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CHAPTER_03 心の乱れは災いのもと ~whoever lives hold wave of heart~
(04)取締2日目 ~uncomfortable~
しおりを挟む取締2日目、学園内は昨日よりも緊張感にあふれていた。
生徒会の重圧に怯える生徒がいる中、返って反抗する生徒も増えている。それでも生徒会は、朝の取締を控えようとはしなかった。
「おいっ、どうして言うことを聞かない!」
「はあ? なんでアンタらに従わなきゃいけないのよ」
とある女子生徒は、派手な髪色、指定外の服装とカバンについて注意されていた。女子生徒は生徒会を無視して校舎に入ろうとする。
規則に従わない者には誓約書が渡されるが、それにガンとしてサインしない者も現れる。当然のことだった。
リオラとシュウのときみたいに、力づくで押さえつけることは無いものの、生徒会は従わない生徒にしつこく喰い下がる。
これではまるで――
「独裁ね」
「あ、エリス……」
校舎の前で様子を見ていたシュウだったが、隣にはいつの間にかエリスが立っていた。
エリスも不安そうに取締の様子を見つめている。
「やり方を全否定するつもりはないけれど、この学園には見合わないわね」
「そうだよなあ、なんか違うんだよなあ……」
違うとは言え、その場で声を上げても仕方ない。2人とも諦めて校舎に入る。
「そういえば前の事件、マリー校長にはエリスから話してくれたんだよな。何か分かったか?」
ブラッディ・ダイヤもそうだが、シュウが使う白い魔法についてシュウ自身も気になっていた。
エリスは、残念そうに首を横に振る。
「あの人は、自分が満足すればそれでいいから」
「そうか……」
一緒に話を聞きに行けず、何だか申し訳ない――
その後は特に会話もなく教室に入り、重い空気のまま各々の席に着いた。
「おれも考えないとなあ……」
ブラッディ・ダイヤについて知る生徒は、エリスとシュウ、それにリンとリオラの4人になった。このまま調査をエリスにだけ任せ、他3人が知らんぷりするわけにもいかない。
頭を巡らしながら呆然と前を向く。すると、見かけない女子生徒が教室に入ってきた。
「……誰だろう」
黒い髪をなびかせ、ひざ下までのスカートで見本通りに制服を着こなし、気品あふれた様子で教室の中を歩く。
あまりの美しさについ見惚れていると、ふとその生徒と目が合ってしまった。
「……へ、変か?」
両手でバッグを持ち、頬を赤らめて恥ずかしそうにシュウに問う。
恥ずかしがりながらも見る者を惹きつける真っ赤な瞳は、もちろんシュウにも見覚えがあった。
「り、リオラっ?!」
確かにリオラだ。
制服のジャケットを羽織り、胸元は1番上までボタンを締め、きっちりとリボンを付けていても、その女子生徒は紛れもなくリオラだった。
「どうしたんだよその格好!」
「しかたないだろ、サインしちまったんだから!」
どうにも落ち着かないのか、リオラはスカートの裾を弄くりながら顔を背けてしまう。
「どうせ似合ってないだろ?! ワタシが1番分かってんだ!」
「いや、違う! 違うぞリオラ!」
「な、何が違うんだよ」
リオラは、顔を真っ赤にして上目遣いでシュウを見つめる。シュウも照れて言葉に詰まってしまう。
「それは、その……」
「なんだよ、はっきり言えよ」
「だから、さ……似合ってる、ぞ?」
「う、うるせえっ!」
「――んぐぇっ!」
本心を言っただけなのに、リオラに首根っこ強く締められる。
清楚系リオラも、シュウ的には全然アリだった。だが、リオラらしくないのも確かだ。
そんなことを考えながら、シュウの意識は遠のいていく――
「あーら、ミス・リオラ! お似合いですわよ?」
「シャエラっ……」
後から教室に入ってきたシャエラが嫌味たっぷりに言い放つ。シュウはギリギリのところで首を解放された。
リオラはよほど悔しいのか、シャエラを見向きもせずに顔を俯ける。
「是非とも続けて下さいましね、おほほほほー」
「おぼえてろよ……」
首元のボタンとリボンで息苦しそうなリオラ――
いつもイジめられているシュウにとっては、無理な格好をして照れているリオラが新鮮で可愛い。それでも、いつも通りのリオラが1番いい気がしてしまう。
「――やめだ、やめだ」
結局、放課後までリオラは耐えたが、シャエラが教室を出て行ったあと、リオラはすぐに皮をはいだ。
「ウィッグだったのか、それ」
黒髪のウィッグを取り外し、リボンを無造作に掴み取ってワイシャツのボタンを胸元まで開ける。シュウが心配するまでもなく、リオラはいつも通りに戻ってくれる。
「バカバカしい、もう気にしないことにする」
「それでこそリオラだよ」
プライドすら捨てて己を貫き通す――
それでこそ、シュウが尊敬するリオラの姿だった。
リオラが自分を取り戻して帰った後も、放課後は生徒会室が慌ただしくなる。清掃がてらシュウは様子を眺めていたが、昨日は閉門ギリギリまで生徒会室の灯りがついていた。中にも大勢の生徒が残っているし、この調子だと今日もギリギリまで作業するのだろう。
「大変そうだなあ……」
「シュウくんもだよ」
「リン?」
いつものように清掃ロボットの手が届かない細かいところを磨き上げる。廊下の端から端を丹念に磨いているところで、突然リンに出くわした。
「どうしたんだ? いま帰り?」
「部活が休みになっちゃって――あっ、シュウくんって、もう女の子と仲良く話しちゃいけないんだっけ?」
「今はただの清掃員だ。大丈夫だろ……たぶん」
一抹の不安がよぎる。
なるべく悪目立ちしないよう、掃除する手に力を込める。
「毎日たいへんだね、お勉強は平気なの?」
「それが平気ではないな……」
疲れてもないのに汗が垂れる。
清掃が休みの休日は、絶えず補習の嵐だった。
「そ、そんなことより部活が休みって、何があったんだ?」
清掃が終わっても補習に向けた宿題がたくさん残されている。なるべく思い出したくないので、シュウはあからさまに話を逸らした。
「うん。生徒会のことで、ちょっとね……」
「それって、生徒会に呼出し喰らっている生徒が多いとか?」
リンは、残念そうに頷いた。
「ルヴィに聞いたんだけど、一般クラスにはうっ憤がかなり溜まってるみたい。もう爆発寸前だって……」
「早いな、まだ2日目だよな?」
「うん……」
急に重苦しい空気になる。不吉なことが起こりそうな、イヤな予感がする。
「シャエラちゃんも気合入ってるだけで悪気はないんだけど、生徒との温度差がね」
「つっても、今のシャエラに言ったところで分かってくれるかな」
「そうなんだよね、イイ伝え方があればいいんだけどな……」
簡単には思いつかない、思いつきもしなそうだった。結局は、本人が自分で気付くしか無いのかもしれない。
リンとシュウは、2人して心配そうに窓の外を見つめる。放課後でも生徒会の数人が校門に立ち、帰宅する生徒を監視していた。
取締強化期間の終了まであと3日ある。
このまま何も起きず平穏に終わってくれるのか――
はたまたシャエラが違和感に気付き、学園や生徒にとって本当に価値のあるモノを見い出せるのか――
2人とも、大事にならないことを祈るばかりだった。
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