種まくモノ、植えるヒト

蒔望輝(まきのぞみ)

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第〇六章 嫉みト妬み

嫉みト妬み(04)◆

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「――もう、明人さんの分からずやっ……!」

 真由乃は怒り肩で本殿の外を歩く。周りにいる巫女には、お構いなしで出口へと向かう。周りの巫女たちは掃除をする手を止め、涙目の真由乃を心配そうに見つめていた。

「――環日わびのお嬢さん」

「……ふぇ?」

 ちょうど出口の鳥居に差し掛かったところで後ろから声が掛かる。
 真由乃は目をぬぐいながら振り返った。

「うむ、ひどい顔をしているな。可愛い顔が台無しぞ」

 振り返った先には、天音の祖父――衛門えもんが立っていた。衛門は周りの巫女と同じく心配そうに真由乃に近づいてくる。

「さては、葉柴はしばの男と喧嘩でもして泣かされたのか?」

「え? そんな、喧嘩なんか……」

 喧嘩ではない。真由乃が一方的に怒っているだけだが、距離の取り方は喧嘩に近いのかもしれない。

「まったく、女の子を1人で帰らすとはな。信じられん男じゃ……」

 衛門は真由乃の横に並び、真由乃と同じ、本殿の建物がある方を向く。
 見た目は老人でも、衛門からは底知れない威圧オーラが感じられ、真由乃の体も自然と強張ってしまう。

「帰る前に、暇な老人の話に付き合ってくれるかな?」

「は、はい……」

 衛門は本殿を向きながら、ゆっくりと真由乃に語り始めた。




 ***




 明人は、巫女に案内されがまま本殿の薄暗い通路を歩き、障子張りのふすまで仕切られた暗い1室へと案内される。
 障子の向こうには、蝋燭ろうそくのぼんやりした光が灯されており、正座をした女の子の影も見える。

「では……」

 明人を案内した巫女は、襖を開けて明人にお辞儀をすると、そそくさとその場を立ち去っていく。明人は重い足取りで部屋の中へと入った。

「アキ、くん……」

 部屋の真ん中には真っ白な布団が敷かれており、その周りを蝋燭の淡い光が囲む。布団の奥には、天音あまねが正座をして恥ずかしそうに顔を伏せていた。
 薄い襦袢じゅばんに身を包み、天音の白い肌、桃色の乳首、それに整った陰毛までが透けて見える。

「あ、あんまり…じろじろ見ないで……」

「すみません……」

 明人は顔を逸らし、天音から距離を取って布団の横に座る。そんな明人の態度に、天音は露骨に気を落ち込ませた。

「……今日で、何回目だろうね。3年、経つのかな?」

「恐らく、それくらいかと」

「何回こなしても、恥ずかしい……ね」


 植樹之儀しょくじゅのぎ、昔から続く習わし――
 明人は種子たねごとなり、天音の体に「自身のタネ」を植え続ける。それは互いが生殖能力を持つ限り続き、明人はその一生を天音に尽くす。

 植人の頭領である亜御堂あみどうの家は、その血が濃すぎるが故、女性であれば他者のタネが非常につきにくい。男性であっても他者との結び付きは弱く、子孫繁栄には相応の力を持つ植人が種子たねご、あるいは受子うけごとなって定期的な性交渉が必要になる。

 亜御堂の血を絶やさぬため――
 植人が強大な力を維持するため――
 そして、次期当主にふさわしい新たな命を授かるための下らない・・・・儀式だった。

 本当に必要な儀式なのかは、誰も知らない――

「そう言えば、学校の授業に出るようになったとか」

「はい」

 明人は、多くを語らない。
 上着を脱ぎ、引き締まった上半身をあらわにして徐々に天音へと距離を近づけた。

 照れた天音は、明人から体ごと顔を背ける。

「……真由乃さんの、おかげ?」

「……はい」

 明人はゆっくりと返事する。
 天音はヤキモチを焼いてそっぽを向く。

「すごいね、真由乃さんは! 私が何度言っても出てくれなかったのに、それを――まだ出会って間もないのに……」

「天音様……」

「様で呼ぶのはやめて」

「すみません……」

 明人は、天音に近づいて肩にそっと手を置き、天音が羽織る薄い襦袢に手を掛けていく。
 天音の体はぴくっと震え、頬が赤く染まり出す。

「どうせ私は、真由乃さんみたいに可愛くないし……んっ――」

 そのまま、ねる天音の体を後ろからそっと抱き締める。
 薄い襦袢が肩からはだけ落ちていく。

「胸だって、おっきくないし…んっ……」

「十分だよ」

 明人は、天音の胸の膨らみに右手を置きながら、天音の口元に左手を添え、優しく自分の顔に向かせる。

「かわいいよ、天音……」

「んあっ、アキ…くんっ……」

 明人と天音の唇が濃密に重なり合う。

「んっ、んちゅ…んれろっ、んくちゅ…んあっ……」

 お互いが舌を絡め、激しく求めあう接吻せっぷんがしばらく続く。
 明人が持つ「毒」は、植人として絶大な力を持つ亜御堂家のモノには一切効果がない。それでも、天音の気持ちは存分にたかぶっていた。
 明人は唇を重ねながら襦袢の紐を解き、はだけた天音の陰部に手を掛ける。

「んんっ! んあっ、んんあっ……」

 天音の陰部は「くちゅくちゅ」と音を鳴らして湿り、両足を根本からくねくねとじらせる。天音も負けじと、明人の硬くなった股間をさする。

「んっ、んちゅ…んあっ、アキくんっ……真由乃さんっ、ともっ…こういう、ことをっ……?」

「……してない」

 明人は、天音の愛液で濡れた指で陰部の突起を強めに責め立てる。「くちゅくちゅ」激しく音を立て、天音の愛液が大量に飛び散って布団まで湿らせていく。

「んああ゛っ! そっ、かっ…んん゛っ……!」

 天音は、明人を抱きしめたまま激しく体を震わせる。あまりの刺激に天音の体は崩れてしまった。
 天音は慌てて体勢を立て直し、明人の股間に顔を近づける。

「んっ、アキくんっ…おっきい……」

 ズボンから抜き出した明人の肉棒モノ――
 天音の体に惑わされ、はち切れんばかりにれて大きくなっていた。

「アキ、くん…んちゅ、ちゅる……」

 天音は恥ずかしそうに明人の肉棒をペロッと舐め、小さな口でゆっくりと咥えこんでいく。

「んくっ、んじゅる…んじゅ……」

「くっ、天音っ……」

「んくちゅ、んちゅ…じゅ、じゅるちゅ…んじゅるっ、んっ……?」

 天音の健気で一生懸命な口淫に、明人の肉棒はすぐ達しそうになる。
 天音は敏感に限界を感じ取り、ゆっくりと口から肉棒を離した。

「んちゅ……んあっ――」

 最後に唾液を垂らして明人の肉棒を十分に湿らす。
 そして、後ろの布団に背中から倒れ込む。明人の体を両脚で挟み、恥ずかしそうに顔を向けて両手を伸ばす。

「んっ…アキくんっ、きて……」

 明人は生唾を飲み込み、天音の体にゆっくりと覆い被さった。




 ***




「――じゃあ、その『植樹之儀』で明人さんはよくここに来てるんですか?」

 衛門はゆっくりと頷いた。
 儀式の中身は詳しく教えてくれなかったが、古くから続く下らない・・・・儀式だそうで、その効果は疑わしいと衛門は言う。

環日わびは、葉柴明人のことをどこまで知っておる?」

「わたしは……」

 何も知らない。真由乃は、植人について指南をしてくれた明人しか知らなかった。

「冷淡で厳しくて、小説が好きで、いつも授業をサボってて……大事なことは何も話してくれなくて、でも――」

 それでも、真由乃にも分かることがある。

「でも、優しくて……それしか知らないです」

「そうか……」

 衛門も否定はしなかった。
 ただ、哀しい顔で空を見上げていた。

「……奴はな、本当は葉柴の植器を継ぐモノではなかった」

「え……?」

「葉柴家でも2人目に生まれた子での、植人としての能力は低かった」

 想像もつかない――真由乃から見れば、明人は存分に活躍しているように見えるし、能力が低いなんてとんでもなかった。

「それがとある事件コトをきっかけに能力を覚醒させてな。儀式にも呼ばれるようになったんだが……それが原因で他の植人からはみ嫌われておる」

「でも、メアリちゃんとか……明人さんのことを信頼してる植人だって」

「あやつは葉柴が指導したからな。葉柴のことを色眼鏡で見るモノが多いということじゃ。それに、妹の茜音あかねも葉柴がしたことを許しておらんで、もう何年も葉柴と口を利いておらん」

「許す……」

 いったい明人が何をしでかしたというのだろうか――
 真由乃のわだかまりは増す一方だった。

「ワシも許したわけじゃないが、お互い前に進まんくてはならんからの……」

「天音さんが当主なのも、今の話に関係するんですか?」

 天音が当主であると聞いて疑問だった。

 天音に父はいないのか――
 いるとすれば、天音が当主になるには若すぎやしないか――

 鋭い質問だったらしく、衛門は目を丸くして驚いていた。

「あの……明人さんは、天音さんに一体何を――」

「まあ詳しくは本人に聞いてみると良い。隠すことでも無かろう、お主に覚悟さえあればな」

 真由乃は、それ以上は聞けなかった。
 衛門の言う通り、あとは明人本人に聞くことだと思ったし、まだその覚悟はできていなかった。

「……環日よ」

「はい」

 衛門は、いつの間にか真由乃に向き直り、緊張感溢れる目を向けていた。
 真由乃も戸惑いながら、真剣な顔で衛門に向き合った。

「……葉柴の家系は美貌に恵まれ、その美しさは『毒』を併せ持つ」

「毒……」

「ヒトを魅了し、ヒトを冒す――それを『呪われた血』と揶揄やゆするモノもおろうてな」

「それは……明人さん、も?」

 衛門は、真剣な顔でゆっくりと頷いた。

葉柴ヤツは何でも抱え込んでしまうことがある。奴の能力なら大抵は解決できてしまうが、いつしか1人では太刀打ちできない時がくるであろう」

「はい」

 真由乃は、明人から相談を受けたことが無い。どんな困難にぶち当たっても、真由乃から何も言わなければ、きっと1人で問題を解決しようとしてしまう。

「そんな時、ヤツのことを支え、助けになって欲しい」

 答えは、当然決まっている。

「はい、もちろんです」

 衛門は、安心したような顔で本殿へと帰っていった。
 儀式が終わるまで待とうかとも考えたが、やはり真由乃は帰ることにした。
 さっきまでとは違う理由で、早く明里と話をしたかった。

「あかりんなら、明人さんのこと何か知ってるかな」

 真由乃は、考えを巡らしながら長い石段を降りて行く――
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