異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

文字の大きさ
7 / 172
目覚め

第6話

しおりを挟む
 (……まだか?)
 隊列を歩いて、数十分。この軽い体は、疲れ知らずだが、集中して、匂いを追っているせいか、心が疲れて来た。
 
 加えて、視界に入る動く物。仲間や、葉の動きなど、兎に角、動く物に意識が取られて、イライラするのだ。

 視野角も広く、首を回さなくとも、ほぼ背後まで見えると言う親切設計。
 勿論、まぶたの無い俺には、目を閉じる事も出来ない。
 無駄に広い、ボヤけた視界の中で、常に、何かが動き続けているのだ。

 そんな物は、どうでも良い。
 頭の中では、分かっているのだが、どうしても、気を取られてしまう。
 ……これが、野生の本能と言う奴なのだろうか……。

 考えてみれば、今までも、この生物の本能に振り回されている節はあった。
 そして、大抵の場合、本能には逆らえないのだ。
 
 (はぁ……)
 俺はため息を吐きながらも、仕方ないと割り切って、隊列の香りを追う。
 すると、これまた、甘美な香りが漂って来た。
 
 (獲物だ!)
 俺は飛び付きたくなるが、隊列を乱して、皆をパニックに、させる訳には行かない。
 
 逸る気持ちを抑え、隊列に従い、獲物の下まで歩く。
 一体、どんな味がするのか、楽しみで、堪らない。
 
 (でっけぇー……)
 俺が獲物の下までたどり着くと、そこには、巨大な毛皮の山があった。
 きっと、ウサギ程度の大きさなのだろうが、今の俺には、食べ切れないご馳走に見える。
 
 獲物の周辺に来ると、隊列はばらけ、思い思いに、獲物に噛み付き始めた。
 俺は待ってました。と、言わんばかりに獲物に噛み付く。

 (……って、流石に毛皮を噛み千切るのは無理か)
 俺は、食べれる場所がないかと、獲物の周囲を回る。
 すると、他の動物が貪った痕であろう、毛皮の剥げた、肉が剥き出しになっている部分を探り当てた。
 
 (ヒャッホゥ!)
 毛皮山に開いた洞窟に飛び込む俺。
 中には、肉塊と言う、黄金が約束されているはずだ。

 (……暗いな)
 中は、思った以上に暗かったが、全く光の届かない巣の中に比べれば、マシだった。
 それに、外に比べれば、暖かい。食べ物も無尽蔵だし、一層の事、この肉塊を巣にした方が……。
 
 そんなことを考えながら、毛皮の洞窟を進んでいると、奇妙な音や匂いを感じ始めた。

 俺は本能で警戒する。この匂いは、音は、振動は、危険だと。
 
 しかし、獲物は諦め切れない。それに、この音の正体も気になる。

 好奇心と食欲で、なんとか、本能に打ち勝った俺は、先ほどまでに比べて、ゆっくりと、慎重に歩き出す。
 
 その後ろ姿は、さながら、ダンジョンに挑む、冒険家の様だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...