おばあちゃん起きて

たかまつ よう

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ハンノキ咲いたよ

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 ジョセフィーヌが冬眠してから、2カ月が経ちました。六つ子も、ヒミズのぼうやも、寒いけど元気に過ごしていました。朝になると霜で田んぼも畑も真っ白です。白い息を吐きながら、
「おはよう!」
と、あいさつを交わし、
「ねえ、お日さまが少し明るくなったよね?」
「うんうん、きっともうすぐ春になるね…。」
と、空を見あげました。
「あー!」
サンダーが大きな声を上げました。「サンダー、どうした?」
みんな、サンダーのそばにあつまり、一緒に上を見ました。
 「そこ!花が咲いてるよね?」
「え?こんなに寒いのに?」
 口々に思ったことを言いながら、指さす方を見てみると、ハンノキの枝の先に、レンガ色の細長い房が下がっていました。
 よく見ると、枝という枝にレンガ色の房はぶら下がっていて、風でさわさわと揺れています。
「よし!ぼく、取ってくる。おばあちゃん、起きるかもしれないよね。」
 サンダーは上手にハンノキの根元に乗っかって、くるくるとらせんを描きながら上を目指して登り始めました。
 「サンダー、気を付けて!」
 ヒミズモグラのひぃちゃんは、手のひらが土を掘るようにできているので木には登れません。
 サンダーは、長いしっぽを幹に巻き付けるようにしながら、一番下の枝まで登りました。
 「いっぽんください、おばあちゃんに見せるんだ。」
 そう言ってサンダーはちいさな枝を1本、ハンノキからかじり取り、下に落としました。
「よっしゃ!」
 それをワンダーは下で上手に受け止めました。

「わあ、なんか虫みたいね。」
 「えー、でも、よく見たら花だよ。」
 ハンノキのお花をはじめて見た子供たちは、それぞれにぎやかに思ったことを話しています。
 「おばあちゃん、起きるかな」
 わくわくしながら、ジョセフィーヌのうちに着きました。
「おばあちゃん!木に花が咲いたんだよ!」

 …しーん。

「おばあちゃん!」
…何度も何度も呼びましたが、結局ジョセフィーヌは起きてきませんでした。
「ちぇーっ!」
「おばあちゃん、ここに置いとくからね!」
 聞こえても、聞こえなくても、中のジョセフィーヌに聞こえるようにと、みんな大きな声でゆっくり話しかけて、入口の横にハンノキの枝を差しました。

「日が暮れる前に帰らなきゃね」「つまんないのー。」
「また、来ようね。起きてるかもしれないからさ。」
 口々に話しながら、にぎやかに帰っていきました。
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