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打ち上げ会
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「ふーう、終わったわねー。ホルルさんのところでお茶を飲みましょうよ。」
ジョセフィーヌはソーシェのあたまをちょっと撫でて、イタチのばあちゃんを見上げて言いました。
「ああ、いいね。この前のどんぐりクッキー、まだ、あるかい?」
クサノさんの乗った台車の向きを変えているアナグマのホルルさんに、イタチの「ちいばあちゃん」は聞きました。
「ああ、もちろんありますよ。どんぐりクッキーとタンポポコーヒーが、今日の三時のおやつメニューです。」
アナグマのホルルさんはゆっくりと説明しました。すっかり、おしゃれカフェのマスターになっていました。
「ただし、混雑が予想されますので、器は使い捨てを使用させていただきます。あしからず。」
みんな、「せっかく顔を合わせたんだから」と、あいさつや立ち話、そこからたった一軒しかないホルルさんのカフェに行く、という流れができて、ぞろぞろと移動始めていました。
「クサノさん、こりゃ大変だ。いそいで帰って、店を開けなきゃ。少し飛ばしますよ!」
「よしきた!着いたらわしゃあテーブルやらなきゃな!」
他の人たちより急ぎ足で、先頭を切ってふたりは池のほとりのカフェを目指しました。
「準備はすませてあるから、お湯を沸かすのだけ急がなきゃ…」
カフェが見えてきました。
「おーい」「おーい」
キイキイと、ちいちゃな影が、カフェの前の広場で手を振っています。こどもたちです。
「おや、急いだけれど、近道されたかな?」
ホルルさんはくすっと笑いました。「やあ、みんな。いま、用意する…から…待って…て…」
ホルルさんとクサノさんは子供たちのうしろの、自分たちの家を見てぎょっとしていました。
おしゃれなカフェの入り口や、かべや、窓ガラスや、どうやって登ったのか屋根にまで、ハエやゴキブリがたかっているように見えました。
こどもたちがホルルマスターを待つ間に、みんなで今日、もらったシールをお店に貼っていたのです。よく見るとひとつひとつの下に『えきびょうたいさん』と、ちいさく書かれていました。
「ホルルさん、みんなでお店をびょうきから守ろう、って、これ、貼ったの。さいしょに考えたのはハツカネズミのヨセフとゴータだよ。
ほら、屋根の上の五木教授、本物そっくりでしょ?」
ヒミズのぼうやがにこにことホルルさんに抱きついて説明しました。
「わっはっはっは!」
クサノさんがたまらず大声で笑いだしました。
「ホルル君、いいじゃあないか。こどもたちの気持ちがわしゃ、うれしいよ。どーれ、いま、じいちゃんがお湯を沸かすからな。てあらい体操して待っとれよ。」
呆然としていたホルルさんが、ハッと気づいたときにはクサノさんがお湯をわかし、こどもたちに甘茶をいれていました。
「マスター、なかなかおしゃれじゃないの。」
やっと着いたジョセフィーヌがホルルさんの肩を叩いてほめました。
「ほら、みんな到着しますよ。」
「あ、そうだった。よし、気を取り直して、コーヒーいれましょう!」
「じゃ、てあらい体操して待ってるわね。」
て、て、てててて 手を洗おう…
こどもたちはとてもじょうずに歌っておどります。
六ツ子も、ヒミズのぼうやが声をかけてくれたのがうれしくて、珍しく途中で飽きずにおどりました。
「はーい、おまたせ。どんぐりクッキー。ひとり、ふたつずつだよ。」
ホルルさんは、甘茶のおかわりとクッキーを運んできました。どっちもどんぐりの殻に入っています。
「あー、これ、今日の健康診断でうんち入れたやつだー。」
こどもたちは大喜び。
「あら、ほんとね。」
大人たちはにがわらい。
そこに、後片付けを終えたミツバチやクロバエおにいさんたちスタッフも到着しました。
「おおー!なんて素敵なカフェ!」ニクバエおにいさんはよく通るテノールでほめたたえました。
「この器もかわいいわ。テイクアウトもできるのね。」
イエバエおねえさんもはしゃいでいます。みんなさっそく、こんがり焼きたてのどんぐりクッキーをぱくり。
「あー。『てあらい体操』してないよー?」
六ツ子のロックがゆびさして言いました。
「あ、あ、そうねそうね。」
「仕方ないねー。」
健康診断の後片付けで疲れていましたが、こどもたちが見ているのでさぼれません。
「よし、じゃ、私が前に出ますかな」
リンリンと鈴を鳴らして、五木教授が出てきました。
「では、疲れた時の手洗い体操―!かんたんバージョンー!
はーい、ごーしごし、ごーしごし、ほこりをぱんぱんぱん!
以上、おしまーい。」
「おー、すばらしい!」
ムカデ先生が拍手しながら立ち上がりました。ムカデ先生の拍手は、手がいっぱいあるので一人でもじゃらじゃらと迫力ありました。
「臨機応変、当意即妙。これなら疲れた時もさぼらずできますな。どうぞどうぞ五木先生。ここが空いてます。」
ムカデ先生は自分の席を少し横に詰めて、五木教授に手まねきしました。
五木先生の前にもタンポポコーヒーと、どんぐりクッキーが置かれ、にぎやかに健康診断の後のお茶会がはじまりました。
みんなそれぞれ、記録用紙を見せ合ったり、犬チームの話で盛り上がったり(さすがに犬たちは測定が済むと、いそいでそれぞれのお家へ戻っていたので、残念ながらここにはいませんでした。)楽しそうにひとやすみしていきました。
「来年も、再来年も、さとやまむらの生き物たちが、健康で、しあわせであるように!ね、五木武利先生!」
また、ムカデ先生が五木教授に熱く語っているのが聞こえます。
「ふぁー。またやってるー。」
ねこ先生があくびをしながら笑って言いました。言いながら、ジョセフィーヌがくるみドーナツを頼もうとしているのをうしろから抱きしめて、
「カロリーが高いから、今日はコオロギせんべいにしましょ?」と耳元でささやきました。
ジョセフィーヌは、あ、そうだった、と笑いながら首をすくめました。
それをながめながらヤギ先生は「ん、んめめぇぇぇぇぇぇぃ。日々是好日!」と、笑った瞳で、うれしそうにつぶやきました。
おしまい
ジョセフィーヌはソーシェのあたまをちょっと撫でて、イタチのばあちゃんを見上げて言いました。
「ああ、いいね。この前のどんぐりクッキー、まだ、あるかい?」
クサノさんの乗った台車の向きを変えているアナグマのホルルさんに、イタチの「ちいばあちゃん」は聞きました。
「ああ、もちろんありますよ。どんぐりクッキーとタンポポコーヒーが、今日の三時のおやつメニューです。」
アナグマのホルルさんはゆっくりと説明しました。すっかり、おしゃれカフェのマスターになっていました。
「ただし、混雑が予想されますので、器は使い捨てを使用させていただきます。あしからず。」
みんな、「せっかく顔を合わせたんだから」と、あいさつや立ち話、そこからたった一軒しかないホルルさんのカフェに行く、という流れができて、ぞろぞろと移動始めていました。
「クサノさん、こりゃ大変だ。いそいで帰って、店を開けなきゃ。少し飛ばしますよ!」
「よしきた!着いたらわしゃあテーブルやらなきゃな!」
他の人たちより急ぎ足で、先頭を切ってふたりは池のほとりのカフェを目指しました。
「準備はすませてあるから、お湯を沸かすのだけ急がなきゃ…」
カフェが見えてきました。
「おーい」「おーい」
キイキイと、ちいちゃな影が、カフェの前の広場で手を振っています。こどもたちです。
「おや、急いだけれど、近道されたかな?」
ホルルさんはくすっと笑いました。「やあ、みんな。いま、用意する…から…待って…て…」
ホルルさんとクサノさんは子供たちのうしろの、自分たちの家を見てぎょっとしていました。
おしゃれなカフェの入り口や、かべや、窓ガラスや、どうやって登ったのか屋根にまで、ハエやゴキブリがたかっているように見えました。
こどもたちがホルルマスターを待つ間に、みんなで今日、もらったシールをお店に貼っていたのです。よく見るとひとつひとつの下に『えきびょうたいさん』と、ちいさく書かれていました。
「ホルルさん、みんなでお店をびょうきから守ろう、って、これ、貼ったの。さいしょに考えたのはハツカネズミのヨセフとゴータだよ。
ほら、屋根の上の五木教授、本物そっくりでしょ?」
ヒミズのぼうやがにこにことホルルさんに抱きついて説明しました。
「わっはっはっは!」
クサノさんがたまらず大声で笑いだしました。
「ホルル君、いいじゃあないか。こどもたちの気持ちがわしゃ、うれしいよ。どーれ、いま、じいちゃんがお湯を沸かすからな。てあらい体操して待っとれよ。」
呆然としていたホルルさんが、ハッと気づいたときにはクサノさんがお湯をわかし、こどもたちに甘茶をいれていました。
「マスター、なかなかおしゃれじゃないの。」
やっと着いたジョセフィーヌがホルルさんの肩を叩いてほめました。
「ほら、みんな到着しますよ。」
「あ、そうだった。よし、気を取り直して、コーヒーいれましょう!」
「じゃ、てあらい体操して待ってるわね。」
て、て、てててて 手を洗おう…
こどもたちはとてもじょうずに歌っておどります。
六ツ子も、ヒミズのぼうやが声をかけてくれたのがうれしくて、珍しく途中で飽きずにおどりました。
「はーい、おまたせ。どんぐりクッキー。ひとり、ふたつずつだよ。」
ホルルさんは、甘茶のおかわりとクッキーを運んできました。どっちもどんぐりの殻に入っています。
「あー、これ、今日の健康診断でうんち入れたやつだー。」
こどもたちは大喜び。
「あら、ほんとね。」
大人たちはにがわらい。
そこに、後片付けを終えたミツバチやクロバエおにいさんたちスタッフも到着しました。
「おおー!なんて素敵なカフェ!」ニクバエおにいさんはよく通るテノールでほめたたえました。
「この器もかわいいわ。テイクアウトもできるのね。」
イエバエおねえさんもはしゃいでいます。みんなさっそく、こんがり焼きたてのどんぐりクッキーをぱくり。
「あー。『てあらい体操』してないよー?」
六ツ子のロックがゆびさして言いました。
「あ、あ、そうねそうね。」
「仕方ないねー。」
健康診断の後片付けで疲れていましたが、こどもたちが見ているのでさぼれません。
「よし、じゃ、私が前に出ますかな」
リンリンと鈴を鳴らして、五木教授が出てきました。
「では、疲れた時の手洗い体操―!かんたんバージョンー!
はーい、ごーしごし、ごーしごし、ほこりをぱんぱんぱん!
以上、おしまーい。」
「おー、すばらしい!」
ムカデ先生が拍手しながら立ち上がりました。ムカデ先生の拍手は、手がいっぱいあるので一人でもじゃらじゃらと迫力ありました。
「臨機応変、当意即妙。これなら疲れた時もさぼらずできますな。どうぞどうぞ五木先生。ここが空いてます。」
ムカデ先生は自分の席を少し横に詰めて、五木教授に手まねきしました。
五木先生の前にもタンポポコーヒーと、どんぐりクッキーが置かれ、にぎやかに健康診断の後のお茶会がはじまりました。
みんなそれぞれ、記録用紙を見せ合ったり、犬チームの話で盛り上がったり(さすがに犬たちは測定が済むと、いそいでそれぞれのお家へ戻っていたので、残念ながらここにはいませんでした。)楽しそうにひとやすみしていきました。
「来年も、再来年も、さとやまむらの生き物たちが、健康で、しあわせであるように!ね、五木武利先生!」
また、ムカデ先生が五木教授に熱く語っているのが聞こえます。
「ふぁー。またやってるー。」
ねこ先生があくびをしながら笑って言いました。言いながら、ジョセフィーヌがくるみドーナツを頼もうとしているのをうしろから抱きしめて、
「カロリーが高いから、今日はコオロギせんべいにしましょ?」と耳元でささやきました。
ジョセフィーヌは、あ、そうだった、と笑いながら首をすくめました。
それをながめながらヤギ先生は「ん、んめめぇぇぇぇぇぇぃ。日々是好日!」と、笑った瞳で、うれしそうにつぶやきました。
おしまい
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