二回目の異世界では見た目で勇者判定くらいました。ところで私は女です。逆ハー状態なのに獣に落とされた話。

吉瀬

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 え、私頼まれちゃうの?

「カリンに頼むって……?」

 その場にいた全員の目が点になって、アッシャーも絶句した。

「カリンは元々、あちらから来た時点で病を持っていた。かなり厄介な物で、クラリスの加護で病状を軽く抑えてたのですが、最近、大量に魔力を受け入れる事が続いた様で、見事病魔は消失しています。そして、そのために今まで消費され尽くしていた魔力が彼女には溜まっている。いわゆる、聖女の状態です」

 「マジか?」と言ったのはアッシャーで、雨情がつられる様に義眼で私を解析し始めた。私自身は解析系のスキルが無いから、自覚は無い。

「確かに今はカリンの魔力えげつない事になっとるわ」

 大量の魔力って……と不思議に思っアンズを見ると、ニコッと彼は笑った。

「アンズ、知ってたの?」
「使令になる時、魔力の動きおかしいの知ってたよー。そんで、その後リオネットに聞いた。だから、毎朝毎夜にチューして魔力送ってたんじゃーん」

 全然気が付かなかった……。

「状況は偶然出来上がった物ですが、更に都合が良い事にカリンは見開みひらきという心を通わせるスキルまである。カリン、あなたどうやって2回目にここに来ましたか?」
「どうって……、ここに帰りたいって願ったら声が聞こえて……」

「魔王か……」

 とクラリスが呟いた。

「クラリスにとってはある意味魔王で間違いないかも知れません。カリン、その魔王だか神だか、喋れる自然現象だかに、見開でアクセスしてください」
「え」
「空気中のマナの供給量を抑え……、あちらの世界から二度と人が来ないように願うのです。やり方は怨嗟を受けるのと同じです。あなたがこちらに来たいと力を願った時と同じなんですよ。そもそも神との対話には魔力が必要で、だからこそ異世界からアクセスできる者は魔力量が多い。つまり、魔力量が多い者しか神と対話ができません。神との対話はその魔力の量で会話の質と時間が担保されます。カリンは魔力が多く、より効率的に会話できるスキルがある」

 リオネット様がそう言うと、兄様が一瞬で魔法陣を描いた。

「……各々、魔法陣の頂点に立て。カリンに魔力を送る」
「流石ダイリ殿、話が早い」
「我が君が、神の力を願って怨嗟を発露させる可能性は?」
「試算上発露はしませんが……」
「万一怨嗟が発露すれば、妾が払えるな。カリンに害は無い」

 皆が揃って、私はその中央に立った。凄い勢いで魔力は私に満たされていく。

見開みひらき


 強い思い。そして、具体的な願い事。助けてや、辛い、では届かない。
 神様、どうか私達の願いを聞いてください。



 ぽんっと跳ねる感覚がして、私は知らない空間に浮いた。

 目の前には、ぼんやりとした男の人の様な光の輪郭が浮かぶ。

「この結末でも、僕に会う事を選んだね」
「え?」

 その人は、ふふっと笑った。

「あなたが神様ですか?」
「そうだね。そう呼ぶ人もいる。ただ、みんなの声を拾って叶えてあげるだけの存在だよ。……君の願いは?」
「空気中のマナの供給量を減らして欲しいんです」

 表情などは分からない。
 その光は揺らめいて淡く輝く。

「構わないよ。あの世界のマナが少なければ、僕に届く声も少なくなって、怨嗟の発露は減るだろう。ただ、強い声があれば、僕は彼らに力を与えてしまうよ?」
「構いません。発露した人が少なければ、救う事は出来ます。それに、将来、また私達が誤りを起こした時、誰かが正すチャンスになりますから」
「なるほど、わかった」
「それから、私や聖女達がこちらに来てしまったみたいな行き来は出来ないようにしてください。強い魔力を持った人が、この世界を混乱させないように」

 リオネット様が言った通り、異世界こちらへ飛ばしてもらった時より明瞭に話が出来る。身体の中の魔力は凄い勢いで減っていくが、それを皆が補ってくれているのを感じる。

「それは……出来なくは無いけど、君があちらに帰ることになるよ?」
「え?」
「魔力の質でチャンネルを切り替えるから、今こっちにいる異世界人は元の世界に返されてしまう。一旦リセットしなければ、私が繋ぐルートは閉じられない」

 神様の声には困惑がのっていた。それから、神様はその手のひらの上に映像を浮かべた。
 手のひらの上には皆が私に魔力を送ってくれている、あの部屋が映っている。

『……流石に魔力が尽きそうです。カリンはまだかかるのでしょうか?』
『ダメなら一旦切るか?!』
『同じ量の魔力を貯めるには暫くかかるが……』
『無理だ。索冥は契約によりもうすぐ消える』
『はぁ?なんやてっ』
『すまぬな。この機会を逸すれば次は無い』

 今決めなくてはダメ、なの?そんなの決められるわけ……。

 神様の手のひらの上の映像にはアンズも映っている。私が意識を向けると拡大されてアンズがすぐそばにいる程に感じられる。
 一番多くの魔力を送ってくれているのはアンズだ。

『だいじょぶ。僕もっと頑張れる。カリンはきっとだいじょぶ』

 出力が上がって、負担をかけてるのが分かった。苦しそうにしながら、自分に言い聞かせる様にアンズはそう呟いている。

「時間は無いよ。諦めるかい?」

 もし、私が保護者目線じゃ無ければ、アンズに助けてって言ったのかも知れない。
 でも、今の私にとってアンズはまだ守りたい対象で、アンズの生まれ育ったあの世界がクラリスの生まれた時代のようになるのは許容出来なくて……。


「……いえ。私ごと、繋がりは切ってください」

 アンズ……。

 今、この選択をせずにあそこに戻っても、世界が救われてなければアンズを人としても幸せに出来ない。
 人外のままのアンズと結ばれても、そんな世界に彼を残す事になる。

 すごく大事で大好きだから。

「……切るよ?」
「はい」

 プツンと切れる音がした。

 私の身体の両側からゴムが伸びていて、片方があちら、もう片方があちらに付いていた様な感覚だ。その片方が切れて、私は元の世界に強く引っ張られた。

 はっと目を覚ますと病院のベッドの上だった。質の違う魔力が体を巡り、あっという間に私の中にいたアンズの気配は消えた。

「あ」

 長く病気で苦しんでいた痛みは消え去っていて、それがさっきまでの出来事が、ただの長い夢では無かった事を実感させる。

「アンズ……、ごめん」

 私はけれども、半身を失ってしまった。
 
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