Grow 〜異世界群像成長譚〜

おっさん。

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おいで。早く、おいで…。

第129話 ベルガモット of view

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 「おい、なんでコランは村に行こうと思ったんだよ」
 村へ向かう道すがら、僕は、急に村に行くと言い出したコランに突っかかる。
 
 「何でって……。困った人は助けなきゃでしょ?」
 さも、当然の事のように呟くコラン。
 
 「いや、そうだが……。命までかける義理があるか?」
 俺達はまだ、村との繋がりが深いから分かる。
 しかし、コランはその限りではないだろう。村に対する思い入れも、それ程ないはずだ。
 
 「義理か……。義理ねぇ……。まぁ、これは、誰かの為と言うよりも、自分がしたくてしてることだからさ!他人がどうとか、義理がどうとかは、関係ないかも!」
 少し考えようとしたのか、頭を悩ませたが、最後には気の抜けた答えが返ってくる
 
 「何だよそれ……。こんな事言ったらあれだけど、リリーだって戻ってくるかもしれねぇんだぞ?」
 僕はコランの前ではタブーとなっていたリリーの話を持ち出す。
 一緒に横を歩いていたソフウィンドと、リビアも、俺がその名前を出した事で、驚いている。

 だが、僕はタブーをおかしてでも、その話を聞いておかなければならなかった。
 コランを止める理由が欲しかった。
 
 「ん~……。多分、リリーは戻ってこないよ」
 皆が思っていても、口に出さなかった事を、事も無さげに口に出すコラン。
 質問をした俺までもが、呆気に取られてしまった。
 
 「リリーはね。多分、あの子の中の課題が全部終わるまで帰って来ない」
 あの子の中の課題とは、いったい何なのだろうか?
 コランはそれを知っているのだろうか?
 
 「んじゃあ、その課題とやらが全部終わらなかったらどうなるんだよ……」
 僕は怖いもの見たさで聞いてみる。
 
 「一生帰って来ないだろうね」
 コランはこちらに顔を向けると、苦笑した。
 本当に苦く苦しい笑みだった。
 
 「でもね、私、お姉ちゃんだから、いつでも妹が帰ってきて良い様に、しっかりと、良いお姉ちゃんで居続けないといけないんだ」
 すぐに、進行方向へ視線を戻すコラン。
 
 「誰も見捨てない。強いお姉ちゃんで居ないといけないの」
 なんだそれは。そんなの、帰ってくるかも分からないのに……。
 
 「そんなの、呪いだ……」
 何を考えたわけじゃない。僕の口は自然と動いていた。
 
 「呪いじゃないよ……。おまじない。リリーが無事、帰ってきますようにって言う、おまじない」
 コランは走りながらも、胸の前で両手を合わせた。
 ……彼女はきっと、ここの誰よりも、大人なのかもしれない。

 自身の出来る事を考えて、雰囲気を明るくしたり、戦闘の訓練をしたり、こうやって人助けに乗り出したり……。
 いつも全力で、自身のやるべき事に向き合っている。
 
 「そう言うベルは何で参加したの?」
 いつもの明るい表情ではない、慈愛に満ちた、優しい表情で問いかけてくる彼女。
 
 僕が、この戦いに参加する理由……。
 参加表明をしたのは、確かに勢いもあった。
 
 あの村にはいつもお世話になっているし、助けられる物なら助けたい。……でも、命を懸けるほどの物でもないんだ……。
 
 きっと、僕は、こいつらが参加すると言わなければ、参加しなかっただろう。
 別に見栄を張って、参加したわけではない。リビアの挑発に乗った訳でもない。
 僕はただ……。
 
 「こんな事を言ったらいけないんだろうけど、正直、僕は村がどうなろうと、知ったこっちゃないんだ。……ただ、皆と、皆とずっと仲良く暮らしていきたいだけなんだ……」
 
 でも、僕の声じゃ、僕の意思なんかじゃ、皆を止められない。
 その事はなんとなく分かっていた。
 だったら、僕は……。いや、俺は……。
 
 「その為なら俺は、命だって張るよ。皆が戦うと言うなら、俺だって戦う!皆がただ傷ついて行くのなんて、見てられないんだ!」
 初めて、俺は魂から声を絞り出した気がした。
 
 その回答を聞いて、コランは嬉しそうに「そう」と、だけ答えた。
 いつものアホなコランからは考える事も出来ない、悟ったような、全てを包み込むような、大人の優しい笑みだった。
 
 「わ、私も同じです!お姉さまの行く所になら、こいつらがどうなろうと、捨ておいてついて行きます!」
 私も!私も!と、透かさず、コランに抱き着くリビア。
 コランは、はいはい、と言った風に、その頭を撫でた。
 
 「ソフウィンドも一緒ね」
 ソフィーと呼ばずに、しっかりと名前で呼ぶコラン。
 突然、優しい笑みで笑いかけられた、ソフウィンドはたじろぎながらも「お、おう」と、小さく答えた。
 
 「じゃあ、皆、それぞれ、守りたい者の為に、と言う事で!お~!」
 コランは進行方向に向き返ると、いつもの元気な声で、叫ぶように号令をかける。
 
 「お、おぅ!」
 「お~!ですわ!」
 「お~!」
 燃える教会を目印に、走る俺達。
 村はもう、すぐそこだった。
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