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帰還
第111話
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「おはよ!コグモお姉ちゃん!」
廊下に出てしばらく、リミアの部屋に向かって来る途中だったであろう、コグモに出会った。
……因みに、今、コグモに向かって挨拶したのは、リミアだ。
俺に大半の糸を譲渡し、20cm大に縮んだリミアだ。
そして俺は、その糸で、現在40cm程の身長になっている。
しかも、中身がしっかり詰まっている状態だと言うのだから、俺の糸の圧縮が、リミアの糸に比べて、どれだけ甘いのかが分かる。
「……ええと、おはようございます」
状況を飲み込めないのか、目を白黒させ、説明を求める様に、俺の顔を見て来た。
「あははっ……。この身長は、リミアが自分の糸を俺にくれたせいなんだが……」
それ以外は分からない。
「今日はね!パパと皆と、ピクニックなんだ!」
子どもの様に無邪気にはしゃぐ、リミア。
「そ、そうなんですか?」
コグモの方が、身長が高くなってしまった為に、しゃがみ込んで、リミアに視線を合わせる彼女。
その表情は困惑の一文字だった。
しゃがんだ状態から、ちらちらと俺を見て来るコグモ。
俺は静かに首を横に振った。
俺にも、リミアが幼児後退してしまった原因は分からないのだ。
……まぁ、ただの演技だと思うので、その内、戻るとは思うが……。
「どうしたのパパ?」
振り返ったリミアは、自分を見つめるように見下ろしていた俺を見て、不思議そうに話しかけて来る。
「いや、何でもないよ」
先程の変な空気を壊す為に演技を続けてくれているなら、俺もそれに付き合うのが義理だろう。
俺は笑顔を作ると、小さくなったリミアの頭を、腰を曲げて、優しく撫でる。
しかし、先程の交尾うんぬんの話は、何だったのだろうか?
発情期はもう過ぎたはずだし、ドSの本能が刺激されただけか?
……それとも……。
「パパ!早く行こ!」
俺の片腕を両手で掴んで引っ張ってくるリミア。
「お、おう!」
俺はそれに引っ張られるようにして、走り出す。
「じゃ、じゃあ、外で待ってるからな!」
俺はポカンとしたまま、その場に残されたコグモに声を掛けつつ、リミアの後を追う。
身長差のせいで、何度も転びそうになる俺。
「速い!速いって!ストップ!ストップ!」
俺の声に、リミアは「は~い」と元気な声を上げて、止まってくれた。
「ふぅ……。危なかった……」
俺は何とか落ち着きを取り戻し、彼女の歩幅に合わせると、再び歩き出す。
「…………」
俺の手を握って、前を見ながら、一生懸命に速足で歩くリミア。
まるで、ピクニックが楽しみで、待ちきれない子どもの様だった。
その小さくなった身長も相まって、本当の子どもに見える。
……俺は、本当の親に見えるだろうか?
考えてみれば、リミアがこんなにも子どもらしく甘えて来てくれたのは初めてだ。
俺は、親らしい事なんて、何も出来ていないと言うのに……。
いや、リミアがやっと甘えてくれたんだ、俺も親らしくなれるよう、頑張ろう!
「……?」
リミアの小さな手を、ギュッと握った俺を、彼女は不思議そうな目で見上げていた。
廊下に出てしばらく、リミアの部屋に向かって来る途中だったであろう、コグモに出会った。
……因みに、今、コグモに向かって挨拶したのは、リミアだ。
俺に大半の糸を譲渡し、20cm大に縮んだリミアだ。
そして俺は、その糸で、現在40cm程の身長になっている。
しかも、中身がしっかり詰まっている状態だと言うのだから、俺の糸の圧縮が、リミアの糸に比べて、どれだけ甘いのかが分かる。
「……ええと、おはようございます」
状況を飲み込めないのか、目を白黒させ、説明を求める様に、俺の顔を見て来た。
「あははっ……。この身長は、リミアが自分の糸を俺にくれたせいなんだが……」
それ以外は分からない。
「今日はね!パパと皆と、ピクニックなんだ!」
子どもの様に無邪気にはしゃぐ、リミア。
「そ、そうなんですか?」
コグモの方が、身長が高くなってしまった為に、しゃがみ込んで、リミアに視線を合わせる彼女。
その表情は困惑の一文字だった。
しゃがんだ状態から、ちらちらと俺を見て来るコグモ。
俺は静かに首を横に振った。
俺にも、リミアが幼児後退してしまった原因は分からないのだ。
……まぁ、ただの演技だと思うので、その内、戻るとは思うが……。
「どうしたのパパ?」
振り返ったリミアは、自分を見つめるように見下ろしていた俺を見て、不思議そうに話しかけて来る。
「いや、何でもないよ」
先程の変な空気を壊す為に演技を続けてくれているなら、俺もそれに付き合うのが義理だろう。
俺は笑顔を作ると、小さくなったリミアの頭を、腰を曲げて、優しく撫でる。
しかし、先程の交尾うんぬんの話は、何だったのだろうか?
発情期はもう過ぎたはずだし、ドSの本能が刺激されただけか?
……それとも……。
「パパ!早く行こ!」
俺の片腕を両手で掴んで引っ張ってくるリミア。
「お、おう!」
俺はそれに引っ張られるようにして、走り出す。
「じゃ、じゃあ、外で待ってるからな!」
俺はポカンとしたまま、その場に残されたコグモに声を掛けつつ、リミアの後を追う。
身長差のせいで、何度も転びそうになる俺。
「速い!速いって!ストップ!ストップ!」
俺の声に、リミアは「は~い」と元気な声を上げて、止まってくれた。
「ふぅ……。危なかった……」
俺は何とか落ち着きを取り戻し、彼女の歩幅に合わせると、再び歩き出す。
「…………」
俺の手を握って、前を見ながら、一生懸命に速足で歩くリミア。
まるで、ピクニックが楽しみで、待ちきれない子どもの様だった。
その小さくなった身長も相まって、本当の子どもに見える。
……俺は、本当の親に見えるだろうか?
考えてみれば、リミアがこんなにも子どもらしく甘えて来てくれたのは初めてだ。
俺は、親らしい事なんて、何も出来ていないと言うのに……。
いや、リミアがやっと甘えてくれたんだ、俺も親らしくなれるよう、頑張ろう!
「……?」
リミアの小さな手を、ギュッと握った俺を、彼女は不思議そうな目で見上げていた。
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