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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~
(15)準決勝・格の違い ~extraordinary~
しおりを挟む試合準決勝第1試合は、1歩も譲らないアタッカー同士の対決で始まった。
「りゃぁあっ!」
「はあぁあっ!」
上空に放たれた魔法球を挟み、リオラとレイジー2人の魔方陣がぶつかり合った。魔法球は両側から押され、その力は見事に拮抗する。
「――くっ、さすがねっ……」
しばらくしてリオラの≪衝撃≫が僅かに勝り、魔法球は煙を上げて進む。リオラも一緒になって進むが、煙の奥からはもう1人のアタッカーが現れる。
「レイジー、下をお願い」
「分かったわグロリア――」
対リオラをグロリアに任せ、レイジーは地面に降下して前へと進む。シュウはフェンダーとして身構えながら、昨日のルヴィの話を思い出していた。
『――アトラータフェレースは、アタッカー2人のポジションで組んでくることが多い。守りは薄い分、一気に点差を広げられやすい。どのアタッカーも一筋縄では行かないから気を付けて』
リオラが1対1で負けるとも思えない。だが、レイジーは味方を信用してどんどん前に進む。ガンナーのリンは不安になり、リオラのもとへ一直線に向かった。
「リオラちゃん!」
「よそ見していいの?」
「えっ――」
いつの間にかレイジーは急上昇し、リンの前でロッドを振り被っていた。それは、リンのロッドに向けられていた。吹き飛ばされまいと慌てて≪防壁≫を張るが、あまりの衝撃で地面に向かって押し出されてしまう。
「グロリア、いつでも!」
グロリアは合図を受け、魔法球に向かって容赦なく飛び込んでくる。魔法球までの距離は当然リオラの方が近く。とても間に合う距離じゃないと踏んでいた。
「もらうわよ」
「――んみゃっ!」
高を括っていたリオラにロッドが勢いよく飛び込んでくる。
そのロッドは≪変形≫の魔方陣を通り、槍のように先端を尖らして、魔法球に向かって一直線に伸びてきた。
「くそー、取られたーっ!」
グロリアが細長く変形したロッドは≪衝撃≫の魔方陣も備え、魔法球を的確に捉えただけでなく、前にいるレイジーに向かって猛スピードで飛び出させていく。
「あんな速いパス、受け取れるわけ――」
シュウは、レイジーがパスを受け取り損なうと推測し、一気に魔法球を奪いに行く。しかし、レイジーは華麗にロッドを振りまわし、さらに魔法球に≪衝撃≫を加えた。
「あかん、ウチとシュウのディフェンスじゃ無理やて」
目にもとまらぬスピードで魔法球はゴールに進む。
シュウとソアンの横をあっという間に通り過ぎ、2人はカホに振り向くことしかできなかった。
「カホっ! たのむっ!」
「ふ、ふふふふわっ!」
今までの試合の中で味わったことのない速度――
カホは勢いにやられ、目を閉じてしまいながらも何とか≪防壁≫を張る。
≪防壁≫は、運よく魔法球に当たる。
「ふんっ、惜しいわね」
しかし、魔法球の勢いは≪防壁≫を壊し、多少方向を変えられただけで勢いは落とさずに突き進む。
――プォン
カホの横を過ぎた魔法球――ゴールが青く光る。
ゴールの隅っこに当たった魔法球は、ゆっくりと地面に落ちた。
『――アトラータフェレース、先制点ですっ!』
相手チームに2ptが入り、また魔法球が宙に放たれる。
「レベルが違うて……」
今まで試合を見てきただけのソアンにも分かった。
素早い動きと巧みな連携――これが、プロとアマチュアの差だ。
「負けてられるかぁっ!」
レイジーとグロリアは、すぐさまコート中央に戻る。
それよりも早くリオラは魔法球に飛び掛かり、今まで以上の力でロッドをぶん回した。
「だーりゃぁああ゛っ!」
リオラは、チーム全員の弱気を打ち消すかのような怒号を鳴らす。ロッドの前に張られた巨大な赤い魔法陣が、芯を捉えて魔法球にぶち当たる。
「トピー! 警戒して!」
「分かってるサ」
前線にいるレイジーとグロリアには手の出しようがない。ガンナーであるドルハも間に合わない。フェンダーのシャクが≪防壁≫を張るも、リオラが放った魔法球を捉えられなかった。
トピーは、ロッドの動きから魔法球の軌道を読み切り、正確な位置に≪防壁≫を張る。
「捉えた――サッ?!」
トピーが張った魔法陣は、何も無かったかのように砕かれる。魔法球は、スピードも方向も一切変えぬままゴールに向かって突き進んだ。
「これは、無理だわサ……」
『――決まったぁあ! リオラ選手のカウンター、これで同点です!』
『また最高記録だったんじゃないかしらぁ?』
会場が一気に沸き上がる。
アトラータフェレースは歓声を一切気にせず、すぐに次の魔法球のフォローに向かう。
「リンはフェンダーに回ってくれ、得点はワタシが稼ぐ!」
「うん、ごめんリオラちゃん!」
「恐ろしい自信ね、2対1で敵うと思ってるの?」
「やってみようぜ」
魔法球に向かって3人のアタッカーがぶつかり合う。レイジーは魔法球を、ハイドラはリオラを止めに掛かった。
「――ふんりゃっ!」
リオラはロッドを振り回し、相手のロッドを直接潰しに掛かる。その技術は武闘派として流石の一言であり、ハイドラは呆気なくリオラに蹴落とされてしまう。
「魔法球は渡さないっ」
再びリオラとレイジーが魔法球を巡ってぶつかり合うが、ここでもまた速さと力でリオラが勝る。
「シュウ、頼んだぞっ!」
「分かった!」
リオラからの素早いパスに対し、シュウは≪相転魔術≫を駆使して事前に取り決めていた場所に魔法球を送る。
魔法球は予定通りに転送された。
「っしゃぁあっ!」
リオラは、魔法球を転送した場所で的確にロッドを振り回していた。しかし、そのリオラに迫る別の影があった。
「何度も振り回されたら、たまらんからな」
「うぇっ?!」
ガンナーのドルハがリオラの背後を取り、リオラのロッドを≪変形魔術≫で直角に曲げていた。おかげで思い切り振ったロッドは空振りしてしまう。
「レイジー、取れるなっ?!」
「はい!」
すぐさまレイジーが魔法球の行く先に待ち構える。
しかし、魔法球が進む途中で、横から飛んできたロッドの欠片に軌道を変えられてしまう。
「ビンゴ!」
「助かったぜリン!」
リンは弾丸に変形させたロッドを飛ばし、離れた位置からリオラの援護を続ける。先を急ぐリオラに続き、ドルハも悔しそうに後ろを追いかける。
「行かすかぁ!」
沸き続ける歓声の中、第1クォータは点を取りつつ守りつつ――
互角の勝負を繰り広げて進んでいった。
○○○○○○
「――ポジションを変える」
インターバル中、ドルハは神妙な顔でメンバーに告げた。
「まだセカンドですよ? 早すぎませんか?」
「アタッカーが強すぎる。あそこを抑えないと面倒だ」
「リオラですね……」
リオラの強さは、同じクラスとしてもちろん知っていた。
だが、マジック・ボールに向けてここまで仕上げてくることは想定外だった。練習を始めたのは、ほんの数週間前のはずである。
「それだけ強い魔力と魔術適性ということだ」
プロチームと言えど、学園の学生――それも、特に優秀な学生の強力すぎる魔法を目の当たりにし、メンバー全員が作戦変更に頷かざるを得なかった。
「アタッカーさえ抑えれば後ろは手薄になってる。抑えて責めて、一気に点差を広げる」
「そう、ですね……」
ドルハの言うことは正しい。
何も間違っていない作戦なのだが――
「アマチュアと互角なんて恥が知れる。気合入れていくぞ」
『はいっ!』
ドルハは、どこか焦っている。
レイジーには今までにない危険を感じていた。
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