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終章・魔王大戦
76 大戦前夜2
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アレクシス、レイヴン、アルマリアはレイヴンの家で酒を飲み交わしていた。
「明日は大事な戦いなのに飲んだくれるとは~ッボク達だめな大人だね~」
茶化すようにいうレイヴンだが、しっかりと酔い覚ましの解毒剤を用意している。
「明日に残らなければ問題ないだろう…それに友と酒を飲む時間も大切だよ。明日の戦いと同じ位にな」
ワインを飲みながら話すアレクシスは少しいつもより口数が多い。
彼もまた聖霊力により酔いを醒ますことが出来るので、多少飲み過ぎたとしても問題は無かった。
「戦前の酒と勝利後の酒はどちらも格別だ。楽しまなければ損であろう?」
どでかいグラスに入った酒を一気に飲み干しながらアルマリアが言う。
彼女はいくら飲んでも明日に残さない酒豪である。
「可愛い~弟子たちはもう寝ちゃったかな~」
「ルーベルト王子以外はちゃんと休眠は取るだろう」
「なんだかんだであれらは皆真面目だからな。ルーベルト以外は」
たわいない会話が続く。
いくつもの死線を乗り越えてきた彼らはこれが最善の過ごし方だと知っている。
明日勝つと信じて、今日を変わりなく過ごす。
明日の夜も変わりない夜を過ごせると信じて。
少し時は戻り二日前のスカイピオ王国。
その夜スカイピオ王国では魔王大戦のための士気を上げるための祭りが開かれていた。
国全体で行われており、その楽しい雰囲気はもうじき魔王との闘いが始まるということを一時的に忘れさせてくれた。
そんななかバルコニーから国民に向けて国王から挨拶が行われる。
「愛すべき民たちよ!今日は楽しんでいるか?」
王の声を聴きに来た民たちはその問いに明るく答える。
皆が皆、笑顔を浮かべ幸せそうにしている。
魔王の討伐に失敗すればこれらはすべて失われてしまう。
当たり前にあるものが尊いものであることをスカイピオ国王は実感していた。
「それでは、次に大戦において最前線に出ることになっている我が息子ルーベルトの決意表明を聞いてほしい」
王と入れ替わるようにルーベルトがバルコニーに現れる。
事前に渡してあったものを読むだけなので特に問題は無いはずだった。
「親愛なる民たちよ!聞いてくれ!俺は二日ぐらい後に魔王と戦うことになる!」
堂々とした王子らしい雰囲気とよく通る声に皆の注目が集まる。
「だが、よく考えれば魔王というのは我々の負の感情の塊…つまりウンコのようなものではないか!」
国王は頭を抱えた。事前に渡してあったメモをまるっきり無視した挙句王族が使ってはならない下品な言葉を使っている。
聞いている民たちも戸惑いが隠せないが聞くことそのものはやめていない。
「本来。自分の出し物は自分で処理するのは普通だ。だが魔王は処理できないくらいでかくて厄介だ。だから俺は思ったのだ」
腕を組んだポーズで迷いなくルーベルトは続ける。
「元から自分で拭けるぐらいに抑えれば良いのでないかとな!だが、俺はバカだから思いつかぬ!ゆえに皆に考えてもらいたい。どうすれば皆が自分でケツを拭けるぐらいに抑えられるのかを!」
ふとルーベルトの表情が悲しさを耐えるようなものに変わった。
「そうすればきっと失うことは無くなるから」
言うだけ言って引っ込んでしまったルーベルト。
だが、最後の言葉で王も民も彼の真意に気が付いた。
明日の戦いで犠牲者がでるのは避けられない。
だからせめて次が無いように、魔王との闘いで大切な人を失うことが無いように。
「…このうつけめ…戦いが始まる前に戦いの後のことを話おって…まったく…」
それはルーベルトが明日の勝利を確信している証拠でもあった。
彼の中には敗北の言葉は存在しない。
そして時は再び決戦前夜。
白い空間で皆の様子を見ていたブレイ、クォーツ、コンゴウの勇者組。
彼らは神の眷属となったことで直接的な干渉が出来なくなったためにここから皆を見ることしかできない。
「見ているだけというのはこんなに歯がゆいものだったなんてね」
「前の戦いでは私たちが待たせる側だったものね」
「世界の理…理解はしているが面倒この上ない」
仕方ないとは言え現状何もできないことにくやしさのある3人ではあるが、それは自分たちが選んだ結果だということも理解している。
「でもぼくたちが彼らにできるだけのことはできたはずだ。信じよう…それにディートたちなら僕たちとは違う何かを見つけてくれそうな気がするんだ」
「何かって?」
「それはぼくにもよく分からない。ただの感だからね。でもぼくの感はよく当たるでしょう?」
少しいたずらっぽく笑うブレイにそういえばそうだったなとクォーツとコンゴウも笑う。
かつてはここにジュディもいた。
ブレイ達は魔王を倒せてもその後に大事なものを取りこぼしてしまった。
だからこそ今代の勇者となろうとしているディートたちには自分たちがつかめなかったハッピーエンドをつかんでほしいと彼らは願っている。
明日の勝利とその後の幸福が訪れることを。
「明日は大事な戦いなのに飲んだくれるとは~ッボク達だめな大人だね~」
茶化すようにいうレイヴンだが、しっかりと酔い覚ましの解毒剤を用意している。
「明日に残らなければ問題ないだろう…それに友と酒を飲む時間も大切だよ。明日の戦いと同じ位にな」
ワインを飲みながら話すアレクシスは少しいつもより口数が多い。
彼もまた聖霊力により酔いを醒ますことが出来るので、多少飲み過ぎたとしても問題は無かった。
「戦前の酒と勝利後の酒はどちらも格別だ。楽しまなければ損であろう?」
どでかいグラスに入った酒を一気に飲み干しながらアルマリアが言う。
彼女はいくら飲んでも明日に残さない酒豪である。
「可愛い~弟子たちはもう寝ちゃったかな~」
「ルーベルト王子以外はちゃんと休眠は取るだろう」
「なんだかんだであれらは皆真面目だからな。ルーベルト以外は」
たわいない会話が続く。
いくつもの死線を乗り越えてきた彼らはこれが最善の過ごし方だと知っている。
明日勝つと信じて、今日を変わりなく過ごす。
明日の夜も変わりない夜を過ごせると信じて。
少し時は戻り二日前のスカイピオ王国。
その夜スカイピオ王国では魔王大戦のための士気を上げるための祭りが開かれていた。
国全体で行われており、その楽しい雰囲気はもうじき魔王との闘いが始まるということを一時的に忘れさせてくれた。
そんななかバルコニーから国民に向けて国王から挨拶が行われる。
「愛すべき民たちよ!今日は楽しんでいるか?」
王の声を聴きに来た民たちはその問いに明るく答える。
皆が皆、笑顔を浮かべ幸せそうにしている。
魔王の討伐に失敗すればこれらはすべて失われてしまう。
当たり前にあるものが尊いものであることをスカイピオ国王は実感していた。
「それでは、次に大戦において最前線に出ることになっている我が息子ルーベルトの決意表明を聞いてほしい」
王と入れ替わるようにルーベルトがバルコニーに現れる。
事前に渡してあったものを読むだけなので特に問題は無いはずだった。
「親愛なる民たちよ!聞いてくれ!俺は二日ぐらい後に魔王と戦うことになる!」
堂々とした王子らしい雰囲気とよく通る声に皆の注目が集まる。
「だが、よく考えれば魔王というのは我々の負の感情の塊…つまりウンコのようなものではないか!」
国王は頭を抱えた。事前に渡してあったメモをまるっきり無視した挙句王族が使ってはならない下品な言葉を使っている。
聞いている民たちも戸惑いが隠せないが聞くことそのものはやめていない。
「本来。自分の出し物は自分で処理するのは普通だ。だが魔王は処理できないくらいでかくて厄介だ。だから俺は思ったのだ」
腕を組んだポーズで迷いなくルーベルトは続ける。
「元から自分で拭けるぐらいに抑えれば良いのでないかとな!だが、俺はバカだから思いつかぬ!ゆえに皆に考えてもらいたい。どうすれば皆が自分でケツを拭けるぐらいに抑えられるのかを!」
ふとルーベルトの表情が悲しさを耐えるようなものに変わった。
「そうすればきっと失うことは無くなるから」
言うだけ言って引っ込んでしまったルーベルト。
だが、最後の言葉で王も民も彼の真意に気が付いた。
明日の戦いで犠牲者がでるのは避けられない。
だからせめて次が無いように、魔王との闘いで大切な人を失うことが無いように。
「…このうつけめ…戦いが始まる前に戦いの後のことを話おって…まったく…」
それはルーベルトが明日の勝利を確信している証拠でもあった。
彼の中には敗北の言葉は存在しない。
そして時は再び決戦前夜。
白い空間で皆の様子を見ていたブレイ、クォーツ、コンゴウの勇者組。
彼らは神の眷属となったことで直接的な干渉が出来なくなったためにここから皆を見ることしかできない。
「見ているだけというのはこんなに歯がゆいものだったなんてね」
「前の戦いでは私たちが待たせる側だったものね」
「世界の理…理解はしているが面倒この上ない」
仕方ないとは言え現状何もできないことにくやしさのある3人ではあるが、それは自分たちが選んだ結果だということも理解している。
「でもぼくたちが彼らにできるだけのことはできたはずだ。信じよう…それにディートたちなら僕たちとは違う何かを見つけてくれそうな気がするんだ」
「何かって?」
「それはぼくにもよく分からない。ただの感だからね。でもぼくの感はよく当たるでしょう?」
少しいたずらっぽく笑うブレイにそういえばそうだったなとクォーツとコンゴウも笑う。
かつてはここにジュディもいた。
ブレイ達は魔王を倒せてもその後に大事なものを取りこぼしてしまった。
だからこそ今代の勇者となろうとしているディートたちには自分たちがつかめなかったハッピーエンドをつかんでほしいと彼らは願っている。
明日の勝利とその後の幸福が訪れることを。
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