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第3章 夢の未来
27話 軍神ミリー
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「軍神ミリーただいま昼休憩より帰還しました。」
そう言いながらピシリと綺麗に敬礼をしたのは、俺の同期であるユメノミライ一期生の軍神ミリーその人だった。
「お、ミリー久しぶりだな」
俺がミリーの方に振り向き手を振りながら声をかけると、まさか俺がここにいるとは思っても見なかったのか、先程までのキリッとした顔つきから、一瞬普通の女の子が驚いた時の表情に変わった。
だが次の瞬間にはいつもの少し厳しそうな顔つきに戻り、俺たちの元へと少し早足つまり競歩気味で歩み寄って来た。
「お久しぶりです、サー。まさかまたあなたに出会える日が来ようとは……この喜びをどう表現すればよいのかわからないほどです。」
「おお、そうか……」
相変わらずミリーの奴ガッチガチに硬いまんまだな……
と言うかむしろ昔よりも硬くなったか?
「あのさミリー」
「なんでありますか?サー」
「昔から言ってるんだけど、その俺の事をサーって呼ぶのやめてくんない?すげぇ恥ずかしいんだけど」
「であれば、マスターなどは如何でしょうか?」
「いや、如何でしょうか?ってお前なぁ……普通にホムラじゃダメなのか?」
「ですが、軍人たる者上官にその様なことは……」
「いや、絶対誰もそんな昔の設定覚えてないって!」
ミリーの言う上官とは、昔俺達一期生はユメノミライ学園の生徒会メンバーという設定で売り出されており、その中で星野キラメは二年生にして生徒会長をやっており、軍神ミリーはぴちぴちの一年生会計で、ここには居ないもう1人の母出マミは三年の書記、そして俺こと九重ホムラが三年の副会長を務めていると言う設定なのだが……
久瀬ヤウロの事件から運営は俺と他のメンバーを分け、その際に俺以外のメンバーは元の制服衣装を封印され、それぞれに似合う新衣装に描き換えられ、公式の設定欄からもユメノミライ学園の存在は消されたので、この設定は本当に初期から見ている人しかわからないのだ。
つまりはミリーが俺の事を上官(生徒会の役職上)として扱っている設定を覚えている奴などほとんど居らず、俺がそんな小っ恥ずかしい呼ばれ方をする筋合いはないのだ。
「例え世間がそれを忘れようとも、我々が覚えているかぎりこの関係は変わりませんので、私はこれから先もサーの事はサーと呼ばせていただきます」
そう言ったミリーの表情を見て俺はこれ以上何を言っても無駄だと感じて、久しぶりに会ったミリーとの会話はほどほどに今日俺がここに来た理由である、ノマドとミリーとの喧嘩の仲裁をすべく動く事にシフトした。
「わかったわかった。じゃあもう俺の事ことはサーとでもマスターとでもなんとでも呼んでくれ。それでだな実はお前に用があってここに今日ここに来たんだ」
「私にですか?」
「ああ、まぁ用があるのは俺じゃなくてアイツだけどな」
と、ミリーが来てからずっとキラメの背後に隠れていたノマドを指差した。
それにつられてミリーが俺が指差した先を見ると、こっそりとこちらの様子を窺っていたノマドとばっちりと目線があった。
「ヒッ」
「おやおやおやおやノマドではありませんか……」
ノマドを見つけたミリーは先程までの優しい雰囲気は何処へやら、それこそまさに本物の軍人の様な迫力を出しながらゆっくりとノマドの方へと歩みを進めていき、それに連動する様にノマドもゆっくりと後ろに下がっていった。
「ははは……ど、どうもっス」
その様子を見て、てっきり俺はノマドがレッスンを無断で休んでケンカをしたのだと思っていたのだが、ミリーが結構ガチめにキレている様子を見て、一体全体ノマドの奴が何をしたとかが気になりながらも、その様子を静かに観察していると、ノマドはいつの間かスタジオの端まで行っており、ミリーに追い詰められていた。
「いやいやちょっと待って欲しいっスミリー先輩」
「ほう、私はまだ何もしていないのだが、待てとはどう言う意味だ?」
「いや……そのっスね」
これは終わったな。
と思った瞬間先程までのゆっくりした動きから、一気に全速疾走でスタジオの扉から外へ勢いよく飛び出し、それを見たミリーもノマドの後を追う様に、全力で走って追いかけ始め、スタジオ内には俺とキラメだけが残された。
そこで俺は何故あそこまでミリーがキレていたのかをキラメに聞く事にした。
「なあキラメちょっと聞きたいんだけどさ、俺が会ってないうちにミリーってもしかしてキレやすくなったとかあるのか?なんかすごい怒ってたけどさ。ノマドからは単に喧嘩したとだけ聞いてたし、どうせノマドの事だから遅刻か無断欠席とかだと思うんだけど」
「あー、それ実はね……」
そう言ってキラメが少し背伸びをして俺の耳元で話したのは
「差し入れでもらった人気スイーツ店のケーキを1人で全部食べた!?」
「うん」
バカだ……
それを聞いた俺の感想はこの一言に尽きる。
改めてキラメから聞いた話をまとめると?
いつもの様にキラメ達がここのスタジオでレッスンをやっている時に、ミリーのマネージャーさんが皆んながレッスンを頑張っているのを見て、ミリーがずっと食べたいと言っていた、朝から行列が出来るほどのスイーツ店のお菓子を差し入れに持って来てくれたらしく、それを聞いた遅刻をしていてその場に居なかったノマドを抜いた4人は、そのお菓子を休憩時間に食べるのを楽しみにその日のレッスンはいつもよりも張り切ってやっていたらしい。
そしてスタジオ内には食べ物の持ち込みが禁止だった為、そのお菓子は外にある荷物置き場に置いていたのだが、そこにレッスンが始まってから2時間も遅れて呑気にスタジオに来たノマドが、荷物を置きに行ったらそこにお菓子が置いてあり、ちょうど寝起きだったノマドは朝食を取っておらず、腹を満たすためにそのお菓子を1人でペロリと完食して、その時ちょうどレッスンが一旦終わりミリー達がスタジオからお菓子を食べに出て来た所でノマドと遭遇し、ただでさえここまでの所業でアウトなのに、あろう事かノマドはお菓子を食べた事をミリーに指摘された時に、
「あーボク的には、ちょっと甘すぎて微妙だったスね」
と言ったらしく、そこで楽しみにしていたお菓子を食べられた事に加え、勝手に食べたくせに微妙だったと言った事でミリーがブチギレ
それはもうびっくりする程キレたらしく、その勢いはキラメ達が止めなければ、ノマドを馬乗りで一方的にボコボコにしてしまいそうな勢いだったらしく、そこでノマドはその様子が本当に怖かったのか、半泣きで荷物をほっぽったまま全速力で逃げ帰ったらしい。
その後冷静になったノマドがキラメに相談した所、俺のところに行けばなんとかなるよと言われて、そこからは俺も知っている通りなのだが……
「ノマドってこんなにバカだったのか?」
「バカってホムラくん……多分アレだよきっとノマドちゃんも寝起きだったからだよ」
「そうか?と言うかキラメお前、ノマドのメンタルケアが面倒だからって、俺の方に投げるなよ!何だよ俺の所に行けば何とかなるって……」
「えーでも、昔っから何かあったらホムラくんが解決してくれたじゃん!ほら、私達が配信開始したはいいものの、機材やら回線が足りなかった時とかも、機材貸してくれたり、回線工事が終わるまでホムラくんの家で配信させてくれたりさ!他にも……」
「あーはいはい、わかったわかったわかりました。じゃあ次からはせめて事前に連絡をくれ、いきなり家に住所を知ってるはずがない奴が、いきなり来た時はすげぇ怖いからさ」
俺がそう言うと、キラメはそれもそっか!という表情をして、今度からは連絡するね!と言ってくれた。
そして俺は今日ここに来た理由のノマド関連が解決?した様だし、これ以上俺がここに居るのはよく無いと思い、帰ろうとしたところでキラメに呼び止められた。
「ねぇ、ホムラくん」
「ん、なに?どした?」
「私たちまた昔みたいにホムラくんの家でコラボしてもいいかな?」
キラメのそう言った時の表情は、今のユメノミライを背負う皆んなのリーダー星野キラメの自信に満ちた表情ではなく、ユメノミライに入りたてだった当時まだ確か高校生だった時の、これから先もvtuberを続けていけるか、また人気になれるのか皆んなに星野キラメとして認めてもらえるか不安で仕方なかった時の様な、弱々しい表情だった。
そう言われた俺はスッとキラメから顔を逸らして呟いた。
「ごめん」
「……そっか、そうだよね」
そのキラメの声は明らかに落ち込んでいる時の声で、もし今キラメの顔を少しでも見てしまえば、俺は多分キラメを悲しませまいと許可してしまうだろう。
だが俺にも、例えキラメや他の一期生に言われたとしても、絶対に曲げたく無い、いや曲げられない事はある。
それは…………俺がキラメ達の邪魔になる事だけはやりたくないと言う事だ。
多分キラメ達はそんな事望んでいないと思う、今でも何度もコラボの誘いがくるし、運営にも何かと話していると聞く、そして何よりユメノミライの方針が変更になる時は最後の最後まで反対していたし。
だからこそ、俺が今日ここに顔を出したからキラメは可能性があると思い、先ほどの様な質問をしたのだろう。
そして今こんな事を考えている俺も、本当は昔の様に皆んなとコラボしたりしたいのだと思う……
これ以上ここに居たら俺の気持ちが変わってしまうかもしれないと感じたので、俺はキラメの方には向かずに軽く手を振ってから、足早にスタジオの外へと駆け出した。
そして帰りは何も考えない様に、俺も全速力で走って駅まで向かった。
◯
一方その頃、ノマド達は……
「ご、ごべんなざいぃぃぃっスゥ!」
「は?今何か言ったか?私に聞こえる様にもっと大きな声で言ってみろ!」
「勝"手"に、ミ"リー先輩達のおがじだべでごべんなざいでじだっスゥゥゥ!」
結局ノマドはスタジオを出てすぐに追いかけて来たミリーに捕まり、スタジオのスタッフさんが見ている中、廊下のど真ん中で散々説教され、ガチ泣きしながら頭を地面に擦り付けながら、阿修羅の様な顔をしているミリーに謝り散らかしていた。
ちなみ結局ノマドが許されたのはこれから1時間後で、その間ずっと廊下で土下座させられていたせいで、そのスタジオでたまに部屋の外から女性の鳴き声がすると、少し噂になったとかならなかったとか……
そう言いながらピシリと綺麗に敬礼をしたのは、俺の同期であるユメノミライ一期生の軍神ミリーその人だった。
「お、ミリー久しぶりだな」
俺がミリーの方に振り向き手を振りながら声をかけると、まさか俺がここにいるとは思っても見なかったのか、先程までのキリッとした顔つきから、一瞬普通の女の子が驚いた時の表情に変わった。
だが次の瞬間にはいつもの少し厳しそうな顔つきに戻り、俺たちの元へと少し早足つまり競歩気味で歩み寄って来た。
「お久しぶりです、サー。まさかまたあなたに出会える日が来ようとは……この喜びをどう表現すればよいのかわからないほどです。」
「おお、そうか……」
相変わらずミリーの奴ガッチガチに硬いまんまだな……
と言うかむしろ昔よりも硬くなったか?
「あのさミリー」
「なんでありますか?サー」
「昔から言ってるんだけど、その俺の事をサーって呼ぶのやめてくんない?すげぇ恥ずかしいんだけど」
「であれば、マスターなどは如何でしょうか?」
「いや、如何でしょうか?ってお前なぁ……普通にホムラじゃダメなのか?」
「ですが、軍人たる者上官にその様なことは……」
「いや、絶対誰もそんな昔の設定覚えてないって!」
ミリーの言う上官とは、昔俺達一期生はユメノミライ学園の生徒会メンバーという設定で売り出されており、その中で星野キラメは二年生にして生徒会長をやっており、軍神ミリーはぴちぴちの一年生会計で、ここには居ないもう1人の母出マミは三年の書記、そして俺こと九重ホムラが三年の副会長を務めていると言う設定なのだが……
久瀬ヤウロの事件から運営は俺と他のメンバーを分け、その際に俺以外のメンバーは元の制服衣装を封印され、それぞれに似合う新衣装に描き換えられ、公式の設定欄からもユメノミライ学園の存在は消されたので、この設定は本当に初期から見ている人しかわからないのだ。
つまりはミリーが俺の事を上官(生徒会の役職上)として扱っている設定を覚えている奴などほとんど居らず、俺がそんな小っ恥ずかしい呼ばれ方をする筋合いはないのだ。
「例え世間がそれを忘れようとも、我々が覚えているかぎりこの関係は変わりませんので、私はこれから先もサーの事はサーと呼ばせていただきます」
そう言ったミリーの表情を見て俺はこれ以上何を言っても無駄だと感じて、久しぶりに会ったミリーとの会話はほどほどに今日俺がここに来た理由である、ノマドとミリーとの喧嘩の仲裁をすべく動く事にシフトした。
「わかったわかった。じゃあもう俺の事ことはサーとでもマスターとでもなんとでも呼んでくれ。それでだな実はお前に用があってここに今日ここに来たんだ」
「私にですか?」
「ああ、まぁ用があるのは俺じゃなくてアイツだけどな」
と、ミリーが来てからずっとキラメの背後に隠れていたノマドを指差した。
それにつられてミリーが俺が指差した先を見ると、こっそりとこちらの様子を窺っていたノマドとばっちりと目線があった。
「ヒッ」
「おやおやおやおやノマドではありませんか……」
ノマドを見つけたミリーは先程までの優しい雰囲気は何処へやら、それこそまさに本物の軍人の様な迫力を出しながらゆっくりとノマドの方へと歩みを進めていき、それに連動する様にノマドもゆっくりと後ろに下がっていった。
「ははは……ど、どうもっス」
その様子を見て、てっきり俺はノマドがレッスンを無断で休んでケンカをしたのだと思っていたのだが、ミリーが結構ガチめにキレている様子を見て、一体全体ノマドの奴が何をしたとかが気になりながらも、その様子を静かに観察していると、ノマドはいつの間かスタジオの端まで行っており、ミリーに追い詰められていた。
「いやいやちょっと待って欲しいっスミリー先輩」
「ほう、私はまだ何もしていないのだが、待てとはどう言う意味だ?」
「いや……そのっスね」
これは終わったな。
と思った瞬間先程までのゆっくりした動きから、一気に全速疾走でスタジオの扉から外へ勢いよく飛び出し、それを見たミリーもノマドの後を追う様に、全力で走って追いかけ始め、スタジオ内には俺とキラメだけが残された。
そこで俺は何故あそこまでミリーがキレていたのかをキラメに聞く事にした。
「なあキラメちょっと聞きたいんだけどさ、俺が会ってないうちにミリーってもしかしてキレやすくなったとかあるのか?なんかすごい怒ってたけどさ。ノマドからは単に喧嘩したとだけ聞いてたし、どうせノマドの事だから遅刻か無断欠席とかだと思うんだけど」
「あー、それ実はね……」
そう言ってキラメが少し背伸びをして俺の耳元で話したのは
「差し入れでもらった人気スイーツ店のケーキを1人で全部食べた!?」
「うん」
バカだ……
それを聞いた俺の感想はこの一言に尽きる。
改めてキラメから聞いた話をまとめると?
いつもの様にキラメ達がここのスタジオでレッスンをやっている時に、ミリーのマネージャーさんが皆んながレッスンを頑張っているのを見て、ミリーがずっと食べたいと言っていた、朝から行列が出来るほどのスイーツ店のお菓子を差し入れに持って来てくれたらしく、それを聞いた遅刻をしていてその場に居なかったノマドを抜いた4人は、そのお菓子を休憩時間に食べるのを楽しみにその日のレッスンはいつもよりも張り切ってやっていたらしい。
そしてスタジオ内には食べ物の持ち込みが禁止だった為、そのお菓子は外にある荷物置き場に置いていたのだが、そこにレッスンが始まってから2時間も遅れて呑気にスタジオに来たノマドが、荷物を置きに行ったらそこにお菓子が置いてあり、ちょうど寝起きだったノマドは朝食を取っておらず、腹を満たすためにそのお菓子を1人でペロリと完食して、その時ちょうどレッスンが一旦終わりミリー達がスタジオからお菓子を食べに出て来た所でノマドと遭遇し、ただでさえここまでの所業でアウトなのに、あろう事かノマドはお菓子を食べた事をミリーに指摘された時に、
「あーボク的には、ちょっと甘すぎて微妙だったスね」
と言ったらしく、そこで楽しみにしていたお菓子を食べられた事に加え、勝手に食べたくせに微妙だったと言った事でミリーがブチギレ
それはもうびっくりする程キレたらしく、その勢いはキラメ達が止めなければ、ノマドを馬乗りで一方的にボコボコにしてしまいそうな勢いだったらしく、そこでノマドはその様子が本当に怖かったのか、半泣きで荷物をほっぽったまま全速力で逃げ帰ったらしい。
その後冷静になったノマドがキラメに相談した所、俺のところに行けばなんとかなるよと言われて、そこからは俺も知っている通りなのだが……
「ノマドってこんなにバカだったのか?」
「バカってホムラくん……多分アレだよきっとノマドちゃんも寝起きだったからだよ」
「そうか?と言うかキラメお前、ノマドのメンタルケアが面倒だからって、俺の方に投げるなよ!何だよ俺の所に行けば何とかなるって……」
「えーでも、昔っから何かあったらホムラくんが解決してくれたじゃん!ほら、私達が配信開始したはいいものの、機材やら回線が足りなかった時とかも、機材貸してくれたり、回線工事が終わるまでホムラくんの家で配信させてくれたりさ!他にも……」
「あーはいはい、わかったわかったわかりました。じゃあ次からはせめて事前に連絡をくれ、いきなり家に住所を知ってるはずがない奴が、いきなり来た時はすげぇ怖いからさ」
俺がそう言うと、キラメはそれもそっか!という表情をして、今度からは連絡するね!と言ってくれた。
そして俺は今日ここに来た理由のノマド関連が解決?した様だし、これ以上俺がここに居るのはよく無いと思い、帰ろうとしたところでキラメに呼び止められた。
「ねぇ、ホムラくん」
「ん、なに?どした?」
「私たちまた昔みたいにホムラくんの家でコラボしてもいいかな?」
キラメのそう言った時の表情は、今のユメノミライを背負う皆んなのリーダー星野キラメの自信に満ちた表情ではなく、ユメノミライに入りたてだった当時まだ確か高校生だった時の、これから先もvtuberを続けていけるか、また人気になれるのか皆んなに星野キラメとして認めてもらえるか不安で仕方なかった時の様な、弱々しい表情だった。
そう言われた俺はスッとキラメから顔を逸らして呟いた。
「ごめん」
「……そっか、そうだよね」
そのキラメの声は明らかに落ち込んでいる時の声で、もし今キラメの顔を少しでも見てしまえば、俺は多分キラメを悲しませまいと許可してしまうだろう。
だが俺にも、例えキラメや他の一期生に言われたとしても、絶対に曲げたく無い、いや曲げられない事はある。
それは…………俺がキラメ達の邪魔になる事だけはやりたくないと言う事だ。
多分キラメ達はそんな事望んでいないと思う、今でも何度もコラボの誘いがくるし、運営にも何かと話していると聞く、そして何よりユメノミライの方針が変更になる時は最後の最後まで反対していたし。
だからこそ、俺が今日ここに顔を出したからキラメは可能性があると思い、先ほどの様な質問をしたのだろう。
そして今こんな事を考えている俺も、本当は昔の様に皆んなとコラボしたりしたいのだと思う……
これ以上ここに居たら俺の気持ちが変わってしまうかもしれないと感じたので、俺はキラメの方には向かずに軽く手を振ってから、足早にスタジオの外へと駆け出した。
そして帰りは何も考えない様に、俺も全速力で走って駅まで向かった。
◯
一方その頃、ノマド達は……
「ご、ごべんなざいぃぃぃっスゥ!」
「は?今何か言ったか?私に聞こえる様にもっと大きな声で言ってみろ!」
「勝"手"に、ミ"リー先輩達のおがじだべでごべんなざいでじだっスゥゥゥ!」
結局ノマドはスタジオを出てすぐに追いかけて来たミリーに捕まり、スタジオのスタッフさんが見ている中、廊下のど真ん中で散々説教され、ガチ泣きしながら頭を地面に擦り付けながら、阿修羅の様な顔をしているミリーに謝り散らかしていた。
ちなみ結局ノマドが許されたのはこれから1時間後で、その間ずっと廊下で土下座させられていたせいで、そのスタジオでたまに部屋の外から女性の鳴き声がすると、少し噂になったとかならなかったとか……
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