いじめ

僕。

文字の大きさ
2 / 4
序章。

再会と過去の恐怖

しおりを挟む
「白執ー。」

ぼやっとしていた。授業中なのに。考え事をしていた。
昨日の。華音留の電話の。

「す、すみませんっ…。」

私の声が慌てているのが分かった。

「ちょーやべー!!!」

その女の声は隣のクラスから笑い声が聞こえた。その声は私の心に引っかかった。

「白執。この問題を解いて欲しい。」

その声について考える暇は無かったが、どこかで聞いたことがある声だった。
入学式でもそんな声が聞こえた気がする。
嫌悪の様な舌打ち。
_______


私は学校では基本一人だった。友達を作らなかった。仲良くなれそうな子がいなかったから。

友達が居ないし、お昼はお弁当ではないので食堂で取っていた。

今日もいつも通り食堂に行った。

窓際で電気の当たりがよく日も当たる場所はクラスの人気者か三年生が沢山いた。
それとは対照的に壁際の、あまり電気の当たりが良くない隅に一人の少女がいた。
少女は髪が長く雰囲気から暗そうだった。
一人が好きなのかは分からないが、一人が好きというよりは独りになっているという方が正しいと思えた。

少女は薄暗い天井を見やった後に、こちらに目を向けた。
少女と目が合った。

「あっ…。」

何かを思い出した様に少女は小さくそう言った。

その声は電話の声に似ていた。

「…華音留。」

私の口からその言葉が飛び出した。

少女は私の声を聞いて薄い笑みを浮かべた。

「ゆうちゃん…。」

寂しそうな掠れた声が私に届いた。

「ゆうちゃん、一緒にご飯食べよう…?」

華音留の目は嬉しそうだったが、悲しそうでもあった。
_______


島崎 華音留(しまざき かおる)は私の親友だった。小学校の。
いつも一人で大人しかった私とは違い、華音留は明るく人気でいつも笑っていた。
それなのに華音留は「一人は寂しいでしょ!」という理由で私と一緒に遊んでくれた。
私は楽しかった。きっと華音留もそうだったと思う。

しかし、今はそんな明るい感じが無かった。

「久し振りだね。」

最初に話したのは、華音留だった。やはりその声は小学校とは全然違った。

「久し振り。」

私は昨日の電話について話したかったが、勇気がなかった。

「高校、クラスどう?」

とりあえず話をしようと頑張ってみたが、昨日の事が気になる。

「んー。まぁまぁかなー。」

その声からは、寂しさと恐怖が感じ取れた。

「そーだよねー。私もー。」

「私と仲良くなれそうな人いないし。だったら最初から居なくてもいいかなーなんてっ。しかも、勉強しに来てるんだもん!」

嘘だ。声が震えている。昨日の電話の声と同じだ。不安、恐怖、寂しさ、悲しさ、辛さそんな感情が声に現れていた。

「……。」

「ゆうちゃん…。」

「なに…?」

「昨日…電話してごめんね…。」

声が弱々しい。掠れていた。

聞きたかった。華音留の抱えている物を。

「…どうしたの?」

「………。」

「私達、中学は違ったでしょ?離れて、寂しくなった私はね、中学の時、四人の女の子達と仲良くなったの。」

華音留の口から出る声はさっきより弱々しかった。

「最初はその子達と遊んでた。仲良く。でも、夏休みが明けて、みんな髪を染めたりピアスを開けたりして、不良みたいになってしまった。夏休み入る前からみんな私とは気が合わないって思ってたみたいで―」
_______


私は中学受験をした。父親が、少しでもいい中学、いい高校、いい大学に行ってもらいたいと考えていた。
親友の華音留と離れてしまうけど、明るく元気なあの子なら楽しい中学校生活を送れるから大丈夫だと思った。

華音留は成績がいいとは言えなかったので、華音留はあの子の家から近い中学に通った。

私達は忙しかった。

勉強、部活、学校生活、人付き合い。

私達は会えなかった。

「中学になっても、遊んでいようね!」

「うん。華音留、頑張ってね!」

小6で交わした約束を思い出した。

しかし中学に入ってから、一度も会うことが無かった。
_______


「その子達に虐められたの。」

その声は鋭かった。怒りの様な、そんな声だった。

「少しでもその子達から開放されたくて、沢山勉強した。中堅高校に行けばあの子達は来ないと思ったから。でも、あいつらは、別に馬鹿じゃなかった。だから、この高校に受かった。」

「…この高校にあいつらがいる。」

その声は恐怖と怒りだった。
_______
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

完結 報復を受ける覚悟の上での事でしょう?

音爽(ネソウ)
恋愛
目覚めたら、そこは記憶にない世界だった……

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...