40 / 132
ダメ!それは私の!
第39話 メグルとリリーと
しおりを挟む
「よし。おまけのおまけ!」
そう言って僕はブローチを両手で包み込んだ。
魔力を込めブローチ内の金属分子を魔粒ごと、一方方向に引っ張る。
こうすれば…磁石の完成だ。
魔法とは原子よりも小さな魔粒を操り、起こす現象なので、このような事ができてしまうのだ。
しかし魔粒を一つ一つを操るというのは原子一つ一つを操るより難しい。
その為、いくら魔力の扱いが上達したとしても、一粒一粒を扱うのは困難。
僕ぐらいだと、精々、磁石の様に魔粒を一か所に集めるのが精いっぱい。と言った所だ。
魔粒にも様々な性質があり、例えば水素と結合する物や、酸素と結合する物もある。
これらを引き寄せるには当然違う性質の魔力を用いるので魔法に得手不得手が出てくるのだが…。
原理を深く理解している僕は魔粒の反応を感じて魔力をチューニングできてしまう。
その為、時間をかければ何でも操れるようになるのではないかと思うが、やはり操りにくい物はある。
僕は磁石になったブローチから手を離す。
そして、こちらも同じく金属で作った矢の小型模型を彼女の胸のあたりに突き立てた。
リリーはビクッとして目を閉じたがいつまで経っても襲ってくることのない痛みを不思議がってか薄っすらと目を開けた。
「僕が今お守りの魔法をかけたからね。こうやって本当に危ない事があると守ってくれるんだ」
そう言って僕が手をどかすと、矢を引きつけ、その身で防いだブローチがあった。
実際の大きさの矢を引きつける事などはできないが、相手もそれは理解しているはずだ。
…ちょっとロマンチックな話をしたい気分だったのだ。
少し冷静になると急には恥ずかしくなって彼女の顔が見られなくなる。
目を逸らせばいつの間にか興味深そうにこちらを睨む二人の視線。
僕はもう耐えられなかった。
=========
「それじゃあまたね!」
メグルという男の子は突然走り出すと窓に足をかけた。
一体何をするつもりなのかと私は駆け寄るが、彼はそれよりも先に窓辺から飛び降りる。
「まって!」ここは二階なのに!
私は焦って下を見下ろすが、そこには何事もなかったかのように着地する彼がいた。
そしてこちらに振り向くこともなく走り去る。
その姿を見て私は力が抜けた。
本当に無茶な事をする子だ。
いや、彼の中ではそうでないのかもしれないが、見ているこちらがひやひやする。
と、窓から身を乗り出して大きな声を出した私に、村中から視線が飛んできていることを感じた。
それに気が付いた瞬間プレッシャーで押しつぶされてしまいそうになる。
いや、彼は私に勇気をくれた。それにお守りだってある。
まずは一歩。一歩歩み寄ってみよう。
そうすれば何かが変わるかもしれない。
私は彼から貰ったお守りをギュッと握ると大きく息を吸い込んだ。
「こ、こんにちは…」
殆どの息は抜けてしまったが、ほんの少し、喉に引っかかった勇気が空気を震わせた。
私は消え入りそうな声と共に窓の縁へ沈んでいく。
完全に外から姿が見えなくなると私はやっと息をする事ができた。
大丈夫、怖くない。大丈夫、怖くない。
私はお守りを強く握り、呼吸を整える事で何とか正気を保てた。
あんなに大勢の人に見られた。
それに声もかけてしまったんだ。
…でも何があってもこのお守りが守ってくれる。
だから大丈夫なんだ。
…落ち着いて考えてみれば、これだけの事をしたんだからもう怖い事なんてないんじゃないかと思う。
思うだけで怖いことには変わりないのだが…。
彼の事を思えば…多分、頑張れる。
「お姉ちゃん。私お祭り行く」
私の決断に、お姉ちゃんは呆けた声で「あぁ」と返す。
そして、少し時間を空けると、思い出したかのように「行くか」と腰を上げた。
それに釣られたようにコランさんも立ち上がる。
村に出るのはいつ振りだろうか。
この家に来た時、以来かも知れない。
玄関に出ると足や手が震えて中々うまく靴が履けなかった。
「大丈夫か?…無理しなくてもいいんだぞ?」
お姉ちゃんはそう言うと心配そうにこちらを見つめてくる。
しかしこれは初めて私自身で決めた事なのだ。
絶対にやりきる。
私は自分に言い聞かせるように「大丈夫」と返事を返す。
岩の様に重たい扉を少しずつ開く。
その隙間からは今まで拒んできた優しい日の光が流れ込んできた。
祭りの喧騒が私を奮い立たせる。
「よし…」
こうして私はまた一歩、新しい世界に踏み出した。
そう言って僕はブローチを両手で包み込んだ。
魔力を込めブローチ内の金属分子を魔粒ごと、一方方向に引っ張る。
こうすれば…磁石の完成だ。
魔法とは原子よりも小さな魔粒を操り、起こす現象なので、このような事ができてしまうのだ。
しかし魔粒を一つ一つを操るというのは原子一つ一つを操るより難しい。
その為、いくら魔力の扱いが上達したとしても、一粒一粒を扱うのは困難。
僕ぐらいだと、精々、磁石の様に魔粒を一か所に集めるのが精いっぱい。と言った所だ。
魔粒にも様々な性質があり、例えば水素と結合する物や、酸素と結合する物もある。
これらを引き寄せるには当然違う性質の魔力を用いるので魔法に得手不得手が出てくるのだが…。
原理を深く理解している僕は魔粒の反応を感じて魔力をチューニングできてしまう。
その為、時間をかければ何でも操れるようになるのではないかと思うが、やはり操りにくい物はある。
僕は磁石になったブローチから手を離す。
そして、こちらも同じく金属で作った矢の小型模型を彼女の胸のあたりに突き立てた。
リリーはビクッとして目を閉じたがいつまで経っても襲ってくることのない痛みを不思議がってか薄っすらと目を開けた。
「僕が今お守りの魔法をかけたからね。こうやって本当に危ない事があると守ってくれるんだ」
そう言って僕が手をどかすと、矢を引きつけ、その身で防いだブローチがあった。
実際の大きさの矢を引きつける事などはできないが、相手もそれは理解しているはずだ。
…ちょっとロマンチックな話をしたい気分だったのだ。
少し冷静になると急には恥ずかしくなって彼女の顔が見られなくなる。
目を逸らせばいつの間にか興味深そうにこちらを睨む二人の視線。
僕はもう耐えられなかった。
=========
「それじゃあまたね!」
メグルという男の子は突然走り出すと窓に足をかけた。
一体何をするつもりなのかと私は駆け寄るが、彼はそれよりも先に窓辺から飛び降りる。
「まって!」ここは二階なのに!
私は焦って下を見下ろすが、そこには何事もなかったかのように着地する彼がいた。
そしてこちらに振り向くこともなく走り去る。
その姿を見て私は力が抜けた。
本当に無茶な事をする子だ。
いや、彼の中ではそうでないのかもしれないが、見ているこちらがひやひやする。
と、窓から身を乗り出して大きな声を出した私に、村中から視線が飛んできていることを感じた。
それに気が付いた瞬間プレッシャーで押しつぶされてしまいそうになる。
いや、彼は私に勇気をくれた。それにお守りだってある。
まずは一歩。一歩歩み寄ってみよう。
そうすれば何かが変わるかもしれない。
私は彼から貰ったお守りをギュッと握ると大きく息を吸い込んだ。
「こ、こんにちは…」
殆どの息は抜けてしまったが、ほんの少し、喉に引っかかった勇気が空気を震わせた。
私は消え入りそうな声と共に窓の縁へ沈んでいく。
完全に外から姿が見えなくなると私はやっと息をする事ができた。
大丈夫、怖くない。大丈夫、怖くない。
私はお守りを強く握り、呼吸を整える事で何とか正気を保てた。
あんなに大勢の人に見られた。
それに声もかけてしまったんだ。
…でも何があってもこのお守りが守ってくれる。
だから大丈夫なんだ。
…落ち着いて考えてみれば、これだけの事をしたんだからもう怖い事なんてないんじゃないかと思う。
思うだけで怖いことには変わりないのだが…。
彼の事を思えば…多分、頑張れる。
「お姉ちゃん。私お祭り行く」
私の決断に、お姉ちゃんは呆けた声で「あぁ」と返す。
そして、少し時間を空けると、思い出したかのように「行くか」と腰を上げた。
それに釣られたようにコランさんも立ち上がる。
村に出るのはいつ振りだろうか。
この家に来た時、以来かも知れない。
玄関に出ると足や手が震えて中々うまく靴が履けなかった。
「大丈夫か?…無理しなくてもいいんだぞ?」
お姉ちゃんはそう言うと心配そうにこちらを見つめてくる。
しかしこれは初めて私自身で決めた事なのだ。
絶対にやりきる。
私は自分に言い聞かせるように「大丈夫」と返事を返す。
岩の様に重たい扉を少しずつ開く。
その隙間からは今まで拒んできた優しい日の光が流れ込んできた。
祭りの喧騒が私を奮い立たせる。
「よし…」
こうして私はまた一歩、新しい世界に踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる