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崩壊
第126話
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「ヴァワゥ!」
私達は、いつも通り、河原で、それぞれ苦手な道具の扱いを練習していた。
因みに私は投網で、ゴブリンさんは弓である。
「……よし、一人で出来るようになって来たな……」
こちらもいつも通り、クリアに付きっ切りなルリ様。
しかし、そのお陰か、クリアはここ数日で一通りの道具が扱えるようになって来た。
最初は、クリアにルリ様を取られたようで嫉妬していた私だが、最近は耐えられるようになって来た。
慣れて来たと言うのもあるのだろうが、その主な原因は、クリアにそう言う気が、一切見られないと言う点と、本当に、無知で、純粋で、ルリ様に従順な姿が、こちらの毒気を抜いてしまうからだろう。
今の所、クリアの道具の扱いは、弓では私に劣るが、投網なら私が負ける。投げ槍や、投網ではゴブリンさんに劣るが、弓なら勝る。そんなバランス型の構成だ。
「よッス。皆さん。元気してるッスか?」
皆が、それぞれの練習を行っている中、突然、ウサギさんが森の中から現れ、声を掛けて来た。
「よぉ!久しぶりだな!この頃見なかったが、どうしてたんだ?」
それを見たルリ様が、片手を上げながら、ウサギさんへと歩み寄って行く。
「いやぁ、それがッスね。コトリと仲違い中でして、あんまり近寄ると、攻撃してくるんッスよ」
「いやぁ~。参ったッス」と、困ったように笑いながら頭を掻くウサギ。
「どうせ、お前がまたくだらない事でも、やらかしたんだろ」
何も知らないルリ様が、呆れた様な視線で、ウサギを睨む。
あれは、別に、ウサギさんだけが、悪かったわけではないのだが……。
と言うか、コトリはまだ、そんなくだらない事を続けているのか……。
一瞬、ウサギさんが、ちらっと、こちらを見た。
私は、何か悪い事をした気がして、小さく頭を下げる。
「んまぁ、そんなとこッス。それより、差し入れ持って来たッスよ」
特に話を蒸し返す気もないのか、何事も無かったかのように、話を進めるウサギさん。
その背にはウサギさんに支給されていた、糸の縄に括り付けられ、地面を引きずられる、イノシシの姿があった。
「お前、狩りもできるのか?」
意外だと言うように、呟くルリ様。
「ルリ様。ウサギさんは、ダンジョンの拡張工事が止まってからと言う物、毎日、食料を運んできてくれているんですよ。ルリ様に気を遣わせないために、秘密にしているようでしたが……」
私はウサギさんの肩を持つように、ルリ様に説明をした。
本当は初めから伝えておきたかったのだが、今まで、ウサギさんからは、
「ご主人様は、そう言う事、気にするんで、言わなくて良いッス。……今は手一杯見たいッスしね」
と、口止めをされていたのだ。
しかし、こうやって、獲物を持って目の前に現れたと言う事は、もう、隠す必要はなくなったと判断したのだろう。
「そうだったのか……。その……。悪かったな、気を遣わせて……。ありがとう」
どんな顔をしたら良いのか分からない様で、戸惑うように、顔を逸らすルリ様。
しかし、その表情は、自然と嬉しそうに緩んでいた。
私達は、いつも通り、河原で、それぞれ苦手な道具の扱いを練習していた。
因みに私は投網で、ゴブリンさんは弓である。
「……よし、一人で出来るようになって来たな……」
こちらもいつも通り、クリアに付きっ切りなルリ様。
しかし、そのお陰か、クリアはここ数日で一通りの道具が扱えるようになって来た。
最初は、クリアにルリ様を取られたようで嫉妬していた私だが、最近は耐えられるようになって来た。
慣れて来たと言うのもあるのだろうが、その主な原因は、クリアにそう言う気が、一切見られないと言う点と、本当に、無知で、純粋で、ルリ様に従順な姿が、こちらの毒気を抜いてしまうからだろう。
今の所、クリアの道具の扱いは、弓では私に劣るが、投網なら私が負ける。投げ槍や、投網ではゴブリンさんに劣るが、弓なら勝る。そんなバランス型の構成だ。
「よッス。皆さん。元気してるッスか?」
皆が、それぞれの練習を行っている中、突然、ウサギさんが森の中から現れ、声を掛けて来た。
「よぉ!久しぶりだな!この頃見なかったが、どうしてたんだ?」
それを見たルリ様が、片手を上げながら、ウサギさんへと歩み寄って行く。
「いやぁ、それがッスね。コトリと仲違い中でして、あんまり近寄ると、攻撃してくるんッスよ」
「いやぁ~。参ったッス」と、困ったように笑いながら頭を掻くウサギ。
「どうせ、お前がまたくだらない事でも、やらかしたんだろ」
何も知らないルリ様が、呆れた様な視線で、ウサギを睨む。
あれは、別に、ウサギさんだけが、悪かったわけではないのだが……。
と言うか、コトリはまだ、そんなくだらない事を続けているのか……。
一瞬、ウサギさんが、ちらっと、こちらを見た。
私は、何か悪い事をした気がして、小さく頭を下げる。
「んまぁ、そんなとこッス。それより、差し入れ持って来たッスよ」
特に話を蒸し返す気もないのか、何事も無かったかのように、話を進めるウサギさん。
その背にはウサギさんに支給されていた、糸の縄に括り付けられ、地面を引きずられる、イノシシの姿があった。
「お前、狩りもできるのか?」
意外だと言うように、呟くルリ様。
「ルリ様。ウサギさんは、ダンジョンの拡張工事が止まってからと言う物、毎日、食料を運んできてくれているんですよ。ルリ様に気を遣わせないために、秘密にしているようでしたが……」
私はウサギさんの肩を持つように、ルリ様に説明をした。
本当は初めから伝えておきたかったのだが、今まで、ウサギさんからは、
「ご主人様は、そう言う事、気にするんで、言わなくて良いッス。……今は手一杯見たいッスしね」
と、口止めをされていたのだ。
しかし、こうやって、獲物を持って目の前に現れたと言う事は、もう、隠す必要はなくなったと判断したのだろう。
「そうだったのか……。その……。悪かったな、気を遣わせて……。ありがとう」
どんな顔をしたら良いのか分からない様で、戸惑うように、顔を逸らすルリ様。
しかし、その表情は、自然と嬉しそうに緩んでいた。
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