異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

文字の大きさ
19 / 172
旅立ち

第18話

しおりを挟む
 (……まだまだだな……)
 巣を離れて暫く、俺は、カゲロウモドキを狩った木を目指していた。

 理由は簡単。あの場所なら、食糧に困らなそうだからだ。
 それに、あの木には、何も住んでいないうろもあった。
 あそこなら高さもあり、安全に暮らせるだろう。
 
 ……だが、もう、日が傾き始めていた。
 このまま日が沈み、気温が下がれば、体が動かなくなる恐れがある。
 
 かと言って、クリナがいる以上、ペースを速める訳にもいかない。
 正直、俺自身も、一日で多くのイベントが起こりすぎて、へとへとだ。
 そもそも、こちらは冬眠明けで、基本、在宅ワーカーなのだ。勘弁して欲しい。
 
 (あぁっ!!)
 少し意識を逸らした隙に、クリナがふらふらと歩いて行ってしまう。
 
 急いで後を追うと、再び、クリナの横に付く。
 すると、心なしか、クリナが安心したように、すり寄って来たような気がした。
 ……まぁ、すぐふらふらと歩き出してしまうので、気のせいなのだろうが。
 
 そうこうしている内に、日は沈み切り、辺りの気温は、グンと低下する。
 
 (……この辺りで、今日は休むか……)
 現在は、森の中。
 辺りに枯葉が山積みになっており、進み難さから、疲労もピークに達していた。
 そもそも、俺達は疲労に対する感覚が鈍い。そろそろ休んでおかないと、下手をすれば、エネルギー不足で動けなくなる。

 生憎、この枯葉達、移動には邪魔だが、冷たい夜風を防ぎ、俺達が隠れるには十分な場所を提供してくれる。
 つまりは、どこでも休み放題なのだ。
 
 (あとは、クリナをどうするかだな……)
 目を離すと、すぐにふらふらと歩いて行ってしまう、クリナ。
 彼女をどうにかしない事には、落ち着いて休憩も取れない。

 ……それに、彼女にも、相当疲労は溜まっているはずだ。俺が制御してあげないと、今の不安定な彼女では、それこそ、体が動かなくなるまで、ソワソワし続けるだろう。
 
 俺は落ち着きのない、彼女の首根っこに、軽く噛み付いた。
 動きを制限された彼女が、少し怒ったように、こちらを向いて口をパクパクさせる。しかし、もう慣れたのか、本気の抵抗ではないようで……。少し可愛い。
 
 (違う違う!)
 俺は邪念を振り払うと、改めて、どうすれば、彼女を引き留められるか考える。
 考えに考える。どうすれば…。どうすれば……。
 
 あ、分かった、彼女のパクパクと動く口が、幼虫のおねだりに見えるから、可愛いんだ。

 (…………)
 あまりに答えが出なかったが為に、現実逃避をしてしまった。
 
 しかし、考えてみれば、彼女も今日一日は食事をしていないはずだ。
 彼女のお腹のふくらみを見ても、中はスカスカ、ぺったんこだった。

 俺は彼女を解放すると、貯蓄用の胃から、噛み砕いたアブラムシモドキを吐き出す。
 そして、そのまま、彼女の口へ無理やり押し付けた。
 
 初めの内は嫌がっていた物の、それが食べ物だと分かると、口を動かし始める、クリナ。口移しで、食べ物を食べる彼女は、本当に可愛いかった。
 
 (…………)
 見惚れていると、もっともっとと、俺の口元をまさぐってくる彼女。
 俺はすぐさま、追加の貯蓄分を吐き出す。
 
 彼女は俺の貯蓄用の胃を空っぽにすると、やっと落ち着きを取り戻した。
 案外、混乱していたと言うよりは、最初から、お腹が減っていただけなのかもしれない。
 
 暫くすると、うつらうつら、し始める彼女。

 (………はっ…)
 そんな彼女を見て、気が抜けたのか、急に意識が遠のいた。
 しかし、俺が先に眠る訳には行かない。

 そこからは、ただの我慢比べ。
 飛びかける意識を何とか繋ぎ止め、彼女を見守る。
 
 (……はっ……)
 もう何度目か。飛びかけた意識を引き戻すと、彼女は眠っていた。
 安らかに眠る彼女を横目に、俺はぺったんこになったお腹をさする。
 対照的に、彼女のお腹は、パンパンに膨らんでいた。
 
 (……まぁ、良いんだけどね……)
 苦笑すると、今度こそ意識を手放す。
 その日、俺は可愛い女の子に、物をせびられる、男の気持ちを知った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...