最強の異世界チートを考える会エルデネンス支部

1章 ようこそエルデネンスへ！

愉快な仲間たち

「というわけで、今日からこの家の仲間になるヤハリケントくんです！こっちに来たばかりの子だから、皆仲良くしてあげてね～」

「はい！皆さんよろしくお願いします！」

緩やかにウェーブのかかったきれいな金髪を持つおっとりとした調子の女性……モモさんに紹介される。
家というよりは小さめの城と言ったほうが相応しいような大きなお屋敷のロビーには、ミアナや俺のように普段着に近い民族衣装のような服を着た者の他にも、鎧を着た男性や、ひらひらとドレスのようなものを身にまとった女性など様々だった。


……ドレスの女性は魔法使いなんだろうか？ワイヤーでも入っているのかわざとらしいくらい広がったスカートに30cmは優に超える程の大きな三角帽をかぶっている。


みんな剣の手入れをしたり、裁縫をしたりとそれぞれ別々の事をしているようで、あまり会話は多くないようだった。

ロビーに居た人たちは、俺の紹介を聞いて各々こちらを向いて「おねがいします」とだけ言うと各自の作業に戻ってしまった。


……鎧の人とかは戦闘技能持ちだったりするんだろうなぁ。いいなぁ


そんないかにも戦闘スキル持ちの人に話しかけるなどもせず、俺はミアナに案内されて、今日から過ごす自室を目指す。


というか、ルームシェアする相手の性格とかヤバイ趣味はないかとか調べるための面接みたいなのは無くて良かったんだろうか。

モモさんの部屋へ行ってお願いしたら即OKが出てしまった。
俺にはそんな度胸はないけど、もしも俺が若い女性に見境なく手を出してしまったり夜寝室に忍び込んだりするような不届き者だったらどうするつもりなんだろう。



「ここに居る人は全員チートを持ってるって事なんだよな……」

「そうなりますね、人によってスキルはてんでバラバラですけど」

ミアナは俺の前を歩いたまま、こちらを見ることもせずにそう答えた。
なんというか、せっかくの異世界なのにここまでで話したことがあるの全員日本人な気がする。


「あ、ほら着きましたよ！今日からここがケントさんのお城です！」

5分ほど屋敷内を歩いて居ただろうか？ロビーからは離れた角部屋で、すぐとなりには一人用ソファーが4席置かれた読書スペースのようなものがある。

観葉植物も置かれているが、小さなヤシの木にリンゴを実らせたような見たこともない植物だ。
……申し訳程度の異世界感。

ミアナから鍵が手渡される。アンティーク調の小さな金色の鍵だが屋敷同様真新しいようだった。

「おおおお！」

「ねーすごいでしょう？」

思わず声が出た。
10畳ほどのベッドに柔らかそうなコットン製のシーツがかかったベッド、恐らく羽毛だと思われるふかふかの掛け布団に、同じくアンティーク調に統一されつつもシンプルで使いやすそうな机。

あと何かよく分からない赤い結晶が中に入ったランタン的なもの。


「ミアナ、これなに？」

俺の問いかけに、ミアナは「よくぞ聞いてくれました」というような表情をして、ランタンのガラス部分をコンコンと2回ノックするように叩いた。