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終章・魔王大戦
62 勇者
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「ぼくはブレイ。かつて勇者と呼ばれたもの」
そういってブレイは自らの過去を話し始めた。
千年以上前魔王討伐後
魔王を倒した勇者一行はそれぞれ故郷に戻っていた。
ブレイは勇者一行の中でも一番の田舎もので、都会に憧れて王都に出てきたことが勇者に選ばれるきっかけとなった。
だが彼は長い旅の末に己が帰る場所は生まれ故郷だと悟り、戦いの後は村で普通に生きるつもりであった。
ジュディが裏切られなければ。
田舎の村であったため情報が入るのが一番遅かったブレイがジュディのいる王国にたどり着いた時にはすでに彼女は地位も名誉も奪われた後であった。
先に到着していた仲間たちとともにジュディの地位と名誉の回復のために行動を開始した。
王国が手をまわしていたとしても勇者一行の本人たちが否定して回ればいずれ王国の嘘は暴かれる。
焦った王国側は慌ててジュディを処刑しようとした。もちろん冤罪でだ。
ブレイ達がそのことに気が付いた時にはジュディの細い首に刃が振り下ろされる寸前であり、彼らは間に合わなかった。
たどり着いた時にはヴァーンズの気配と処刑人と見届け人の無惨な死体が転がっているだけであった。
その後いくら探してもジュディ達を見つけることはできなかった。
そのことでブレイ達は悟った。
「ぼくたちは彼女の信頼を失ったのだと」
ブレイは痛みに耐えるような顔を一瞬したが、すぐ切り替えて話を続ける。
ブレイ達が途方に暮れていると、女神フローリアが現れた。
フローリアはジュディが受けた仕打ちを語る。
彼女自身もジュディを救うために何度も神託を下したのに神官たちに無視されたことも。
「わたくしが制約により直接手を出せないことをいいことに彼らは好き勝手に物事を行い。わたくしの巫女を堕としました。裁きが必要です」
そう告げた女神には恐ろしいほどの怒りが見て取れた。
制約により直接手を出せない彼女は神の裁きの代理人としてブレイ達を任命し、王国への裁きが始まる。
「女神フローリアからの命である。王国は即刻ジュディに対しての仕打ちを謝罪し、現況たる王女を速やかにこちらに渡せ」
ブレイは国王の前で告げる。
国王はその言葉に従うと言い、一人の少女を連れてきた。
「我が娘にして現況の王女マリーゴールドでございます」
「残念ね」
どこからともなく響くのは女神の声。
制約のため声を届けることですら高位の神官などの決まった相手にしか出来ない彼女であったが、約束を反故にされた場合は例外として干渉が可能になる。
謁見の間に女神が降臨する。
「ひぃいい!女神!?本当にいたのか!?」
「…巫女の奇跡をまじかで見ておきながらわたくしの存在を認識できていないなんて…愚王としか言いようがないわね」
「お許しください!お許しください!」
頭をたれて情けない声を上げる国王。
そんな国王には目もくれずマリーゴールド王女と呼ばれた少女の方を向く。
「身代わりにされてかわいそうねマリアン大丈夫だからこちらにいらっしゃい」
「!?…め、女神様…!」
女神がマリアンと呼んだ少女は身代わりだった。
国王が町娘を無理やり襲い作った子供。
国王の血を引いているとばらせば殺すと脅されながら下町でひっそりと生きていた少女。
わがまま王女のマリーゴールドと容姿が似ていたために無理やり身代わりにされてしまった哀れな少女。
国王の浅はかな企みは女神には通じない。
「ちょっと!お離しなさいよオバサン!」
「あら?勇者一行のメンバーを自称したくせに魔法使いクォーツのことを知らないなんて不思議ね?」
とんがり帽子をかぶったいかにも魔女という姿をした女性に連れられてやたら派手な少女がやってきた。
本物のマリーゴールド王女である。
「クォーツよく連れてきましたね」
「ジュディを貶めた現況ですものとうぜんですわフローリア様」
「フローリア?女神様!助けて!このおばさんが私を無理やり連れてきたの!巫女の私を助けて!」
状況を理解せずにわめくマリーゴールドにフローリアは眉間のしわを深くした。
「どう育てたらこんなに救えない存在が出来上がるのかしらね…」
「フローリア様?」
「黙りなさい小娘。わたくしはあなたに名を呼ぶ権利は与えていない」
その声はどこまでも冷たかった。
そしてその場にいる国王や貴族たちにも宣言するようにフローリアは罰を告げる。
「マリーゴールドはわたくしの元で最も過酷で汚くつらい仕事を2千年ほどやってもらうわ。なに不死の力を与えるから死にはしないわ」
「いや!汚いこともつらいのも嫌!」
「そしてこの国は存続する価値はないわ。わたくしが指名するまともな貴族以外は地位を剥奪」
「無視しないで女神様!」
「わたくしは制約をつかさどる特性上死刑などをあなたたちに与えることはできないけど…国として女神の怒りを買った王族の対応はまあ大体決まってるわよね?侯爵」
女神の言葉にスッと現れたのはジャスティア侯爵。女神が指名するまともな貴族の一人であり、新たな国の先導者でもある。
マリーゴールドは今もわめいている。
「はい、女神の寵愛する巫女をないがしろにし傷つけ堕とした罪は大きい。人間の法としても処刑にしかなりません」
「そう、時代の先導者がそういうのならわたくしは干渉いたしません。あなたの思うように新しく正しい国をほかの同志たちとともに作り上げなさい」
御心のままにと深く頭を下げるジャスティア侯爵。
女神に宣言された時点で彼は神に認められし先導者。異を唱えることはすなわち女神の決定に反対することと同義。
国王や腐った貴族たちは自分たちにもはや退路は無いことを悟った。
最後まで嫌だと叫びつづけた王女は無事に連れていかれ、王女の身代わりにされたマリアンも無事に母親の元に変えることが出来た。
その後大半の貴族は平民になり、王族そのほとんどが処刑か毒杯を煽ることとなった。
その時点で王国は消滅。ジャスティア侯爵によって王政ではない議会制の国へ生まれ変わる。
その国は多少形を変えたものの現在も存続している。
そして勇者一行はその後故郷に戻らずに姿を消した。
そういってブレイは自らの過去を話し始めた。
千年以上前魔王討伐後
魔王を倒した勇者一行はそれぞれ故郷に戻っていた。
ブレイは勇者一行の中でも一番の田舎もので、都会に憧れて王都に出てきたことが勇者に選ばれるきっかけとなった。
だが彼は長い旅の末に己が帰る場所は生まれ故郷だと悟り、戦いの後は村で普通に生きるつもりであった。
ジュディが裏切られなければ。
田舎の村であったため情報が入るのが一番遅かったブレイがジュディのいる王国にたどり着いた時にはすでに彼女は地位も名誉も奪われた後であった。
先に到着していた仲間たちとともにジュディの地位と名誉の回復のために行動を開始した。
王国が手をまわしていたとしても勇者一行の本人たちが否定して回ればいずれ王国の嘘は暴かれる。
焦った王国側は慌ててジュディを処刑しようとした。もちろん冤罪でだ。
ブレイ達がそのことに気が付いた時にはジュディの細い首に刃が振り下ろされる寸前であり、彼らは間に合わなかった。
たどり着いた時にはヴァーンズの気配と処刑人と見届け人の無惨な死体が転がっているだけであった。
その後いくら探してもジュディ達を見つけることはできなかった。
そのことでブレイ達は悟った。
「ぼくたちは彼女の信頼を失ったのだと」
ブレイは痛みに耐えるような顔を一瞬したが、すぐ切り替えて話を続ける。
ブレイ達が途方に暮れていると、女神フローリアが現れた。
フローリアはジュディが受けた仕打ちを語る。
彼女自身もジュディを救うために何度も神託を下したのに神官たちに無視されたことも。
「わたくしが制約により直接手を出せないことをいいことに彼らは好き勝手に物事を行い。わたくしの巫女を堕としました。裁きが必要です」
そう告げた女神には恐ろしいほどの怒りが見て取れた。
制約により直接手を出せない彼女は神の裁きの代理人としてブレイ達を任命し、王国への裁きが始まる。
「女神フローリアからの命である。王国は即刻ジュディに対しての仕打ちを謝罪し、現況たる王女を速やかにこちらに渡せ」
ブレイは国王の前で告げる。
国王はその言葉に従うと言い、一人の少女を連れてきた。
「我が娘にして現況の王女マリーゴールドでございます」
「残念ね」
どこからともなく響くのは女神の声。
制約のため声を届けることですら高位の神官などの決まった相手にしか出来ない彼女であったが、約束を反故にされた場合は例外として干渉が可能になる。
謁見の間に女神が降臨する。
「ひぃいい!女神!?本当にいたのか!?」
「…巫女の奇跡をまじかで見ておきながらわたくしの存在を認識できていないなんて…愚王としか言いようがないわね」
「お許しください!お許しください!」
頭をたれて情けない声を上げる国王。
そんな国王には目もくれずマリーゴールド王女と呼ばれた少女の方を向く。
「身代わりにされてかわいそうねマリアン大丈夫だからこちらにいらっしゃい」
「!?…め、女神様…!」
女神がマリアンと呼んだ少女は身代わりだった。
国王が町娘を無理やり襲い作った子供。
国王の血を引いているとばらせば殺すと脅されながら下町でひっそりと生きていた少女。
わがまま王女のマリーゴールドと容姿が似ていたために無理やり身代わりにされてしまった哀れな少女。
国王の浅はかな企みは女神には通じない。
「ちょっと!お離しなさいよオバサン!」
「あら?勇者一行のメンバーを自称したくせに魔法使いクォーツのことを知らないなんて不思議ね?」
とんがり帽子をかぶったいかにも魔女という姿をした女性に連れられてやたら派手な少女がやってきた。
本物のマリーゴールド王女である。
「クォーツよく連れてきましたね」
「ジュディを貶めた現況ですものとうぜんですわフローリア様」
「フローリア?女神様!助けて!このおばさんが私を無理やり連れてきたの!巫女の私を助けて!」
状況を理解せずにわめくマリーゴールドにフローリアは眉間のしわを深くした。
「どう育てたらこんなに救えない存在が出来上がるのかしらね…」
「フローリア様?」
「黙りなさい小娘。わたくしはあなたに名を呼ぶ権利は与えていない」
その声はどこまでも冷たかった。
そしてその場にいる国王や貴族たちにも宣言するようにフローリアは罰を告げる。
「マリーゴールドはわたくしの元で最も過酷で汚くつらい仕事を2千年ほどやってもらうわ。なに不死の力を与えるから死にはしないわ」
「いや!汚いこともつらいのも嫌!」
「そしてこの国は存続する価値はないわ。わたくしが指名するまともな貴族以外は地位を剥奪」
「無視しないで女神様!」
「わたくしは制約をつかさどる特性上死刑などをあなたたちに与えることはできないけど…国として女神の怒りを買った王族の対応はまあ大体決まってるわよね?侯爵」
女神の言葉にスッと現れたのはジャスティア侯爵。女神が指名するまともな貴族の一人であり、新たな国の先導者でもある。
マリーゴールドは今もわめいている。
「はい、女神の寵愛する巫女をないがしろにし傷つけ堕とした罪は大きい。人間の法としても処刑にしかなりません」
「そう、時代の先導者がそういうのならわたくしは干渉いたしません。あなたの思うように新しく正しい国をほかの同志たちとともに作り上げなさい」
御心のままにと深く頭を下げるジャスティア侯爵。
女神に宣言された時点で彼は神に認められし先導者。異を唱えることはすなわち女神の決定に反対することと同義。
国王や腐った貴族たちは自分たちにもはや退路は無いことを悟った。
最後まで嫌だと叫びつづけた王女は無事に連れていかれ、王女の身代わりにされたマリアンも無事に母親の元に変えることが出来た。
その後大半の貴族は平民になり、王族そのほとんどが処刑か毒杯を煽ることとなった。
その時点で王国は消滅。ジャスティア侯爵によって王政ではない議会制の国へ生まれ変わる。
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