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1章 ようこそエルデネンスへ!
魔法の力ってすげー
しおりを挟むミアナがランタンをノックすると、白い結晶がぼうっと白い光を灯し、輝き始めた。
カーテンの閉められた若干薄暗い部屋がランタンの光に照らされる。
「これは光の魔力石です。光の魔力を閉じ込めてあるんですよ」
異世界要素だ!
「じゃあこれは魔法のランタンってこと?」
「そうですね。この魔法石がこの世界の電気みたいなものになるんですよ。冷蔵庫代わりには氷の魔法石……とか。そういったものに、特定の魔法を発動させる回路みたいなのを合わせて作られた魔道具が主流なんです。このランタンみたいに」
なるほど、魔法のある世界に電気は不要ということなのだろうか。
しかしこの魔法石とやらは鉱山から採掘できたりするのだろうか。
ランタン一つでも結晶を一欠使うくらいだから結構大量消費しそうなものだけど……。
「この魔法石はですね。素体となるワイナストーンという石に魔法使いさん達が魔力を込めることで結晶になるんですよ。ワイナストーンは……ほら、さっきロビーに居たいかにも魔法使いのリリエールさん。彼女も魔法石を作るので後で見せてもらってくださいね。このワイナストーン関係のお仕事も多いらしいですから」
俺の考えていたことを察したのかミアナはそう説明した。
この世界で一番仕事がしやすそうなのは魔法使いだなあ、俺も光の大魔法使いとかに転生したかった。
そんでもって無双とかしたかった。
「そう言えば、この世界って魔王とか居るの?」
異世界で無双で思い出した。
そもそもこの世界に魔王みたいなのは居るのだろうか。魔物は居るらしいけど、まだ見たことがない気がする
「うーん?どうなんでしょう?魔物は確かに人間を襲う厄介な生き物ですがその影にもっと大きな力が……とかは今の所聞いてないですね。というか私も異世界生活1週間なんですから私に聞かないでもっとベテランの人とかユンバァとかに聞いて下さいよ~」
ミアナがしゅんと、少ししぼんだ気がした。
そう言えば会った時に1週間だとか言ってたな……。1週間か
「ユンバァの話じゃさ、若くして死んだ日本人は基本的にこの世界に転生するんだよな?」
「えぇ、そういう話みたいですね」
しぼんでいたミアナが膨らみを取り戻し、俺の顔を見上げる。かわいい。
「1週間前に都成幸太っていう従兄弟が交通事故で死んだんだよ。そいつにここでなら会えるかな―って。聞いたことない?」
俺の言葉に、ミアナは少しだけ悲しむような考え込むような表情をしてから答える。
「そうですね、きっと会いたいと願い続ければいつかは会えると思いますよ。この世界にいるのはきっと間違いないんですから……でもですね?」
ミアナは苦笑いを浮かべてからこう続けた。
「姿を見てお互い従兄弟同士だって気付きますかね……?名前だって新しい名前を名乗る方が多いですし……」
……確かに、もしも幸太が銀髪ロン毛で全身ムキムキとかになってたら分からない自信がある。
でも……
「俺の名前が有名になれば、もしかしたら幸太の方から会いに来てくれるかも知れないからな!探すだけ探すよ」
「頑張って下さい、ケントさん」
そう言ってミアナは優しく微笑んだ。ランタンの光を背にしているせいか、いつものミアナの微笑みよりも少しだけ温かい気がした。
「しかし……1週間で2人死ぬって我が家呪われてたんかな……」
片方は猫を助けようとして交通事故死、もう片方は落ちてきた植木鉢に当たって……だからどちらかと言うと呪われてるのは俺単体かもしれない。
「笑えませんよ」
そう言ってミアナは少し困ったような、悲しそうな表情でクスリと笑った。
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