花盛りの頃 俺の頂

光輔

文字の大きさ
1 / 4

重なる想い

しおりを挟む
開花の結論。

俺は体裁を守りつつ、

僕は真実に従う。

ひとまず棲み分けすることにした。

どちらも自分だ。

まだ一体化するのは無理だった。

精神性の俺と、

本能としての僕は、

相容れられる程の、

成熟さは無かったという事だろうか。

俺は、

公立の共学進学校を蹴り、

難関私立男子校へ入学した。

何故なら、

ランク的にも高く見栄えが良かった事、

同じ学校から俺以外合格しなかった事、

受験日に感じた校舎に漂う青い香り、

花盛りの短い三年間、

体裁と真実の同化を企んだからだ。

相変わらずの白肌に、

どちらかというと華奢な俺。

でも、

既に憧れは変わっていた。

見た目のなりたい憧れに、

対象を重ねていたのは過去の事。

俺自身が、

ありのままで魅力的になる事、

俺も躊躇う事なく素直に求める事、

求めた対象から求められる事、

俺の花を咲かせる準備は整った。

体育系の部活を続けるのは辞め、

ここでは文化系に入った。

音楽系だった。

部活紹介の時、

30人ほどのグループが、

曲を奏でていた。

曲なんて耳に入らなかった。

俺の視線の先には、

俺と血縁があると見紛うばかりのに、

同一性を感じる人がいたからだ。

『決めた』

過酷な部活だった。

楽器など触ったこともない。

俺は楽譜は辛うじて読める。

同期は経験者ばかり。

始業前の朝練、

放課後はどの部活よりも最後、

休日も練習があった。

それでもよかった。

タクミくんが居たから。

タクミくんは一個上。

担当楽器の先輩。

俺より身長は高いけど、

色白のメガネ男子。

近くで見ると、

俺より切長な目、

厚い唇だった。

でも全体的な雰囲気が似ているものを感じた。

長男だった俺は、

まるで兄のように、

叱り、

庇い、

成長させてくれる、

タクミくんを先輩として尊敬した。

朝練の時、

チューニングもままならない俺。

同期経験者は白い目で見る。

専門用語も飛び交い、

理解が深まらない。

それでも、

俺は伸びしろを見せた。

タクミくんの指導だった。

朝練も、

居残りも、

嫌な顔一つせず一緒。

手取り足取り。

聞けばタクミくんも、

初心者から始めて、

同じ境遇。

外見も身長以外は、

似ていたから、

部内ではホントの兄弟のように扱われた。

半年後の3年生引退の演奏会、

ど素人からスタートした俺が、

足を引っ張らずに、

パートをこなせたのは、

タクミくんのおかげだった。

俺は嬉しかった。

兄貴が出来たようだった。

そして俺は兄貴に期待していた。

初めて兄貴を見たあの日から、

俺は密かに求めていたから。

三年が引退した冬休み。

集中合宿のことだった。

同じパートだった俺らは、

同部屋になった。

夏の合宿もあったが、

2.3年だけなので、

俺にとっては初めての合宿だ。

いつも通りクタクタになるまで行われる練習が終わり、

部屋に戻ると、

タクミくんは着替え始めていた。

まぁ、

同部屋だから普通の事だ。

真面目なタクミくんとは、

プライベートな話はしたことは少なかった。

話すことは部活の事ばかり。

抵抗なく着替えするタクミくんなんて初めて見た時、

無意識に俺の脈が早くなる。

汗で濡れたTシャツを脱ぐと、

色白な肌に、

無駄のない筋肉、

腕に浮き出た血管、

腰のくびれ、

適度な腹筋、

俺を生き写ししているようでありながら、

そこに俺には無い滲み出る先輩としての風格もあり、

目を奪われた。

「先輩?いい身体すね!全然気づかなかったす!」

俺から口火を切ってみた。

「そうか?まあ、お前もそっくりだよな」

自分の胸から腹を撫でる。

俺はまだこの時脱いでいない。

「僕、見せたことありましたっけ?」

先輩の前では、

僕になる。

「ないよ。見たことはあるけどな」

どうやら、

俺がプール授業の時に、

偶然見かけたらしい。

「もしかして、あの競パン姿みられちゃいました?」

「うん」

タクミくんは一瞬口元が緩んだ。

1年生は必ずプール授業が必須で、

まして指定競パンだったから、

恥ずかしさの極みだ。

「恥ずかしいすね」

「俺に似てて恥ずかしい?」

「いや、周りからは似てるから弟みたいって言われちゃって…迷惑かけてすみません」

「俺は逆にこんな弟なら歓迎だな」

俺は一気にタクミくんの懐に飛び込もうと、

「やった!おにいちゃん!笑」

「そこまでは許してないぞ」

先輩からのお叱りだった。

生き写しは言い過ぎだ。

でも確かに似ていた。

きめ細やかな肌質や、

体毛の量、

筋肉のつき方、

もちろん、

まだ未知の部位は、

想像だけだったが。

タクミくんは先に風呂へ行った。

先輩が先で、

後輩はもちろん後。

見送って、

部屋に残された俺。

タクミくんが不用意に脱いだTシャツがある。

しきたりみたいな感じで、

俺はタクミくんのTシャツや身の回りのものを整理した。

ふと衝動に駆られ、

俺はタクミくんのTシャツの匂いを嗅いだ。

これといった特徴もなく、

いつものタクミくんの匂い。

いつも俺の隣で、

教えてくれる時の匂い。

学校ではあまり意識していなかったけど。

俺は自分のベッドに横になり、

タクミくんのTシャツを嗅ぎながら、

俺は溢れる盛り、

本能に従った。

タクミくんが戻り、

何事もなかったように俺は風呂へ行く。

長風呂が嫌いな俺は、

さっさと上がり部屋へ戻ると、

とんでもない光景が広がる。

タクミくんも俺が脱いだTシャツを手に取っている、

そして嗅いでいる…

まさか俺と同じ事をタクミくんも…?

「先輩…それ俺の…」

思わず声をかけてしまう俺。

動揺する素振りも見せず、

「お前の匂いプンプン!笑」

クールなフリしてただの変態か?

「汗臭いすよ!俺のシャツ」

「お前の匂いだろ?俺は好きさ」

「…」

好きって?

俺の事?匂い?

言葉が繋げず、間が出来た。

「悪ぃ!もうやめるわ」

迷った。

匂いが好きなだけ?

普通後輩のシャツ嗅ぐ?

俺は、

賭けに出た。

「じゃあ先輩のシャツも嗅がせて!」

「ダメー」

「何でですか?」

俺は拗ねたように口を尖らせた。

「こっちおいで」

2つ並んだタクミくんの方のベッド。

不貞腐れた素振りを見せながら、

行く俺。

「来ましたよー」

さらに口を尖らせてみた。

「いいよ」

いつもとは違う一段低めの声で、

そう言うと、

タクミくんはTシャツをめくり上げ、

胸をはだけ出す。

「そのかわり直だよ」

来た!先輩命令だ!

しっかりタクミくんのTシャツの中に頭を突っ込んで、

嗅いだ。


「いい匂いすよ。ボディソープの。でも先輩の匂いもしますね」

「えっ!俺体臭する?」

「臭くないすよ、先輩のオトナな匂い!笑」

「お前のもいい匂いがどうか、確認するぜ」

Tシャツと短パンを脱がされ、

ボクブリ一丁になった俺。

「お前の匂いしないなー。つまんないなー」

俺は迫った。

「先輩、僕と似てる言われるじゃないすか。でも全部じゃないすよね?」

「そりゃそうだろ」

「僕、全部確認します!脱いで下さい!先輩もパンツ一丁!」

「いいよー。でもびっくりするなよ」

自慢気にドヤ顔する。

タクミくんのパンツ一丁の膨らみは、

今にも弾けんばかりだ。

決して反応してるわけじゃないのに。

「あっ…確認しました…すみません」

「だーめ!触って確認!匂いもな!」

「はい」

膨らみの張りは僕より一回り大。

風呂上がりの匂いの中に、

独特なタクミくんの匂いがある。

「わかったかー?弟!」

頭をポンと叩かれた。

それからは他愛もない会話。

就寝時間を迎える。

「おやすみなさい」

「なぁ、こっち来いよ」

「先輩怖がりですか?笑」

「違うよ!寒いから温めてくれよ」

「はいー、来ましたよ」

タクミくんのベッドに入り、

向き合うと、

じっと俺の目を見続けるタクミくん。

突然、

肩に手が回り、

足も絡んだ。

「いいか?」

またいつもより一段低い声で囁く。

「うん」

そう答えるしかない。

今思えばタクミくんも初めてだったのだろう。

わずかに手が震え、

汗ばんでいた。

タクミくんのベッドの中で、

俺は全てを晒した。

上から順番に、

これでもかとタクミくんから、

ぎごちなく優しい確認が入る。

俺は体内にある感度がじわじわ上がる感覚を初めて知った。

一つ一つの確認に、

感度が増していく感覚。

「可愛いじゃん。ここは俺とは、全然似てない!笑」

ピクピクが止まらない俺を後目に、

普段は見せる事のない爽やかな笑みを浮かべるタクミくん。

俺も欲しくなった。

「先輩…僕もしたい…」

耳元でそう囁いた。

体勢が入れ替わり、

今度は俺がタクミくんを隅々まで確認する。

本命に辿り着いた時、

俺の鼓動は跳ね上がった。

色、形、張り。

いつものタクミくんとの、

ギャップが半端ない。

俺はたまらず、

持ち上げたり、

頬擦りしたり、

先端を重視したり、

匂いを堪能したり。

タクミくんも再び攻める。

俺はメーターを振り切り、

ひたすらに本能に従った。

終着を迎えたのが、

2人同時だったのはこれが初めてだった。

互いの目を見て、

息遣いと、

鼓動を感じながら。

俺はタクミくんの胸の中で、

余韻に浸り続けた。

俺の狙いは間違ってなかった。

単純な興味、

単純な処理、

そんなんじゃない。

わすか数十分の中で、

愛し愛された上での出来事。

それが愛とは程遠いものだったとしても、

僕に新しい世界を見させてくれた。

やっと苦しみから解放され、

追い求めた理想の瞬間が、

そこにあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

処理中です...