61 / 172
寄生生活
第60話
しおりを挟む
「いけっ!」
俺は木の上に向かって、腕を振るうと、勢いそのまま、手首の下あたりから、糸を飛ばす。
「よし……」
手繰り寄せて、木から離れない事を確認し、手首から、糸を回収しつつ、上へと登る。
「すげぇな……」
いつもリミアが行っているのを見て、羨ましいと思っていたのである。
「ほらよ」
俺は木の上から、適当な木の実を取って下に投げる。
落ちて来た食べ物を見て、ウサギがのそのそと移動し始めた。
俺がいなくなり、体が軽くなろうと、もう、跳ねる気すらなくなってしまったらしい。
「ここからなら……」
俺はリミアの中にいる内、記憶や感覚を共有していた為、リミアが行える、ある程度の事なら、模倣できる。
俺は、背中に意識を集中に、圧縮していた糸を解きながら、羽化する蛹の様に、背中を開く。
その間から、糸を伸ばしていき、リミアの記憶をもとに、翼を生やした。
「行くぞ!!」
俺は意を決して飛んだ。
無理に羽ばたこうとせずに、バランスを取りながら、空気抵抗を翼全体で受ける感じ……。
「と、飛んだ!っと!うわぁぁぁぁ!」
気を緩めた瞬間、下に落ちる俺。
しかし、問題ない、ここでもリミアの生み出した、どんな状態からでもできる着地方法、エアバックならぬ、糸バック!
俺より先に地面に到着した糸の塊が、俺の着地の衝撃を和らげてくれる。
リミアが何度も飛行に失敗したおかげで、落下にも慣れていた為、落ち着いて対処する事が出来た。
……まぁ、その分の恐怖は、俺も体験しているんだけどね。
しかし、飛び方や翼の形状は知っていても、俺とリミアの体では、大きさも形も違うので、若干の微調整は必要のようだ。
糸玉の上から起き上がった俺は、再び木に登り、飛行の練習を繰り返す。
ウサギがあまり動かないおかけで、自由に行動できたのは、良い誤算だった。
練習を続けていると、暗くなり始めることろには、微調整が終わり、何とか、風の少ない、森の中でのみなら、飛び回れるようになった。
小さな容姿も相まって、妖精の様に見えるかもしれない。
いや、虫の羽じゃなくて、鳥の羽だから、天使の方が、近いかも……。
「……暗くなって来たな……」
俺は、糸の中の電気信号で、体内に光を生み出す。
リミアの発光と、同じ原理だが、リミア自身は、この発光を制御できない様だった。
まぁ、糸と違って、自身の体内で起こっている事なので、当然なのかもしれないが。
因みに、リミアは光を消したいとき、光が通り抜けない様、糸で何重にも自身の周りを囲っているらしい。
発光のエネルギーを無駄にしていると思うと、厄介な体質だ。
っと、ウサギがうとうとし始めている。
俺の思考判断に使用している糸は、自身の疲れと言う、眠気の信号を送ってきてはいないが、宿主が寝ると言うなら、そうしよう。
俺は核を残して体を解くと、再びウサギの周りに纏わりつき、硬化する。
これなら、オオカミに襲われようと、牙や爪を通さず、夜の寒さからも、主を守れる。
(明日は、どうするかなぁ……)
そろそろ、この生活も、飽きて来た。
それに、今日動いて分かったのだが、俺が動き回ると、主の体力の減りが激しい。
(新しく、大型の主でも、探すか……)
俺は今の主に負担を掛けない為にも、今日は早々に意識を手放した。
俺は木の上に向かって、腕を振るうと、勢いそのまま、手首の下あたりから、糸を飛ばす。
「よし……」
手繰り寄せて、木から離れない事を確認し、手首から、糸を回収しつつ、上へと登る。
「すげぇな……」
いつもリミアが行っているのを見て、羨ましいと思っていたのである。
「ほらよ」
俺は木の上から、適当な木の実を取って下に投げる。
落ちて来た食べ物を見て、ウサギがのそのそと移動し始めた。
俺がいなくなり、体が軽くなろうと、もう、跳ねる気すらなくなってしまったらしい。
「ここからなら……」
俺はリミアの中にいる内、記憶や感覚を共有していた為、リミアが行える、ある程度の事なら、模倣できる。
俺は、背中に意識を集中に、圧縮していた糸を解きながら、羽化する蛹の様に、背中を開く。
その間から、糸を伸ばしていき、リミアの記憶をもとに、翼を生やした。
「行くぞ!!」
俺は意を決して飛んだ。
無理に羽ばたこうとせずに、バランスを取りながら、空気抵抗を翼全体で受ける感じ……。
「と、飛んだ!っと!うわぁぁぁぁ!」
気を緩めた瞬間、下に落ちる俺。
しかし、問題ない、ここでもリミアの生み出した、どんな状態からでもできる着地方法、エアバックならぬ、糸バック!
俺より先に地面に到着した糸の塊が、俺の着地の衝撃を和らげてくれる。
リミアが何度も飛行に失敗したおかげで、落下にも慣れていた為、落ち着いて対処する事が出来た。
……まぁ、その分の恐怖は、俺も体験しているんだけどね。
しかし、飛び方や翼の形状は知っていても、俺とリミアの体では、大きさも形も違うので、若干の微調整は必要のようだ。
糸玉の上から起き上がった俺は、再び木に登り、飛行の練習を繰り返す。
ウサギがあまり動かないおかけで、自由に行動できたのは、良い誤算だった。
練習を続けていると、暗くなり始めることろには、微調整が終わり、何とか、風の少ない、森の中でのみなら、飛び回れるようになった。
小さな容姿も相まって、妖精の様に見えるかもしれない。
いや、虫の羽じゃなくて、鳥の羽だから、天使の方が、近いかも……。
「……暗くなって来たな……」
俺は、糸の中の電気信号で、体内に光を生み出す。
リミアの発光と、同じ原理だが、リミア自身は、この発光を制御できない様だった。
まぁ、糸と違って、自身の体内で起こっている事なので、当然なのかもしれないが。
因みに、リミアは光を消したいとき、光が通り抜けない様、糸で何重にも自身の周りを囲っているらしい。
発光のエネルギーを無駄にしていると思うと、厄介な体質だ。
っと、ウサギがうとうとし始めている。
俺の思考判断に使用している糸は、自身の疲れと言う、眠気の信号を送ってきてはいないが、宿主が寝ると言うなら、そうしよう。
俺は核を残して体を解くと、再びウサギの周りに纏わりつき、硬化する。
これなら、オオカミに襲われようと、牙や爪を通さず、夜の寒さからも、主を守れる。
(明日は、どうするかなぁ……)
そろそろ、この生活も、飽きて来た。
それに、今日動いて分かったのだが、俺が動き回ると、主の体力の減りが激しい。
(新しく、大型の主でも、探すか……)
俺は今の主に負担を掛けない為にも、今日は早々に意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる