのも大概だと、エリスは思った。
「あ、そうそう。そろそろ『風紀取締強化週間』ですわね」
シャエラは、思い出したようにもう一度リオラとシュウに振り返る。
「服装、態度、何よりその心構え――覚悟しておくことですわ」
「へっ、シャエラこそ覚悟するんだな。ワタシとシュウは権力には屈しない」
「勝手におれをまきこむな!」
リオラとシャエラが睨み合う。その間で、シュウはオロオロと戸惑っている。
「お2人は重点取締対象として徹底マークします。逃げられるなんて思わないことですわね。それでは――」
「なんでそうなるんだーっ!」
シャエラは、今度こそ去っていく。
終始楽しそうなリオラ、涙目のシュウ――
「……はぁ」
エリスからは、本日2回目のタメ息が漏れてしまった。
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