異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

文字の大きさ
10 / 172
目覚め

第9話

しおりを挟む
 (……さぶぃ……)
 目が覚めた俺は、辺りを見回ろうと、早速体を動かそうとする。
 
 (また、これかよ……)
 体に上手く力が入らずに、辺りをのた打ち回る俺。
 もう、幼虫時代は言わずもがな、死ぬ寸前と言い、羽化したての頃と言い、とことん、この地面を這いつくばるスタイルに、縁があるらしい。
 
 (……よいしょっと…)
 違った点で言えば、今回は、時間をかけてでも、一人で起き上がる事が出来た点であろうか。
 
 (俺も……。成長出来てるのかな……)
 自分で思っておきながら、冷静になると、こっぱずかしくなって、触覚を舐める。
 
 (さて、皆はっと……)
 何とか、落ち着くと、気を紛らわす意味も含めて、辺りを見回す。
 まぁ、そこら中に、気配と匂いを感じるので、見回すまでもないのだが。そこは、気分の問題である。
 
 (………あれ?俺って、保育室で寝てたよな?)
 周りに子どもたちの匂いがしない。
 まぁ、気温や湿度の変化で、部屋を移動する事はよくあるし、俺が別の場所に、運ばれただけかもしれない。
 
 俺は歩き出すと、保育室を探した。
 探しに探した。

 一部屋、一部屋、確認するごとに、足がく。 
 結果は、なんとなく分かっていた。
 しかし、そうせずには居られなかったのだ。
 
 (…………)
 部屋をすべて回った俺は、食糧庫へ向かう。
 中身は空っぽだった。
 
 (……飯、探しに行くか……)
 俺は、地上に向かって歩いていく。
 お腹がペコペコだったのだ。
 
 外に出ると、成虫である仲間の残骸が、無造作に捨てられていた。
 冬眠前にも、病死したり、衰弱死した者の残骸が、多少は落ちていた。
 しかし、これ程の量では無かっただろう。

 こいつらも、冬場の寒さと、飢餓のせいで、衰弱死したのだろうか?
 ……まさか、生きている成虫にまで、手にかける様な事は……。
 
 しかし、俺は、その残骸の香りをいだ時、一瞬、美味そうに感じてしまった。

 (……俺も、腹が減っていて、あいつらが目の前に居たら……)
 頭を振って、不穏な考えを掻き消す。
 
 (さっぶ……)
 外に出ると、冷たい風が、頭を冷やしてくれた。
 
 (……皆が起きる前に、餌、持ってこないとな)
 これ以上の共食いは嫌だ。
 未だ、寒空が広がる、草原の下。俺は、当ても無く、彷徨さまよい始める。

 数十分歩いても、餌は見つからない。それは、そうだ、そんな簡単に見つかるなら、皆飢えてなんて、いないだろう。
 
 (おいおい、勘弁してくれよな……)
 冷たい空気に反応し、再び、冬眠に入ろうとしているのか、体に力が入らなくなってきた。
 ただでさえ空腹で、力が入らないと言うのに、冗談が過ぎる。

 腹が減って、ふらふらの俺は、傍から見たら、弱ってるように見えるだろうか。
 腹が減っている俺は、餌の匂いが溢れる、巣の中で、耐える事ができるだろうか。

 ……俺はどうしても、手ぶらで家に帰るつもりにはなれなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

処理中です...