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44話 壁の向こうのナルさんは……
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気分が晴れない。主人が無事意識を取り戻したというのに、だ。褒めて欲しいとは言わないが、意識を失っていらっしゃった三日三晩、つきっきりで送れるだけ魔力を送っていた身としては、抱擁を受けたリオネットを闇に葬りたいと思う位には、面白くない。
もちろん、魔石の玉を集めたりとリオネット達の功績もあって、早い目覚めであったのは理解しているが……。
いまだに交わした唇の温もりで今日も寝る事は叶わないだろう。
「ナルさん?起きてる?」
「起きてございます。不都合ありましたら何なりと」
愛らしい声に呼ばれて、私は思わず壁に向かって片膝をついた。
「不都合は無いよ。でも、少しだけ話に付き合ってもらえたら嬉しい」
「……御心のままに」
何故か、彼女の声には艶がある。雄を刺激する様な誘う様な。色香の影響を受けていらっしゃる?今の自分には拷問の様だ。
「今日はごめんね。呼びつけたのにあんな態度で」
「いえ、私めのスキルのせいですのでお気遣い無く。それより、お呼びくださった事を、嬉しく思います」
「うん、会いたかった。リオネット様に止められてたのに、どうしても。……、森で倒れてたの、助けてくれたのナルさんだよね」
「はい、近くまでたどり着いていたので鳥の使令が戻り、すぐに参る事ができました」
「ありがとう。チュンチュンがずっと私に魔力を届けてくれてたの、あの時分かったよ」
「……使令が離れ、あなたと途切れたのを感じた時は心臓が凍るかと思いました」
自分のした事が思い出される。私はこの様な言葉を紡ぐ口を犯したのだ。罪悪感とは裏腹に、自身が熱くなってくるのがわかった。
「ナルさん、ずっと会いたかった。今も早く会いたい。だから、今日無理しちゃった」
「……カリン様。私もお会いしたいです」
声が甘すぎる!
思わず声の聞こえてくる壁に縋りつき、口付けをしてしまった。自分の理性はどこに行ったのか。会いたいと言われて、何かのタガは外れ、窮屈になった自身を下着から開放した。
「あなたを抱きしめて、無事である事を確かめたい。森であなたを抱えた時、あなたは儚くなりそうで」
「うん」
いけない事だと充分理解しながら、初めて自分も見た程の大きさになっている自身をしごいた。
「お側を一時離れた罰とはいえ、私には耐えられるものではありませんでした。だから、今もお側に侍りたくて……堪らない」
「うん、私も」
更にそそり立ち、羞恥心すら快感となり、それが来る。その時、
「だから、頑張って早く治すね。それまで、もう少し」
「わかり、ました」
分かっている。彼女にこちらの様子は見えない。けれど、待てと言われた様に感じ、必死で止めた。
「ナルさん、寝れてる?」
「いえ……」
「そろそろ寝よっか」
「……実は、カリン様がお隠れになった日からほとんど……、今も眠れずにおりました」
お預けを食らわせられた犬の気持ちは……こんな気持ちなのだろうか。
「え?2ヶ月以上?」
「はい、昼間、立ったままでしたらなんとか」
「寝て。寝てください。今すぐ。命令です」
「ですが……」
命令のはずが、何故か身体は動かない。
「ナルさんが寝るまでここにいる。ベットに入って目を瞑って、そしたら子守唄歌ってあげるから」
「……分かりました」
「私が完全に治ったら、寝かしつけしてあげるからね。今はこれで我慢して。ナルさんが心配で、私が寝られない」
「我慢など……身にあまる幸せです」
落ち着けば、治るはずだ。そんな思いで治るのを待つ。けれども彼女の声が以前より艶っぽく、私のためだと思うと堪らなく愛しくなり、全く解消されない。このままでは夜が明けてしまう。だから、と言い訳して、彼女の歌声を聞きながら、以前同衾した時の温もりを思い出す。この様な僕想いの主人になんて事をと思えば思うほどに自分は興奮してきて、そして、熱は放った。
それは壁にまで達して、彼女に気取られたのでは無いかと青くなる。
「おやすみ、ナルさん」
直後に声をかけられて、心の奥から後悔した。
二度とこの様な真似はしない、と。
やはり、美しく無い事は、してはいけない。
もちろん、魔石の玉を集めたりとリオネット達の功績もあって、早い目覚めであったのは理解しているが……。
いまだに交わした唇の温もりで今日も寝る事は叶わないだろう。
「ナルさん?起きてる?」
「起きてございます。不都合ありましたら何なりと」
愛らしい声に呼ばれて、私は思わず壁に向かって片膝をついた。
「不都合は無いよ。でも、少しだけ話に付き合ってもらえたら嬉しい」
「……御心のままに」
何故か、彼女の声には艶がある。雄を刺激する様な誘う様な。色香の影響を受けていらっしゃる?今の自分には拷問の様だ。
「今日はごめんね。呼びつけたのにあんな態度で」
「いえ、私めのスキルのせいですのでお気遣い無く。それより、お呼びくださった事を、嬉しく思います」
「うん、会いたかった。リオネット様に止められてたのに、どうしても。……、森で倒れてたの、助けてくれたのナルさんだよね」
「はい、近くまでたどり着いていたので鳥の使令が戻り、すぐに参る事ができました」
「ありがとう。チュンチュンがずっと私に魔力を届けてくれてたの、あの時分かったよ」
「……使令が離れ、あなたと途切れたのを感じた時は心臓が凍るかと思いました」
自分のした事が思い出される。私はこの様な言葉を紡ぐ口を犯したのだ。罪悪感とは裏腹に、自身が熱くなってくるのがわかった。
「ナルさん、ずっと会いたかった。今も早く会いたい。だから、今日無理しちゃった」
「……カリン様。私もお会いしたいです」
声が甘すぎる!
思わず声の聞こえてくる壁に縋りつき、口付けをしてしまった。自分の理性はどこに行ったのか。会いたいと言われて、何かのタガは外れ、窮屈になった自身を下着から開放した。
「あなたを抱きしめて、無事である事を確かめたい。森であなたを抱えた時、あなたは儚くなりそうで」
「うん」
いけない事だと充分理解しながら、初めて自分も見た程の大きさになっている自身をしごいた。
「お側を一時離れた罰とはいえ、私には耐えられるものではありませんでした。だから、今もお側に侍りたくて……堪らない」
「うん、私も」
更にそそり立ち、羞恥心すら快感となり、それが来る。その時、
「だから、頑張って早く治すね。それまで、もう少し」
「わかり、ました」
分かっている。彼女にこちらの様子は見えない。けれど、待てと言われた様に感じ、必死で止めた。
「ナルさん、寝れてる?」
「いえ……」
「そろそろ寝よっか」
「……実は、カリン様がお隠れになった日からほとんど……、今も眠れずにおりました」
お預けを食らわせられた犬の気持ちは……こんな気持ちなのだろうか。
「え?2ヶ月以上?」
「はい、昼間、立ったままでしたらなんとか」
「寝て。寝てください。今すぐ。命令です」
「ですが……」
命令のはずが、何故か身体は動かない。
「ナルさんが寝るまでここにいる。ベットに入って目を瞑って、そしたら子守唄歌ってあげるから」
「……分かりました」
「私が完全に治ったら、寝かしつけしてあげるからね。今はこれで我慢して。ナルさんが心配で、私が寝られない」
「我慢など……身にあまる幸せです」
落ち着けば、治るはずだ。そんな思いで治るのを待つ。けれども彼女の声が以前より艶っぽく、私のためだと思うと堪らなく愛しくなり、全く解消されない。このままでは夜が明けてしまう。だから、と言い訳して、彼女の歌声を聞きながら、以前同衾した時の温もりを思い出す。この様な僕想いの主人になんて事をと思えば思うほどに自分は興奮してきて、そして、熱は放った。
それは壁にまで達して、彼女に気取られたのでは無いかと青くなる。
「おやすみ、ナルさん」
直後に声をかけられて、心の奥から後悔した。
二度とこの様な真似はしない、と。
やはり、美しく無い事は、してはいけない。
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