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聴力
しおりを挟む「はい、1グループは、引き続き聴力検査です。今度は聴こえたら手を挙げてくださいね。公正な検査のために、今度は目を閉じていただきます。」
そう言うと、またミツバチたちは、みんなの目の横に貼ったヤマイモの実をはがし、まぶたの上に貼りました。
「では検査をはじめます。いいですか?きこえたら、手を挙げてくださいね。」
さっき、ジガバチたちがカブトムシの幼虫を持っていた場所に現れたのはヤブカです。ヤブカの場所から、みんなの足元(モグさんが引いた線まで)まで、ミミズの巻き尺がひろげられました。
ぷうううううううううん。
ヤブカは、精一杯羽を動かしながら、ひと目盛ずつ、みんなの近くまで寄っていきました。
ぱ、ぱ、ぱ…。
目隠しをされた参加者たちは、ヤブカの羽音が聞こえた時点で手を上げました。
一番早かったのはノウサギのミミオくんでした。彼は、ヤブカがスタート時点で羽根を震わせたときにすでに手を挙げていました。そして、目はあまり良くなかったアナグマのホルルさんも今回の検査では抜群の早さで手を挙げていました。
「………」
さとやまむらの大年寄ふたり、ヒキガエルのジョセフィーヌとクサガメのクサノさんは、視力はカブトムシの幼虫がなんとか見えた程度、そして聴力は、いまだ手が上がりません。
ヤブカはふたりの目の前まで近づき、必死でその小さな羽根を震わせていました。
ぷううううん…ぽと。
ついに疲れ切って気絶してしまいました。それでもジョセフィーヌとクサノさんは気付かず、両目にヤマイモの実を貼り付けて、ちんまりと座っていました。ふたりともなんとか音を拾おうと、首をときどきかしげてみたりしてはいたのですが。
「いかん、その子をいそいでムカデ先生のところに連れて行って。続きは私がやろう。」
ずーん、と登場したのは立派なオスのカブトムシさんでした。ヤブカが倒れた場所に立ち(それはモグさんが引いたラインの上でした。)ぱかり、と茶色い羽根を開けました。
そこからパリパリとひろがった薄い羽根が、ぴーんと伸びて、ぷるぷる震えだします。
ぶ、ぶ、ぶ、ぶ、ぶうーん!
気絶したヤブカを両脇から抱えていたハムシ2匹が、ヤブカと一緒に飛ばされましたが、ちょうどムカデ先生が乗っている机の上に落ちました。
「はい、お疲れさーん。大丈夫だよ、すぐに目を覚ますから。」
ムカデ先生は落ち着き払ってヤブカの顔にすりつぶしたヘクソカズラの実を塗りました。
「くさっ!」
ヤブカのお嬢さんは1秒でがばっと起き上がりました。
「あ!聞こえた!」
ジョセフィーヌがぱっと手を挙げ、クサノさんも
「うむ!」
と、踏ん張っていた前足を上にあげました。
「はーい、ジョセフィーヌさん、クサノさん、カブトムシゼロニョロ!」
担当のカナブンがほっとしたように読み上げました。
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