魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~

(09)1回戦・学生対決 ~overpower~

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「わーっ、すっごーい!」

 シャエルは『マジック・ボール』の親善大会が行われる会場に到着し、その盛り上がり具合に驚いていた。

「お客さんでいっぱいですねー、お祭りみたいでワクワクします」

 会場の中は人が密集し、入口から観客席まで大賑わいだったが、隣に大柄のダイモンを引き連れていたお陰か、小柄なシャエルでもスムーズに自席まで移動できた。
 姉のシャエラには、あらかじめ3人分の観客席を確保してもらっていた。試合コートまでの距離は近くも無いが、比較的見晴らしの良い席である。周囲には学園セントラルの関係者が集まり、予約席の1つ――シャエルの隣の席には先客がいた。

「やあ、シャエルちゃんだったよね?」

「はい、姉がお世話になってます」

 保健室のワネット先生――シュウから話には聞いていたが、直接顔を合わせるのは初めてだった。シャエルはペコリと頭を下げる。

「ダイモンもご無沙汰だね。今日は診察道具を持ってきてないからね?」

「どういう意味だ」

「そろそろ体にガタが来てるんじゃないかと」

「ふん、お互い様だ」

「お2人は、お知り合いだったんですか?」

ふるい仲だよ、学園セントラルに入ったのがほぼ同時期でね」

くされ縁だ」

 保健室の先生と清掃員――
 接点が多いとも考えられなかったが、歳も近いのだろう。シャエルからは、ただの知り合いにも見えなかった。

「あっ、お兄様たちですよっ!」

 コートに目を向けると、シュウたち学園セントラルのチームメンバが集結していた。遠くて見えづらいがワネットとダイモンにもその場所を指し示す。

「お兄様ーっ、頑張ってくださーい!」

 シャエルは大きく手を振り、届かずとも大きな声援を送る。




 ○○○○○○




「ひ、ひひっ、ひと、ひとひと、ひひひとがっ……」

「落ち着け、落ち着くんだカホ」

 熱気ムンムンのコート上では、あまりの観客の多さに、カホが慌てふためいていた。
 リンもシュウと一緒になってなだめようと声をかけ続ける。

「大丈夫だよカホちゃん、リラックスだよ」

「深呼吸だ。ほら、スーハーって」

「すー、はーっ、はっ……」

「か、カホっ!」

 カホは息を深く吸っただけなのに、あまりの緊張でのどを詰まらせてしまう。深呼吸で落ち着いてもらうはずが、より呼吸がし辛そうだった。

「カホの気持ち分からんでもないわぁ、ウチも息が詰まりそう……」

「カホさんの参加は、今日は厳しそうね……シュウ、頼んだわよ」

 エリスは冷静に判断を下す。
 試合に出る面々は全員魔法靴を履き、ルヴィ特注のチームユニフォームに着替える。

 ソアンは控えでの≪治癒≫サポートに徹し、カホが出れる状況で無いとすると必然的に残されたメンバーは固定で参加となる。

「ああ、分かった。今日は何回戦うんだっけ」

「1回戦と2回戦の2試合よ。今日勝ち進めば、来週まで練習時間を稼げる」

「今日を勝ち進めれば、来週はもう準決勝からだね」

「あ、エルも来てくれておりますわ。エルーっ、頑張りますわよー!」

「おい、もう始まるみたいだぞ」

 周りを気にせず大きく手を振るシャエラに対し、リオラは冷静に会場を見渡していた。観客席には、たくさんの応援が詰め寄っている。監督コーチを務めたルヴィとロイも近くの席で様子を見守っていた。
 試合関係者は慌ただしくコート上を動き回っている。
 そして早速、決勝トーナメント1回戦の第1試合が始まるようだ。

「この次がおれらだよな。どうする? 円陣でも組んどくか?」

「ええなぁ、青春て感じ」

 謎の覆面チーム『サンルナール』を含め、試合会場でプロチームと出会うことは無かった。特別に控え室を用意されているのだろう。やはり、目的を達成するには決勝戦まで勝ち進み、サンルナールと直接対決する他無さそうだった。

 今回経験者としてエースを務めるリンの周りに、7人が円形を作って集まる。

「ワクワクしますわね、こういう経験も初めてですわ」

「プロだか知らねーけど、ゼッタイ化けの皮をいでやる」

「が、がが、がんばり、ばります……」

 緊張するカホの顔も引き締まる。7人全員が気合は十分だった。
 リンがエースとして合図を掛ける。

「それじゃあ、みんな準備はいいね? 短い間だけど、練習の成果を出し切ろう――」

『おーっ!』




 ○○○○○○




 決勝トーナメント1回戦の第2試合――
 プレジール学院魔法学科 VS 国立魔法学中央学園セントラル特進チーム

 カホとソアンが控えで見守る中、シュウたちが試合コートの中央へと進む。

「なあエリス、相手は強いのか?」

「プレジール学院は世界最大級の総合学院よ。各方面で活躍の場を広げて、魔法学科だって著名人を何人も輩出はいしゅつしているわ」

「そうか、油断できないな」

 初めての本番試合は、同じアマチュア学生チームとの対決になった。
 それでも5人が横に並んだ相手チームは、アマチュアとは思えない顔つきでコートに立っている。シュウたちも横に並び、負けじと顔を作って対抗する。

 相手チームのエースが1歩前に進み、リンも歩幅を合わせて1歩進む。

「よろしくお願いします。皆さん、特進クラスの生徒なんですよね」

「あ、うん。よろしくお願いします」

「対決できることが光栄です。手加減無しで参ります」

「うん。もちろんだよ」

「楽しみです」

 エース同士が握手を交わし、他の4人も頭を下げる。挨拶を終えると、早々に各々が配置ポジションにつく。

「んよしっ!」

 ガンナーにはリンが、フェンダーにはシュウとエリスが立ち、今回はシャエラがキーパーを担当する。防御中心の布陣でリオラもアタッカーとしての初期位置につき、魔法球が射出されるのを今か今かと待ち構える。
 相手チームのアタッカーも集中して体を構えた。
 会場も静かになる中、突如大きな破裂音が鳴り、魔法球がコート中央の上空に勢いよく放たれる――

「っしゃぁあ!」

 リオラが圧倒的な速さで反応し、大差をつけて上空に飛ぶ。ルヴィとの練習試合後、リオラは練習を積み重ねて魔法球に対する反応速度を格段に向上させていた。
 相手チームのアタッカーは、途中で追いつくこともできず、先攻をリオラに譲ることになる。リオラは十分な時間を持って≪衝撃≫の魔法陣を発現し、競技用ロッドを大きく振りかぶった。

「いっけえぇええ゛っ!」

 最後まで相手チームに遮られることなく、リオラは思い切りロッドを振って魔法球にぶつけた。魔法球は、ロッドと魔法陣の威力をそのまま受け取り、そのままの勢いでゴールに向かって飛び出していく。


「――歴史が変わるわよ」

 観客席にいたルヴィは、誰に言うでもなく自信満々に呟く。
 その自信を裏切ることなく、魔法球は一直線に相手ゴールへと突っ込んだ。


「――す、すげぇ……」

 ゴールは青く光り、魔法球は光を失って地面に落ちる。突然すぎる先制点に、相手キーパーも呆然とする。
 シュウも初めて見るわけではないのに思わず感心してしまう。

 相手チームだけではない――
 観客席にいた大勢も、何が起きたのかを理解できず静けさに包まれていた。

「よっしゃっ!」

「リオラちゃん! すぐに来るよ」

「分かって、るっ!」

 リンの掛け声通り、新しい魔法球がすぐに射出される。
 リオラは魔法球が放たれた方向を見定めるが、相手チームもすぐに気を取り直し、今度は2人掛かりでボールを奪いに掛かる。

「リン! まずかいもしれねえ!」

「うん。だいじょうぶ――」

 リンも事態を察し、一気に前方へと上がる。
 あっという間にコート上は大混戦に変わる。

 同時に、観客席のボルテージも一気に上がる――
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