異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

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帰還

第115話

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 「ルリ様は、お嬢様から多量の糸を頂いたと言いましたよね?」
 真剣な表情で、確かめる様に、訊ねて来るコグモ。
 
 「あ、あぁ……」
 俺は、その雰囲気に気圧されながらも、答えを返す。
 
 「もしかして、その糸を受け取った途端に、お嬢様は、こうなられたのではないですか?」
 その探るような質問に、俺は当時の事を思い出す。
 
 「た、確かに、俺に糸を渡すと言って、自身から糸を切り離した瞬間に、こうなった……」
 あの状況を見ていない、俺すらも気に留めていなかった事実を言い当てると言う事は、これから繰り広げられるであろう、彼女の推測が正しい事を予感させる。
 
 「以前ルリ様は、リミア様の脳から、糸の中に自身を分離して、体を離れたと、言っていましたよね?」
 
 「あぁ、確かにそうだ。ただ、それは俺が行った事じゃない。リミアは気付いていなかった見たいだが、俺にはしっかりと、俺と言う存在が、リミア自身の意志によって、切り離されて行くのを感じたんだ」
 
 俺が話していなかった、補足の説明を入れる。
 俺の話を聞いたコグモは「なるほど……」と、小さく呟くき、表情をより、険しくする。
 どうやら、彼女の中の仮説が、より、真実味を帯びたらしい。
 
 「つまり、お嬢様は自身の脳から、無意識とはいえ、記憶や意識を、糸を通して分離できると言う事……。そして、お嬢様の変異は、自身で糸を切断なされた際に起こっている……」
 そこまで聞けば、馬鹿な俺でも、彼女の言いたい事が分かって来た。
 
 「なんだ?つまり、俺に贈った糸の中に、リミアの意識や記憶が含まれているって言うのか?何の目的でだ?」
 俺は、言葉では言い表せないような不安で、声が震えた。
 
 「目的は……。その糸を読む事が、ルリ様には、可能なのでは?」
 リミアの切り捨てた記憶や感情を読めと言うのか?
 そんな事をして良いのか?

 ……でも、しなければ、それが真実であるかどうかも、まして、真実であったとして、この事態を収拾する事すら出来ないだろう。
 
 「わ、分かった、出来るかどうかは分からないが、試してみる」
 俺は慎重に、リミアのくれた糸を読み上げて行く。
 どの部分に記憶があるかは分からない為、それなりに時間はかかりそうだった。
 
 「……先ほども言いましたが、そこに隠されている、お嬢様の感情が、どのような物でも……」
 その先を彼女に言わせるわけにはいかない。
 
 「あぁ、受け入れるさ」
 俺のその返事を聞いて、彼女は安心したのか、いつもの笑顔を零してくれる。
 ……しかし、それを気に留められるほど、俺の心には余裕が無かった。
 
 「すまない。受け取った糸の量が膨大で、記憶を読み取るのには時間がかかりそうなんだ……。今日は二人だけにしてくれるか?」

 俺の言葉に、コグモは優しい声で「はい」と、答えると、地下へ向けて歩き出した。
 今日の仕事が残っているのだろう。
 
 「ヘクチッ!」
 ふと、背中から、可愛いくしゃみが聞こえる。
 まだ夏とは言え、日が沈むと寒くなって来た。

 「……とりあえず、戻るか」
 俺は解読作業を中断すると、リミアを背負い直し、歩き始める。
 正直、俺自身も、気持ちを整理する時間が欲しかった。
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