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3章:制裁解除任務
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4人全員が厨房に行ってしまったので、私はソファーに腰かけた。
騎士や歌姫をやってても料理は出来るらしい。上流階級の出身じゃないのかな。
「ねぇ、シロ。ナギたちの…シークレット開示に必要なアイテムって、何かわかるんだっけ?」
「今は分からないよ。鑑定する?」
「する」
「随分急ぐね」
それが意外だと言いそうな声音だ。
確かに、これが依頼じゃなかったら急がない。成長に成長を重ねてしまった案内人はもう私の性分を理解しているようで、遠慮がなかった。
「寄付ポイントで召喚する人は癖があるみたいだけど、あの2人も思ってたより酷かったから。問題を解決しないといけないんだろうなぁと思って」
「人は多かれ少なかれ問題を抱えているそうだよ。彼らだけが特別なわけじゃないんだ」
「特別じゃないから問題なんだ」
「どういう意味?」
「特別な存在なら手助けする必要は無いってことだよ。彼らは彼らだけで問題を解決できない。だから別の問題を引き起こす。それが積み重なって、この星を滅ぼすんだろう」
「滅びない為に、キミ達召喚術師が居るんだよ」
それは、違うだろう。
召喚術師が召喚しなければ、霊体が肉体を得て動くことはないかもしれない。
肉体を得なくても、『英雄』として遺恨ごと復活した彼らが、何の憂いもなく動くだろうか?
「そうだね。だから、早くシークレットを開示して彼らを助けてあげよう。鑑定はどうやってやればいい?」
「カードか実体化した本人に向けて『鑑定』すればいいよ。スキル発動には呪文も必要ないから」
「じゃあ…鑑定」
厨房の扉は閉まっていたから、その方向に向けて鑑定してみる。
こういう発動に制限のない術は、自分が思い浮かべるイメージが大事だと聞いたことがあった。幻想を現実に発現させる。そんな感覚でやると良いと学んだ覚えがある。
ただ、私は、色々想像するのがあまり得意じゃない。
昔、強くイメージしろと言われて具現化したモノがあまりに靄すぎて、怒られたことがあったっけ。
まぁ、鑑定だけなら…案内人がよく出す画面をイメージすればいいだろうから、大丈夫かな。
「鑑定成功したみたいだね」
扉や壁越しに浮かび上がった画面が4つ。
名前、レベル、属性など、カードに書かれている内容と一緒に、いろいろ細かく書かれているようだ。…細かすぎて読めないけど。
「…えーと…『ナギィリア』…あぁ、本名登録じゃないんだ、カード名って」
ナギと歌姫は別々の画面が出ている。壁際まで近付いて確認すると、歌姫のほうには『フィネット』と書かれていた。
「ん~…どれ、だ…?」
画面いっぱいに書かれた文字に触れると、文字が動く。画面の下の方に書かれた文章の続きを読みたいなぁと思っていたら、私の指に応じて次の文章群が出てきた。
「『ファム・ループ:地下帝国を支えていた地核で、薔薇姫達が守り続けた根幹のひとつ』。『魔力水晶2型:設置型巨大魔力水晶の2型。全てを満たさねば動かない』。『7色の夜薔薇:夜にだけ咲く薔薇。月の満ち欠けに合わせて7色に色を変える』…開放アイテムって1つじゃないんだ」
「レアカードだと2~3種類だね。ウルトラレアは5種類以上必要だよ」
「面倒だなぁ…。とりあえず、シロが覚えておいて。この星のどこかにはあるんだろうし」
既に消滅したものを要求されることは無いだろう。だったらどこかには存在するはずだ。
もし存在しない物を集めろと言われてるなら、システムにケンカを売る必要があると思う。
「…召喚術師様。何かありましたか?」
立ち上がって鑑定画面を消すと同時に厨房の扉が開いて、歌姫が左半分だけ姿を見せた。手には食材らしきものを抱えている。
「うん。あなたもそうだけど、私もこの衣装が邪魔だなぁと思って」
「そうですね…よくお似合いだと思いますよ」
「似合うから可動域が少なくていいって話じゃないと思うんだ」
「僕もナギも裁縫は出来ませんが、町には商店もありますのでそちらでご購入されては?」
「そうするよ」
話が終わったところで、歌姫は厨房の中から背中を押されて室内に入った。後からドーマンが鍋と籠を持って出てきて、前より低くなった机の上に並べていく。ドーマンは大柄だから、応接セットの間を行き来するのは大変そうだ。
「…日が変わったら、ちょっと拡大したそうが良さそうだね」
応接セットは寛ぎ用としてそのまま置いておいて、普段使える食堂セットも必要だろう。
家具が増えれば室内の空き空間が減って狭く感じるようになるし、1階部分を拡張するか、階数を増やすか考えた方がいいかも。
「あれ。でも拠点って、土台あるんじゃなかったっけ」
「そうですね。それが一般的だと思います」
食事用の匙や食器を並べていたティセルも頷く。
「シロ。拠点の土台作ってそこに物を建てるほうが大変?」
「集落を建てるなら、防衛装備の維持が難しくなるよ。広範囲になるほど効果を薄く引き伸ばすことになるから弱くなるし、維持費もかかるから」
「それはそうだよね。じゃあ…この家を大きくするほうがラクか」
その内、10階建てとかのビルになるかもなぁと思って想像していたら、いつの間にか食事の用意が済んだらしい。
呼ばれて私は1人用のソファーに腰かけた。
目の前に並べられた食事は、ちょっと豪勢になっている。
白いスープには具材が色々入っているようだったし、隣には丸いパンと緑色の実が置かれていた。
「ナギさんとドーマンさんが、森で鹿を獲って来たんですよ。この人数ならたっぷり数日分ありますが、加工と保管の為の場所が無いのが悩みですね…。氷室には胴の部分だけ入れてありますが」
「丸焼きにしたら?」
「場所が悪いな。外で火起こしなんかしたら一瞬で森が燃えるぞ」
「じゃあ、ご飯食べたら拠点を移動させようか」
」
私は味音痴らしいので、何の肉を食べても種類の判別ができない。
ティセルは鹿肉と言ってるけど、私が知ってる鹿とは違う生き物なんだろうなぁ。食べられるなら何でもいいんだけど。
「…あ、そうだ。ミッション受けようと思ってたんだ」
果物含めて食べ終わってから、私は天井を見上げる。
片付けをしようと動き始めた人たちも動きを止めて、私を見た。
「私、ペナルティがあるらしいんだよね。それを解除するためのミッションがあるんだけど…」
「召喚術師になったばかりで、か?」
「何故かはわからないんだけど、先代がペナルティ持ってたみたいだから、それを引き継いだのかもね」
「先代?」
「代々召喚術師の遺産を引き継ぐ家はありますね。闇薔薇帝国の召喚術師は家門に分かれていました」
「…虹色ってヤツは、油断ならねぇな」
それぞれ感想はあるだろうけど、ペナルティを持ったままの理由はわからないんだからしょうがない。
「シロ。ペナルティ無くすミッション出してよ」
「『ペナルティ解除ミッション』だね。3種類あるよ」
机の上に出てきた紙は2枚。それぞれに別の内容の文章が書かれていた。
【制裁解除任務:神殿奉納】
必要ランク:1以上
必要レベル:1以上
概要:眠る神を祀る神殿に出向き、神を称える行いをする。
内容:以下の中から2種類以上の行いをする。
・眠る神の信者を増やす(貢献1以上)
・眠る神に力を奉納する(貢献2以上)
・眠る神の祭祀を執り行う(貢献1)
・眠る神に仕える者達を助ける(貢献1以上)
成功条件:眠る神への貢献度10ポイントを取得する。
【制裁解除任務:神碑巡回】
必要ランク:3以上
必要レベル:10以上
概要:眠る神の神碑を巡り、復興させる。
内容:神殿さえ朽ちた眠る神々の神碑に出向き、建て直す。または、神碑を守る。
神碑1箇所につき貢献2~5ポイントを取得。
成功条件:眠る神への貢献度10ポイントを取得する。
【制裁解除任務:龍駆除】
必要ランク:1以上
必要レベル:1以上
概要:各地に巣食う龍を討伐する。
内容:各地に巣食う属性龍を討伐する。討伐方法は問わない。
下位龍:0ポイント
中位龍:2ポイント
上位龍:5ポイント
最上位龍:20ポイント
成功条件:5ポイントを取得する。6ポイント以上を取得した場合、別途報酬を与える。
「…これは…」
絶句したのはティセルだ。その向かい側で難しい顔をしていたドーマンが、私を見る。
「どれも一筋縄じゃ行かねぇぞ。この人数で龍討伐はまず無理だ。下位龍でさえ傭兵団が請け負うような…最低でも20人は必要だと言われてる。上位龍以上は国規模の問題になってくるしな」
「龍討伐は元々やるつもりないよ」
「そいつは良かった。けどな。神殿もなかなか厄介だ。有名な召喚術師ならヤツらも膝を折るかもしれねぇが、新参者じゃあロクな対応しねぇぞ」
「シロ。『眠る神』は何人いるの?」
天井に向けて尋ねると、少し間があった。
「…ボクには分からないよ。ヴィータが知っている神しか分からないんだ」
「じゃあ、13神の神殿をとりあえず廻ってみればいいか」
「世界のあちこちに散らばる神殿全部に行くつもりですか!?何年かかるか…」
「ある程度貢献したら良いみたいだから、1箇所だけでいいんじゃない?でも、神殿自体がもう無い神もいるみたいだし、近くにあるといいけどね」
「ここは…どの辺りなのでしょうか」
私達の話し合いの間、ずっと何か考えていたらしいナギが、尋ねる。何か知っているのかな?
「正確な位置は分かりませんが、『風岩山脈』のどこかのようです」
「それは…大陸のどの辺りの位置なのでしょうか」
「東方ですね。ダルゥザは西方にあったと聞いていますが、合っていますか?」
「はい。帝国があった頃の話ですので…今も存在するかは不明なのですが、『花土桜の高楼』に『薔薇乙女の神殿』がありました。薔薇乙女を創り出したとされる神が祀られていたはずです。神は眠りについて久しいと神殿長が言っていた記憶があります」
「それはどこなんだ?西方か?」
「はい。地下帝国の領土内にありました」
「地下帝国があった正確な場所は知らねぇぞ。書物にも残ってないんじゃないか?」
「ナギさんが分かるとしても、東方から西方まで行くのはかなり距離がありますね…」
神殿についてまったく詳しくない人間しかそろっていない。
彼らは「うーん」と唸っている。
「この辺って、3箇所あったよね。神殿。何て名前だったか覚えてる?」
「…食料との交換の話が出た時でしたね。名前は…憶えていませんが…龍の神殿もあったような気がします」
「シロは名前わかる?」
「『風龍神殿』『風花の滝神殿』『レンデル神殿』だね。どれも眠る神の神殿では無いよ」
龍神アケイドトルアは、風龍に指示を出して動かしていた。
風龍と風龍神殿は間違いなく関係があるだろうけど、風龍神殿がアケイドトルアと関係があるかはわからない。
でも、アケイドトルアも『眠る神』の一人になったんだろうし、彼女を祀る神殿があればそこに行けばいい気もする。
「…風龍神殿に行ってみようか」
「それは…」
提案したが、誰も頷かなかった。
「龍神殿は…龍を称える神殿です。本来なら龍を抑える役目もあるはずなので、神殿が機能していれば龍も暴れないはずなのですが…」
「ん~…」
ルーリアの時は、ペナルティとして風龍が拠点に攻撃を仕掛けてきた。本人の意思でやったというより、『システムとしてやらされた』という感じがある。召喚される英雄たちより召喚術師を優先するシステムと同じだ。召喚術師たちの選択によって、あらゆるものの動きが変化する。
ペナルティ解除ミッションも、真逆のミッションが提示されているように感じた。
眠る神への奉仕か。
龍を消滅させるか。
龍神アケイドトルアは風龍を使っていたが、一定以上の傷を負わせないよう私を止めに来た。『システムの規則を破って』来たのではないかと今は思う。だから、彼女は思うより早くペナルティを受けて眠りについた。
龍神の名を持つくらいだから、龍が消滅すれば彼女の力は弱まるはずだ。そして、眠っている彼女にはそれを阻止する術はない。
アケイドトルアは契約主の代理ではあるけれど、私は彼女としか接していない。
彼女も、契約主の地神ナルケイアも、私にとっては同等の存在だと思う。2神を眠りから目覚めさせることが目的ではない契約だけど、それは目指してもいいんじゃないかな。
「じゃあ、みんなは『地神ナルケイア』って神は知ってる?」
ナルケイアが眠りについてどれくらい経つのかはわからない。祀る神殿さえ無くなっているほど昔からだと、神碑を探すところから始める必要がありそうだから、結構大変だ。
そう思っていたら、4人はそれぞれに頷いた。
「創造神様ですね。この星をお造りになった御方です」
「帝国では『星神様』とお呼び致しておりました」
「地母神の呼び名もあるな。その年の畑の実りにも関係あるから、毎年3回、大陸のどこでも奉納祭があるぞ」
「尊い御方の為に捧げる歌が、現存するもので45帖。かつては72帖あったそうです」
なるほど。星神か。
4人の話を聞いて、私は納得する。
ひとつの星に、1人の星神。彼らは創造神でもあるし星を司る神でもある。ただ、世界の構造上、ひとつの星に複数の神がいるのが一般的で、創造神だからって一番エライわけじゃないし、とても強いというわけでもない。
彼らが共通して他の神々と違うのは、彼らだけが、その星と共に生まれて共に死ぬ、ということだ。
だから、星神の代替わりは起こらない。星が爆発すれば星神も消滅するし、星神が死ねば星も消え去る。
そんな星神であるナルケイアがペナルティを受けて眠っているというのは…。
結構、良くない状況だ。
多分、結構悪い状況だ。
「ん~…荷が重いな」
「召喚術師が祭りを取り仕切ることは無いと思いますが…」
「尊い御方の歌は、小さな子供でも歌える簡単な曲もありますから」
「フィネみたいに簡単に歌を覚える人は、そんなにいないんだよ」
「俺も3つくらいしか覚えてないぞ。召喚術師殿の悩みは、そんな事じゃねぇんだろ?」
ドーマンに訊かれて、私は首を傾げた。
寝ててもさすがは星神。その存在の大きさは絶大だ。多くの人たちに慕われる存在なら、すぐに何とかしないといけない、ということは無いんだろう。
星にとっては龍神より星神を優先して起こしてやるほうが何倍もいいに決まってるんだけど、そっちのほうが大変だろうし…ペナルティ解除ミッションに龍の撲滅があったのも気になる。
「地神ナルケイアの神殿って、どの辺りにあるんだろう」
「各地にありますが、大本山は大陸の中心部にあります」
「そいつは創造神神殿じゃねぇか?地神のほうの総本山ならたしか西だぞ」
「ん?2箇所に分かれてるの?」
「『ナルケイア神』はあまりに大きな存在ですので…御力に合わせてそれぞれ別々に設けているとか…」
「南方の総本山は島にあるしなぁ」
「じゃあ…龍神は?龍神の神殿ってある?」
ナルケイアのほうは、どの神殿が『眠りの神の神殿』として合っているのか、巡るのが大変な気がしてきた。
だから、やっぱり追うならアケイドトルアかな。
そう思って、尋ねてみたけれど。
「…龍神…?」
4人は何とも言えない表情になって、私を見た。
騎士や歌姫をやってても料理は出来るらしい。上流階級の出身じゃないのかな。
「ねぇ、シロ。ナギたちの…シークレット開示に必要なアイテムって、何かわかるんだっけ?」
「今は分からないよ。鑑定する?」
「する」
「随分急ぐね」
それが意外だと言いそうな声音だ。
確かに、これが依頼じゃなかったら急がない。成長に成長を重ねてしまった案内人はもう私の性分を理解しているようで、遠慮がなかった。
「寄付ポイントで召喚する人は癖があるみたいだけど、あの2人も思ってたより酷かったから。問題を解決しないといけないんだろうなぁと思って」
「人は多かれ少なかれ問題を抱えているそうだよ。彼らだけが特別なわけじゃないんだ」
「特別じゃないから問題なんだ」
「どういう意味?」
「特別な存在なら手助けする必要は無いってことだよ。彼らは彼らだけで問題を解決できない。だから別の問題を引き起こす。それが積み重なって、この星を滅ぼすんだろう」
「滅びない為に、キミ達召喚術師が居るんだよ」
それは、違うだろう。
召喚術師が召喚しなければ、霊体が肉体を得て動くことはないかもしれない。
肉体を得なくても、『英雄』として遺恨ごと復活した彼らが、何の憂いもなく動くだろうか?
「そうだね。だから、早くシークレットを開示して彼らを助けてあげよう。鑑定はどうやってやればいい?」
「カードか実体化した本人に向けて『鑑定』すればいいよ。スキル発動には呪文も必要ないから」
「じゃあ…鑑定」
厨房の扉は閉まっていたから、その方向に向けて鑑定してみる。
こういう発動に制限のない術は、自分が思い浮かべるイメージが大事だと聞いたことがあった。幻想を現実に発現させる。そんな感覚でやると良いと学んだ覚えがある。
ただ、私は、色々想像するのがあまり得意じゃない。
昔、強くイメージしろと言われて具現化したモノがあまりに靄すぎて、怒られたことがあったっけ。
まぁ、鑑定だけなら…案内人がよく出す画面をイメージすればいいだろうから、大丈夫かな。
「鑑定成功したみたいだね」
扉や壁越しに浮かび上がった画面が4つ。
名前、レベル、属性など、カードに書かれている内容と一緒に、いろいろ細かく書かれているようだ。…細かすぎて読めないけど。
「…えーと…『ナギィリア』…あぁ、本名登録じゃないんだ、カード名って」
ナギと歌姫は別々の画面が出ている。壁際まで近付いて確認すると、歌姫のほうには『フィネット』と書かれていた。
「ん~…どれ、だ…?」
画面いっぱいに書かれた文字に触れると、文字が動く。画面の下の方に書かれた文章の続きを読みたいなぁと思っていたら、私の指に応じて次の文章群が出てきた。
「『ファム・ループ:地下帝国を支えていた地核で、薔薇姫達が守り続けた根幹のひとつ』。『魔力水晶2型:設置型巨大魔力水晶の2型。全てを満たさねば動かない』。『7色の夜薔薇:夜にだけ咲く薔薇。月の満ち欠けに合わせて7色に色を変える』…開放アイテムって1つじゃないんだ」
「レアカードだと2~3種類だね。ウルトラレアは5種類以上必要だよ」
「面倒だなぁ…。とりあえず、シロが覚えておいて。この星のどこかにはあるんだろうし」
既に消滅したものを要求されることは無いだろう。だったらどこかには存在するはずだ。
もし存在しない物を集めろと言われてるなら、システムにケンカを売る必要があると思う。
「…召喚術師様。何かありましたか?」
立ち上がって鑑定画面を消すと同時に厨房の扉が開いて、歌姫が左半分だけ姿を見せた。手には食材らしきものを抱えている。
「うん。あなたもそうだけど、私もこの衣装が邪魔だなぁと思って」
「そうですね…よくお似合いだと思いますよ」
「似合うから可動域が少なくていいって話じゃないと思うんだ」
「僕もナギも裁縫は出来ませんが、町には商店もありますのでそちらでご購入されては?」
「そうするよ」
話が終わったところで、歌姫は厨房の中から背中を押されて室内に入った。後からドーマンが鍋と籠を持って出てきて、前より低くなった机の上に並べていく。ドーマンは大柄だから、応接セットの間を行き来するのは大変そうだ。
「…日が変わったら、ちょっと拡大したそうが良さそうだね」
応接セットは寛ぎ用としてそのまま置いておいて、普段使える食堂セットも必要だろう。
家具が増えれば室内の空き空間が減って狭く感じるようになるし、1階部分を拡張するか、階数を増やすか考えた方がいいかも。
「あれ。でも拠点って、土台あるんじゃなかったっけ」
「そうですね。それが一般的だと思います」
食事用の匙や食器を並べていたティセルも頷く。
「シロ。拠点の土台作ってそこに物を建てるほうが大変?」
「集落を建てるなら、防衛装備の維持が難しくなるよ。広範囲になるほど効果を薄く引き伸ばすことになるから弱くなるし、維持費もかかるから」
「それはそうだよね。じゃあ…この家を大きくするほうがラクか」
その内、10階建てとかのビルになるかもなぁと思って想像していたら、いつの間にか食事の用意が済んだらしい。
呼ばれて私は1人用のソファーに腰かけた。
目の前に並べられた食事は、ちょっと豪勢になっている。
白いスープには具材が色々入っているようだったし、隣には丸いパンと緑色の実が置かれていた。
「ナギさんとドーマンさんが、森で鹿を獲って来たんですよ。この人数ならたっぷり数日分ありますが、加工と保管の為の場所が無いのが悩みですね…。氷室には胴の部分だけ入れてありますが」
「丸焼きにしたら?」
「場所が悪いな。外で火起こしなんかしたら一瞬で森が燃えるぞ」
「じゃあ、ご飯食べたら拠点を移動させようか」
」
私は味音痴らしいので、何の肉を食べても種類の判別ができない。
ティセルは鹿肉と言ってるけど、私が知ってる鹿とは違う生き物なんだろうなぁ。食べられるなら何でもいいんだけど。
「…あ、そうだ。ミッション受けようと思ってたんだ」
果物含めて食べ終わってから、私は天井を見上げる。
片付けをしようと動き始めた人たちも動きを止めて、私を見た。
「私、ペナルティがあるらしいんだよね。それを解除するためのミッションがあるんだけど…」
「召喚術師になったばかりで、か?」
「何故かはわからないんだけど、先代がペナルティ持ってたみたいだから、それを引き継いだのかもね」
「先代?」
「代々召喚術師の遺産を引き継ぐ家はありますね。闇薔薇帝国の召喚術師は家門に分かれていました」
「…虹色ってヤツは、油断ならねぇな」
それぞれ感想はあるだろうけど、ペナルティを持ったままの理由はわからないんだからしょうがない。
「シロ。ペナルティ無くすミッション出してよ」
「『ペナルティ解除ミッション』だね。3種類あるよ」
机の上に出てきた紙は2枚。それぞれに別の内容の文章が書かれていた。
【制裁解除任務:神殿奉納】
必要ランク:1以上
必要レベル:1以上
概要:眠る神を祀る神殿に出向き、神を称える行いをする。
内容:以下の中から2種類以上の行いをする。
・眠る神の信者を増やす(貢献1以上)
・眠る神に力を奉納する(貢献2以上)
・眠る神の祭祀を執り行う(貢献1)
・眠る神に仕える者達を助ける(貢献1以上)
成功条件:眠る神への貢献度10ポイントを取得する。
【制裁解除任務:神碑巡回】
必要ランク:3以上
必要レベル:10以上
概要:眠る神の神碑を巡り、復興させる。
内容:神殿さえ朽ちた眠る神々の神碑に出向き、建て直す。または、神碑を守る。
神碑1箇所につき貢献2~5ポイントを取得。
成功条件:眠る神への貢献度10ポイントを取得する。
【制裁解除任務:龍駆除】
必要ランク:1以上
必要レベル:1以上
概要:各地に巣食う龍を討伐する。
内容:各地に巣食う属性龍を討伐する。討伐方法は問わない。
下位龍:0ポイント
中位龍:2ポイント
上位龍:5ポイント
最上位龍:20ポイント
成功条件:5ポイントを取得する。6ポイント以上を取得した場合、別途報酬を与える。
「…これは…」
絶句したのはティセルだ。その向かい側で難しい顔をしていたドーマンが、私を見る。
「どれも一筋縄じゃ行かねぇぞ。この人数で龍討伐はまず無理だ。下位龍でさえ傭兵団が請け負うような…最低でも20人は必要だと言われてる。上位龍以上は国規模の問題になってくるしな」
「龍討伐は元々やるつもりないよ」
「そいつは良かった。けどな。神殿もなかなか厄介だ。有名な召喚術師ならヤツらも膝を折るかもしれねぇが、新参者じゃあロクな対応しねぇぞ」
「シロ。『眠る神』は何人いるの?」
天井に向けて尋ねると、少し間があった。
「…ボクには分からないよ。ヴィータが知っている神しか分からないんだ」
「じゃあ、13神の神殿をとりあえず廻ってみればいいか」
「世界のあちこちに散らばる神殿全部に行くつもりですか!?何年かかるか…」
「ある程度貢献したら良いみたいだから、1箇所だけでいいんじゃない?でも、神殿自体がもう無い神もいるみたいだし、近くにあるといいけどね」
「ここは…どの辺りなのでしょうか」
私達の話し合いの間、ずっと何か考えていたらしいナギが、尋ねる。何か知っているのかな?
「正確な位置は分かりませんが、『風岩山脈』のどこかのようです」
「それは…大陸のどの辺りの位置なのでしょうか」
「東方ですね。ダルゥザは西方にあったと聞いていますが、合っていますか?」
「はい。帝国があった頃の話ですので…今も存在するかは不明なのですが、『花土桜の高楼』に『薔薇乙女の神殿』がありました。薔薇乙女を創り出したとされる神が祀られていたはずです。神は眠りについて久しいと神殿長が言っていた記憶があります」
「それはどこなんだ?西方か?」
「はい。地下帝国の領土内にありました」
「地下帝国があった正確な場所は知らねぇぞ。書物にも残ってないんじゃないか?」
「ナギさんが分かるとしても、東方から西方まで行くのはかなり距離がありますね…」
神殿についてまったく詳しくない人間しかそろっていない。
彼らは「うーん」と唸っている。
「この辺って、3箇所あったよね。神殿。何て名前だったか覚えてる?」
「…食料との交換の話が出た時でしたね。名前は…憶えていませんが…龍の神殿もあったような気がします」
「シロは名前わかる?」
「『風龍神殿』『風花の滝神殿』『レンデル神殿』だね。どれも眠る神の神殿では無いよ」
龍神アケイドトルアは、風龍に指示を出して動かしていた。
風龍と風龍神殿は間違いなく関係があるだろうけど、風龍神殿がアケイドトルアと関係があるかはわからない。
でも、アケイドトルアも『眠る神』の一人になったんだろうし、彼女を祀る神殿があればそこに行けばいい気もする。
「…風龍神殿に行ってみようか」
「それは…」
提案したが、誰も頷かなかった。
「龍神殿は…龍を称える神殿です。本来なら龍を抑える役目もあるはずなので、神殿が機能していれば龍も暴れないはずなのですが…」
「ん~…」
ルーリアの時は、ペナルティとして風龍が拠点に攻撃を仕掛けてきた。本人の意思でやったというより、『システムとしてやらされた』という感じがある。召喚される英雄たちより召喚術師を優先するシステムと同じだ。召喚術師たちの選択によって、あらゆるものの動きが変化する。
ペナルティ解除ミッションも、真逆のミッションが提示されているように感じた。
眠る神への奉仕か。
龍を消滅させるか。
龍神アケイドトルアは風龍を使っていたが、一定以上の傷を負わせないよう私を止めに来た。『システムの規則を破って』来たのではないかと今は思う。だから、彼女は思うより早くペナルティを受けて眠りについた。
龍神の名を持つくらいだから、龍が消滅すれば彼女の力は弱まるはずだ。そして、眠っている彼女にはそれを阻止する術はない。
アケイドトルアは契約主の代理ではあるけれど、私は彼女としか接していない。
彼女も、契約主の地神ナルケイアも、私にとっては同等の存在だと思う。2神を眠りから目覚めさせることが目的ではない契約だけど、それは目指してもいいんじゃないかな。
「じゃあ、みんなは『地神ナルケイア』って神は知ってる?」
ナルケイアが眠りについてどれくらい経つのかはわからない。祀る神殿さえ無くなっているほど昔からだと、神碑を探すところから始める必要がありそうだから、結構大変だ。
そう思っていたら、4人はそれぞれに頷いた。
「創造神様ですね。この星をお造りになった御方です」
「帝国では『星神様』とお呼び致しておりました」
「地母神の呼び名もあるな。その年の畑の実りにも関係あるから、毎年3回、大陸のどこでも奉納祭があるぞ」
「尊い御方の為に捧げる歌が、現存するもので45帖。かつては72帖あったそうです」
なるほど。星神か。
4人の話を聞いて、私は納得する。
ひとつの星に、1人の星神。彼らは創造神でもあるし星を司る神でもある。ただ、世界の構造上、ひとつの星に複数の神がいるのが一般的で、創造神だからって一番エライわけじゃないし、とても強いというわけでもない。
彼らが共通して他の神々と違うのは、彼らだけが、その星と共に生まれて共に死ぬ、ということだ。
だから、星神の代替わりは起こらない。星が爆発すれば星神も消滅するし、星神が死ねば星も消え去る。
そんな星神であるナルケイアがペナルティを受けて眠っているというのは…。
結構、良くない状況だ。
多分、結構悪い状況だ。
「ん~…荷が重いな」
「召喚術師が祭りを取り仕切ることは無いと思いますが…」
「尊い御方の歌は、小さな子供でも歌える簡単な曲もありますから」
「フィネみたいに簡単に歌を覚える人は、そんなにいないんだよ」
「俺も3つくらいしか覚えてないぞ。召喚術師殿の悩みは、そんな事じゃねぇんだろ?」
ドーマンに訊かれて、私は首を傾げた。
寝ててもさすがは星神。その存在の大きさは絶大だ。多くの人たちに慕われる存在なら、すぐに何とかしないといけない、ということは無いんだろう。
星にとっては龍神より星神を優先して起こしてやるほうが何倍もいいに決まってるんだけど、そっちのほうが大変だろうし…ペナルティ解除ミッションに龍の撲滅があったのも気になる。
「地神ナルケイアの神殿って、どの辺りにあるんだろう」
「各地にありますが、大本山は大陸の中心部にあります」
「そいつは創造神神殿じゃねぇか?地神のほうの総本山ならたしか西だぞ」
「ん?2箇所に分かれてるの?」
「『ナルケイア神』はあまりに大きな存在ですので…御力に合わせてそれぞれ別々に設けているとか…」
「南方の総本山は島にあるしなぁ」
「じゃあ…龍神は?龍神の神殿ってある?」
ナルケイアのほうは、どの神殿が『眠りの神の神殿』として合っているのか、巡るのが大変な気がしてきた。
だから、やっぱり追うならアケイドトルアかな。
そう思って、尋ねてみたけれど。
「…龍神…?」
4人は何とも言えない表情になって、私を見た。
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娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
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そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
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家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
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【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
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