87 / 107
終章・魔王大戦
75 大戦前夜
しおりを挟む
時は流れついに魔王との決戦前夜となっていた。
一応魔王がまだ身動きできない状態ではあるものの、すでにだいぶジュディの力は弱まっているため戦いが始まれば無理やりにでも自由になるだろうと予想されていた。
そもそもの話魔王を発見した時点で攻撃しなかったのは、その時点では魔王を足すだけの火力が存在しなかったからである。
魔王を倒すことが出来るのは神が造りし神器のみ。
修行を終え神器の正式なマスターとなったディートたちやほかの参戦予定者たちは明日の戦いに備えそれぞれの夜を過ごしていた。
「こんなところにいたのか。早く寝ないと明日に響くぞ?」
屋敷の屋根の上で星を眺めていたディートのところにグロリアが現れた。
彼は明日ディートとバディを組んで戦う予定のためルナライズ邸に滞在している。
「ああ、それは分かってるんだけど…ちょっとどうしても出しておきたい答えがあってさ」
「答え?」
「うん僕は魔王が生まれる意味について答えを出したいんだ」
「…意味ってそんなもん無ぇんじゃねか?あれはたしか負の感情がこもった魔力の塊だとかそんなんだったろ?」
「そうだけど、そういうことじゃなくて…うん、それも含めて答えを出したいって言うか…」
「よく分からんが無理すんなよ。…ただ、戦いの前に答えを出しておくことそのものは良いと思うぜ!もやもやしたまま戦うよりわよ」
そういってグロリアは割り当てられた寝室に手を振りながら帰っていく。
口には出さないが、彼は自身とアリーの罪を償うためにも明日の戦いで死力を尽くす覚悟を決めていた。
表面上は変わらない彼の決意をディートだけは感じ取っていた。
寝る前の読書を日課とするイリスは区切りの良い所でしおりを挟んだ。
続きは明日読もう。
明日をちゃんと迎えることが出来れば。
本を置いた後自身の手が震えていることに気が付いた。
怖いのだ。
命を失うことが、失われることが。
ジュディとの闘いで初めて危機を感じた。
魔王との闘いではきっと犠牲は避けられない。
覚悟を決めたからと言って恐怖がなくなるわけでは無い。
思考に捕らわれそうになった時ガチャリと扉が開かれた。
「お義姉様…一緒に寝てもいい?」
「いいわよ。いらっしゃいシェリィ」
お気に入りの枕を抱えたシェリィがベッド入ってきた。
「シャーリィ様のところじゃなくて良かったの?」
「うん、今日はお義姉様と一緒がいいの」
決戦の後方支援のために大聖女にしてディートとシェリィの母親であるシャーリィもすでに帰宅していた。
治療と浄化の力に優れた彼女は後方の医療部隊の一人として負傷した兵士たちの治療と浄化を行う予定だ。
「…お義姉様…私こわいの…明日はきっと今までとは違う。本当の戦いになるともう」
「ええ、そうね」
「お義姉様みたいに怖いのも平気なら良かったのに…」
「それは違うわシェリィ…怖いのは私も同じ。きっと私たち以外も同じ」
「そうなの?」
「戦いが怖くない人はいないわ。でも怖くても大切なものがあるから戦うの。シェリィもそうでしょう?」
イリスはシェリィに笑いかけた。
その笑みにこたえるようにシェリィは小さくうなずく。
その後はたわいのない会話をした後にいつの間にか二人は眠ってしまった。
ジャンとフィリアは部屋から星空を見ていた。
「明日ついに始まるのね…」
「ああ」
沈黙が流れる。
最愛の人が戦場に向かうことに不安があった。
何もできない自分が恨めしかった。
せめて何か気の利いたことを言わなければ、そう思っても彼女の口からは上手く言葉が出ない。
「我が最愛の婚約者フィリア・ノートリス伯爵令嬢」
「ジャン?」
ジャンは引き抜いた神器の魔剣を胸の前に掲げた。
「私は明日の戦いで生き残り、生涯貴女を守り抜くことを剣に誓う。だから、どうか、俺が帰ってくる場所であってほしい」
「!!?」
ジャンの言葉にフィリアの目から涙があふれる。
「…私の最愛の婚約者ジャン・ブルース子爵令息に誓います。私は貴方の帰るべき場所になります。何があっても待ち続けるから…絶対に帰ってきて…」
強く抱きしめあう二人。
帰る場所があるから自分は戦える。
一応魔王がまだ身動きできない状態ではあるものの、すでにだいぶジュディの力は弱まっているため戦いが始まれば無理やりにでも自由になるだろうと予想されていた。
そもそもの話魔王を発見した時点で攻撃しなかったのは、その時点では魔王を足すだけの火力が存在しなかったからである。
魔王を倒すことが出来るのは神が造りし神器のみ。
修行を終え神器の正式なマスターとなったディートたちやほかの参戦予定者たちは明日の戦いに備えそれぞれの夜を過ごしていた。
「こんなところにいたのか。早く寝ないと明日に響くぞ?」
屋敷の屋根の上で星を眺めていたディートのところにグロリアが現れた。
彼は明日ディートとバディを組んで戦う予定のためルナライズ邸に滞在している。
「ああ、それは分かってるんだけど…ちょっとどうしても出しておきたい答えがあってさ」
「答え?」
「うん僕は魔王が生まれる意味について答えを出したいんだ」
「…意味ってそんなもん無ぇんじゃねか?あれはたしか負の感情がこもった魔力の塊だとかそんなんだったろ?」
「そうだけど、そういうことじゃなくて…うん、それも含めて答えを出したいって言うか…」
「よく分からんが無理すんなよ。…ただ、戦いの前に答えを出しておくことそのものは良いと思うぜ!もやもやしたまま戦うよりわよ」
そういってグロリアは割り当てられた寝室に手を振りながら帰っていく。
口には出さないが、彼は自身とアリーの罪を償うためにも明日の戦いで死力を尽くす覚悟を決めていた。
表面上は変わらない彼の決意をディートだけは感じ取っていた。
寝る前の読書を日課とするイリスは区切りの良い所でしおりを挟んだ。
続きは明日読もう。
明日をちゃんと迎えることが出来れば。
本を置いた後自身の手が震えていることに気が付いた。
怖いのだ。
命を失うことが、失われることが。
ジュディとの闘いで初めて危機を感じた。
魔王との闘いではきっと犠牲は避けられない。
覚悟を決めたからと言って恐怖がなくなるわけでは無い。
思考に捕らわれそうになった時ガチャリと扉が開かれた。
「お義姉様…一緒に寝てもいい?」
「いいわよ。いらっしゃいシェリィ」
お気に入りの枕を抱えたシェリィがベッド入ってきた。
「シャーリィ様のところじゃなくて良かったの?」
「うん、今日はお義姉様と一緒がいいの」
決戦の後方支援のために大聖女にしてディートとシェリィの母親であるシャーリィもすでに帰宅していた。
治療と浄化の力に優れた彼女は後方の医療部隊の一人として負傷した兵士たちの治療と浄化を行う予定だ。
「…お義姉様…私こわいの…明日はきっと今までとは違う。本当の戦いになるともう」
「ええ、そうね」
「お義姉様みたいに怖いのも平気なら良かったのに…」
「それは違うわシェリィ…怖いのは私も同じ。きっと私たち以外も同じ」
「そうなの?」
「戦いが怖くない人はいないわ。でも怖くても大切なものがあるから戦うの。シェリィもそうでしょう?」
イリスはシェリィに笑いかけた。
その笑みにこたえるようにシェリィは小さくうなずく。
その後はたわいのない会話をした後にいつの間にか二人は眠ってしまった。
ジャンとフィリアは部屋から星空を見ていた。
「明日ついに始まるのね…」
「ああ」
沈黙が流れる。
最愛の人が戦場に向かうことに不安があった。
何もできない自分が恨めしかった。
せめて何か気の利いたことを言わなければ、そう思っても彼女の口からは上手く言葉が出ない。
「我が最愛の婚約者フィリア・ノートリス伯爵令嬢」
「ジャン?」
ジャンは引き抜いた神器の魔剣を胸の前に掲げた。
「私は明日の戦いで生き残り、生涯貴女を守り抜くことを剣に誓う。だから、どうか、俺が帰ってくる場所であってほしい」
「!!?」
ジャンの言葉にフィリアの目から涙があふれる。
「…私の最愛の婚約者ジャン・ブルース子爵令息に誓います。私は貴方の帰るべき場所になります。何があっても待ち続けるから…絶対に帰ってきて…」
強く抱きしめあう二人。
帰る場所があるから自分は戦える。
10
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【完結】竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜
せりもも
恋愛
転生したのは、web小説の世界だった。物語が始まる前の時間、隣国の竜王へ嫁ぐ薄幸の王女、デジレに。
結婚相手である竜王ワッツァは、冷酷非道で人間を蔑む恐ろしい竜人だ。彼はデジレを、半竜(半分竜で半分人間)である息子の養育係としかみていない。けれどその息子バートラフこそ、前世の「わたし」の最オシだった。
この世界のバートラフはまだ5歳。懸命に悪ガキぶっているけど、なんてかわいいの!? 小説のバートラフは、闇落ちして仲間の騎士たちに殺されてしまうけど、そんな未来は、絶対に許さないんだから!
幼いバートラフに対する、愛情いっぱいの子育ての日々が始まる。やがて彼の成竜への通過儀礼を経て、父の竜王は、デジレに対して執着を見せ始める。
ところが、竜と人間の戦争が始まってしまう。おとなになったバートラフは人間側につき、聖女の騎士団に入った。彼は、父の竜王に刃を向けられるのか? そして、転生者デジレに与えられたスキル「プロットを破断する者」を、彼女はどう発動させるのか。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる