魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

文字の大きさ
66 / 78
CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~

(15)準決勝・格の違い ~extraordinary~

しおりを挟む

 試合準決勝第1試合は、1歩も譲らないアタッカー同士の対決で始まった。

「りゃぁあっ!」
「はあぁあっ!」

 上空に放たれた魔法球を挟み、リオラとレイジー2人の魔方陣がぶつかり合った。魔法球は両側から押され、その力は見事に拮抗きっこうする。

「――くっ、さすがねっ……」

 しばらくしてリオラの≪衝撃≫が僅かにまさり、魔法球は煙を上げて進む。リオラも一緒になって進むが、煙の奥からはもう1人のアタッカーが現れる。

「レイジー、下をお願い」

「分かったわグロリア――」

 対リオラをグロリアに任せ、レイジーは地面に降下して前へと進む。シュウはフェンダーとして身構えながら、昨日のルヴィの話を思い出していた。


『――アトラータフェレースは、アタッカー2人のポジションで組んでくることが多い。守りは薄い分、一気に点差を広げられやすい。どのアタッカーも一筋縄では行かないから気を付けて』


 リオラが1対1で負けるとも思えない。だが、レイジーは味方を信用してどんどん前に進む。ガンナーのリンは不安になり、リオラのもとへ一直線に向かった。

「リオラちゃん!」

「よそ見していいの?」

「えっ――」

 いつの間にかレイジーは急上昇し、リンの前でロッドを振り被っていた。それは、リンのロッドに向けられていた。吹き飛ばされまいと慌てて≪防壁≫を張るが、あまりの衝撃で地面に向かって押し出されてしまう。

「グロリア、いつでも!」


 グロリアは合図を受け、魔法球に向かって容赦なく飛び込んでくる。魔法球までの距離は当然リオラの方が近く。とても間に合う距離じゃないと踏んでいた。

「もらうわよ」

「――んみゃっ!」

 高を括っていたリオラにロッドが勢いよく飛び込んでくる。
 そのロッドは≪変形≫の魔方陣を通り、槍のように先端を尖らして、魔法球に向かって一直線に伸びてきた。

「くそー、取られたーっ!」

 グロリアが細長く変形したロッドは≪衝撃≫の魔方陣も備え、魔法球を的確に捉えただけでなく、前にいるレイジーに向かって猛スピードで飛び出させていく。

「あんな速いパス、受け取れるわけ――」

 シュウは、レイジーがパスを受け取り損なうと推測し、一気に魔法球を奪いに行く。しかし、レイジーは華麗にロッドを振りまわし、さらに魔法球に≪衝撃≫を加えた。

「あかん、ウチとシュウのディフェンスじゃ無理やて」

 目にもとまらぬスピードで魔法球はゴールに進む。
 シュウとソアンの横をあっという間に通り過ぎ、2人はカホに振り向くことしかできなかった。

「カホっ! たのむっ!」

「ふ、ふふふふわっ!」

 今までの試合の中で味わったことのない速度――
 カホは勢いにやられ、目を閉じてしまいながらも何とか≪防壁≫を張る。

 ≪防壁≫は、運よく魔法球に当たる。

「ふんっ、惜しいわね」

 しかし、魔法球の勢いは≪防壁≫を壊し、多少方向を変えられただけで勢いは落とさずに突き進む。

 ――プォン

 カホの横を過ぎた魔法球――ゴールが青く光る。
 ゴールの隅っこに当たった魔法球は、ゆっくりと地面に落ちた。


『――アトラータフェレース、先制点ですっ!』


 相手チームに2ptが入り、また魔法球が宙に放たれる。

「レベルが違うて……」

 今まで試合を見てきただけのソアンにも分かった。
 素早い動きと巧みな連携――これが、プロとアマチュアの差だ。

「負けてられるかぁっ!」

 レイジーとグロリアは、すぐさまコート中央に戻る。
 それよりも早くリオラは魔法球に飛び掛かり、今まで以上の力でロッドをぶん回した。

「だーりゃぁああ゛っ!」

 リオラは、チーム全員の弱気を打ち消すかのような怒号を鳴らす。ロッドの前に張られた巨大な赤い魔法陣が、芯を捉えて魔法球にぶち当たる。

「トピー! 警戒して!」

「分かってるサ」

 前線にいるレイジーとグロリアには手の出しようがない。ガンナーであるドルハも間に合わない。フェンダーのシャクが≪防壁≫を張るも、リオラが放った魔法球を捉えられなかった。

 トピーは、ロッドの動きから魔法球の軌道を読み切り、正確な位置に≪防壁≫を張る。

「捉えた――サッ?!」

 トピーが張った魔法陣は、何も無かったかのように砕かれる。魔法球は、スピードも方向も一切変えぬままゴールに向かって突き進んだ。

「これは、無理だわサ……」


『――決まったぁあ! リオラ選手のカウンター、これで同点です!』

『また最高記録だったんじゃないかしらぁ?』


 会場が一気に沸き上がる。
 アトラータフェレースは歓声を一切気にせず、すぐに次の魔法球のフォローに向かう。

「リンはフェンダーに回ってくれ、得点はワタシが稼ぐ!」

「うん、ごめんリオラちゃん!」

「恐ろしい自信ね、2対1で敵うと思ってるの?」

「やってみようぜ」

 魔法球に向かって3人のアタッカーがぶつかり合う。レイジーは魔法球を、ハイドラはリオラを止めに掛かった。

「――ふんりゃっ!」

 リオラはロッドを振り回し、相手のロッドを直接潰しに掛かる。その技術は武闘派として流石の一言であり、ハイドラは呆気なくリオラに蹴落とされてしまう。

魔法球ボールは渡さないっ」

 再びリオラとレイジーが魔法球を巡ってぶつかり合うが、ここでもまた速さと力でリオラが勝る。

「シュウ、頼んだぞっ!」

「分かった!」

 リオラからの素早いパスに対し、シュウは≪相転魔術ドメインドレイカ≫を駆使して事前に取り決めていた場所に魔法球を送る。
 魔法球は予定通りに転送された。

「っしゃぁあっ!」

 リオラは、魔法球を転送した場所で的確にロッドを振り回していた。しかし、そのリオラに迫る別の影があった。

「何度も振り回されたら、たまらんからな」

「うぇっ?!」

 ガンナーのドルハがリオラの背後を取り、リオラのロッドを≪変形魔術リフォルムドレイカ≫で直角に曲げていた。おかげで思い切り振ったロッドは空振りしてしまう。

「レイジー、取れるなっ?!」

「はい!」

 すぐさまレイジーが魔法球の行く先に待ち構える。
 しかし、魔法球が進む途中で、横から飛んできたロッドの欠片に軌道を変えられてしまう。

「ビンゴ!」

「助かったぜリン!」

 リンは弾丸に変形させたロッドを飛ばし、離れた位置からリオラの援護を続ける。先を急ぐリオラに続き、ドルハも悔しそうに後ろを追いかける。

「行かすかぁ!」

 沸き続ける歓声の中、第1クォータは点を取りつつ守りつつ――
 互角の勝負を繰り広げて進んでいった。




 ○○○○○○




「――ポジションを変える」

 インターバル中、ドルハは神妙な顔でメンバーに告げた。

「まだセカンドですよ? 早すぎませんか?」

「アタッカーが強すぎる。あそこを抑えないと面倒だ」

「リオラですね……」

 リオラの強さは、同じクラスとしてもちろん知っていた。
 だが、マジック・ボールに向けてここまで仕上げてくることは想定外だった。練習を始めたのは、ほんの数週間前のはずである。

「それだけ強い魔力と魔術適性ということだ」

 プロチームと言えど、学園セントラルの学生――それも、特に優秀な学生の強力すぎる魔法を目の当たりにし、メンバー全員が作戦変更に頷かざるを得なかった。

「アタッカーさえ抑えれば後ろは手薄になってる。抑えて責めて、一気に点差を広げる」

「そう、ですね……」

 ドルハの言うことは正しい。
 何も間違っていない作戦なのだが――

「アマチュアと互角なんて恥が知れる。気合入れていくぞ」

『はいっ!』

 ドルハは、どこか焦っている。
 レイジーには今までにない危険を感じていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...