異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

文字の大きさ
89 / 172
帰還

第88話

しおりを挟む
 (な、何でも、言う事を聞くんですか?)
 俺の、何でも言う事を聞く。と言う言葉に食いついたコグモ。
 俺は、この機を逃すまいと、必死に食いついた。

 (あぁ!何でもする!何でもするぞ!お風呂洗いから、食器洗いまで、何でもする!)
 懇願する俺に、考え込むコグモ。
 
 「二人とも?どうかした?」
 リミアに話しかけられたショックで、俺がコグモに施していた拘束が解ける。
 
 (頼む!上手く誤魔化してくれ!)
 我ながら無茶ぶりだとは思うし、誤魔化す義理も無いと思うが、もう、そうお願いするしかなかった。
 
 「いえ!ルリ様が、何でもお願いを聞いてくれると言うので、下級兵や新兵の訓練をお願いしようかと考えていたんです!お嬢様と一緒で、ルリ様なら、糸で調教ができますから!」
 屈託のない笑顔で、ギリギリ嘘じゃないラインを突くコグモ。
 俺が相手ならば、絶対に気が付かない。
 
 「……そう。なんで、何でもお願いを聞く気になったのかは、知らないけど……」
 不審そうに、俺を見つめるリミア。
 
 「いやぁ……。よく考えてみれば、ここまで俺が帰ってこられたのは、コグモのおかげだし……。何かお返ししないとなぁ……って」
 俺もそれっぽい雰囲気で、それっぽい理由を呟いて見せる。
 我ながら、最高の演技だった。
 
 「……なるほど。確かに、それは一理ある」
 俺の言葉に、納得したように頷くリミア。
 
 「分かった。ルリの所有権。しばらくコグモに預ける」
 俺の所有権が、いつ俺からリミアに移行したのかは分からないが、この際聞かなかった事にしよう。
 
 「でも、夜は連れて帰ってきて」
 優しい、妖艶な笑みを湛え、俺の頬を撫でて来るリミア。
 全力で首を横に振りたかったが、ここで全てを台無しにする訳にはいかない。
 俺は人形になったつもりで、じっと耐えた。
 
 「承知いたしました。ありがとうございます。お嬢様」
 コグモはリミアにお礼を言うと「では、失礼致します」と、言って、俺を抱きかかえたまま、部屋出た。
 
 コツコツコツ……。
 魔王の部屋が遠ざかって行く。
 俺を救い出してくれる勇者はコグモだったらしい。
 
 シュルルルルル
 コグモは糸を使って吹き抜けの上下通路を下に降りて行く。
 ……ここまでくれば大丈夫だろう。
 
 「助かったよ、コグモ!お前は俺の救世主だ!」
 俺は思わずコグモに抱き着く。
 
 「ちょっと、どこ触ってるんですか……!……はぁ、体液を吸われていると思うと、この程度の事では、怒る気にもなりません……」
 疲れたように溜息を吐くコグモ。
 
 「まぁ、少なくとも、今日一日は、私に付き合って貰いますからね」
 俺はコグモに抱えられ、地下への道を下って行く。
 家の娘も、これぐらい穏やかな子なら良かったのに……。
 今度は、俺が溜息を吐く番だった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...