異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

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向上心

第133話

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 ゴクリ……。
 空腹で目の覚めた俺の前には、無防備に眠るコグモの姿があった。
 どうやら、あのまま、眠ってしまったらしい。

 それにしても、良い匂いがする。とても美味しそうだ。
 こんな無防備な姿をさらしていると言う事は、食べて良いって事だよな?
 大丈夫、大丈夫、前みたいにガッつくつもりはないんだ、ちょっと、ちょっとだけ、ちょっとだけ、齧るぐらいなら……。
 
 ゴン!
 何かのぶつかる様な音で、俺は正気に戻った。
 コグモに向かって伸ばしていた腕と髪を引っ込めると、急いでベッドから飛び出る。
 
 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
 今度あんな事をすれば、確実にコグモに見放されるだろう。
 夢で行われている神罰か何かだと思った俺は、床に頭を擦り付け、謝った。
 
 ゴン!ゴツ!ゴン!
 それでもなり続ける物音と、俺の謝罪に、コグモ達が目を覚ます。
 
 「……どうしたんでしゅか……?ルリしゃま……」
 メイド服を着崩した、SSレアな寝起きコグモを見た所で、俺は気付く。これは夢などではない。
 
 「……いや、何か外が騒がしいと思ってな」
 何事も無かったかのように立ち上がり、それっぽい事を口に出す。
 自分でも苦しいとは思ったが、寝ぼけ眼のコグモは「そうにゃんですか……」と言って、再び舟をこぎ始めた。
 
 ゴン!コン!ゴツ!
 そこに再び、異音の嵐。
 
 「るりしゃま、うるしゃいでしゅよ……」
 お寝ぼけコグモを置いて、俺は木製の窓の隙間から、外を見る。
 
 マジかよ、ゴブリンが、あんなに沢山……。
 
 まだ、日が昇りかけて間もない、薄暗闇の中、家の出入り口を取り囲むようにして、陣を取るゴブリン達を目の当たりにする。
 
 ?!あれは、コトリか?!
 
 木の根元を見てみれば、そこにはボロボロになったコトリが転がっていた。
 それを見る限り、どう考えても、友好的な接触ではないだろう。
 
 コトリはしばらく姿が見えなかったが、大ムカデも彼女の所へ出かけたり、ウサギもふらっといなくなって、数日帰って来ない事がザラにあるので、あまり気にしていなかった。
 
 まさか、コトリから喧嘩を売ったのだろうか?
 しかし、それにしたって、この場所がばれるのはおかしい。コトリが別の場所で喧嘩をしたからと言って、この場所が見つかるはずが無いのだ。

 それにコトリも、敵を引き連れて、この場所に帰って来るほど馬鹿ではない。
 となると、奴らは初めから、この場所を知っていたことになるのだが、その場合、目的はなんだ?
 ゴブリン達は無駄な争いを好まないので無かったのか?
 
 ガン!ガン!ゴン!
 ゴブリン達はこの木に向かって石を投げてきている。
 きっと、あのコトリも囮なのだろう。
 
 俺は、一人、地下へと向かう。
 家にいるゴブリンに助けを求める為だ。
 
 彼なら、仲介役として、穏便に物事を運んでくれるかもしれないし、そもそも、彼らの目的が、家に住むゴブリンの奪還と言う事もある。

 俺は状況がさらに悪化する前に、地下にいるゴブリンの元へと急いだ。
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