異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

文字の大きさ
114 / 172
帰還

第113話

しおりを挟む
 「キャハハハッ!いっけぇ!ゴブリン!」
 河原に来ていた俺達。
 リミアはゴブリンの上に乗り、楽しそうに指示を出している。

 まぁ、糸で操っているという訳ではなく、ゴブリンも楽しそうにしているので、俺はそれを日陰から見守っていた。
 
 ウサギは日課だと言う水浴びをしている。
 夏だから、暑いと言うのもあるが、全身に毛が生えていると、汚れが付いたり、虫が付いたりで大変らしい。
 
 「シャァ……」
 俺の横では大ムカデが将棋の盤を見つめて、頭を悩ませていた。
 因みに相手はコトリ。そして、その盤はもう詰んでいるぞ、大ムカデよ。
 
 「……平和ですね」
 俺の横に腰かけていたコグモが、リミアたちを見つめながら、呟く。
 
 「平和だな……」
 俺も、それに落ち着いた声で答えた。
 
 「……お嬢様は、一体、どうされたのですか?」
 自然な雰囲気で話題を振ってくるコグモ。
 強く聞いてこない分、はぐらかすのも、何か違う気がした。
 
 「実はな……。俺が、お前を好きだって事が、バレた」
 俺が正直に答えると、コグモは特に焦る事なく「なるほど……」と、呟く。
 
 「それから、あいつがおかしくなっちまったんだ。……まぁ、今の方が良いし、多分、気まずくならない為の演技だと思うけどな」
 俺の言葉に、コグモは「そうですか……」と、相槌あいづちを打った。

 「………」
 静寂の中、川の流れる音と、遠くで、リミアたちのはしゃぐ声。
 心地よい風が頬を撫でる。
 ……このまま、コグモに寄り掛かっても、怒られないかな……。
 
 「……それだけ、ですか?」
 急にこちらを向いて、質問してくるコグモ。
 
 「そ、それだけって?」
 よこしまな事を考えていた俺は少し焦って答える。
 
 「お嬢様、他には何か、おっしゃってませんでしたか?」
 あ、焦った、その話か……。
 どうやら、まだその話題が続いていたらしい。
 
 「そうだな……。後は、おかしくなる寸前に、”なんで、私だって……”って、言っていた気がするな……」
 あれは、何だったのだろうか?
 俺をコグモに取られそうになった嫉妬だったのだろうか?

 ……全く。別に、好きな人ができたからって、子どもを捨てる訳が無いだろうに。
 いや、それが分かっているからこそ、子どもらしく振舞い始めたのかもしれないな。
 そう思うと、親として信頼されているようで、少し嬉しくなる。
 
 「そう、ですか……」
 しかし、俺の明るい思考とは真逆に、深刻そうな表情で呟くコグモ。
 
 「なんだ?何かやばい事でもあったのか?」
 コグモに詰め寄りながら、少し真剣に、問う俺。
 
 「い、いえ……。お嬢様がそれで良いと言うのであれば、今のままでも……」
 コグモにしては珍しく、はっきりとしない答えを返すと「私も遊んできます!」と言って、リミアたちの方に駆けて行ってしまった。
 
 「お嬢様~!ゴブリンさ~ん!待ってください~!」
 「捕まるな~!逃げろ~!」
 遠くで追いかけっこを始める3人。
 
 先程のコグモの態度は何か引っかかったが……。

 「まぁ、良いか」
 俺は、思考を放棄すると、ただ静かに、この居心地の良い空気に浸りこんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...