異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

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向上心

第142話

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 コグモの体内にコアを取り込まれた俺。

 これで俺は、精々、コアから糸が届く、十数メートル圏内でしか、移動できなくなった訳だ。
 
 「……これで、私が殺されない限りは、ルリ様も安全ですね」
 やっと、安心したように、表情を崩す、コグモ。

 ……なるほど、その発想は無かった。
 そうか、俺はコアが壊れなければ死ぬ事は無いから、体から切り離していれば、危険をかえりみず、この体を行使したとしても、死ぬ事は無いのか。
 
 「ルリ様は優しすぎます。優しすぎて、他人の命が自身の命の重さを超えてしまっています」
 そんなつもりはないのだが……。

 しかし、そう言われれば、俺は否定はできないかった。

 匂い違いからクリナを守って、死ぬ未来が決定していたとしても、
 大蜘蛛からリミアを守って、死ぬ未来が決定していたとしても、
 ゴブリン事件の際に、何かの歯車が狂い、争いになって、皆を守る為に、死ぬ未来が決定していたとしても、
 それでも、俺は皆を守ろうとしただろう。
 
 「誰でも、自分の命が一番なハズです……。ルリ様もそうしなければいけません」

 誰だって、自分の命が一番……。
 俺はその言葉を聞いた時、自身の尊厳を守って死んでいった、オオカミを思い出した。

 あぁ、そうか……。あの狼にとっての、命よりも重いソレが、俺にとってのコレなのだ。

 なんだよ……。一番理解できないと思っていた奴が、一番、俺に似ていたなんて、皮肉すぎる。
 
 「……でも、私は、ルリ様のそう言う所、好きです」
 自身の気持ちを確かめる様に、目を瞑って、胸に手を当てるコグモ。
 
 「お嬢様の一件で、ルリ様がおかしくなってしまった時に感じました……。ルリ様には、変わって欲しくありません。でも、死んで欲しくもありません」
 なんだそれは。それは笑えるぐらいに、我儘じゃないか。
 
 「だから、私決めたんです。ルリ様を、どんな手を使っても守るって」
 コグモは俺を真剣な瞳で見つめながら、そう言った。
 
 「……ルリ様は、何もしなくても、私達の事を、全力で守ってくれます。
 なので、ルリ様のコアを私が持てば、私の信じるルリ様は全力で、自身を守らざるを得なくなる訳です」

 妙案でしょう?と言わんばかりに、得意げな顔をするコグモ。
 確かにそれは、相手を本気で大切に思っていなければ、考え付かないような作戦だった。
 
 「……コグモは、思った以上に我儘で、ずる賢い奴だったんだな」
 俺は、呆れる様に、呟く。
 
 「いえいえ、我儘度で言えば、頼んでもいないのに、勝手に体を張って、死にたがるルリ様の方が上ですよ。……残される方の身にもなって下さい」

 ……そうだな。残される方の身は、クリナの件でも、リミアの件でも、痛いほど分かっている。
 
 「……それでも、俺は止めないけどな!」
 俺はキメ顔で、コグモに宣言する。
 
 「もう……。本当に我儘なんですから」
 今度はコグモが呆れる番だった。
 
 お互いが、お互いの我儘で、お互いの価値観や、その命を大切にし合う。
 これ程までに、安心できる関係性があるだろうか?

 ……あぁ、そうか、これが本当の信頼関係と言う物なのかもしれない。
 
 なら、俺はその信頼に応えられる様に、皆を守ると言う、自身の我儘を通せるように、もっと強くならなくちゃな!
 
 俺は更なるやる気の着火剤を得ると、心の炎を燃やす。
 
 そんな俺の服の裾を、クイッ、クイッ、っと、引っ張るクリア。
 
 「……なんだ?」
 俺が視線を向ければ、いつも通り、俺を見上げる虚無の瞳。
 
 「パパ。私も大切?」
 こちらを見上げながら、小首を傾げるクリア。
 ……もしかして、不安なのか?
 
 「あぁ!お前も大切だぞ!」
 俺は不安が消し飛ぶように、その頭を思いっきり撫でてやる。
 
 「私、大切……」
 クリアはそんな俺の行為など気にもしない様に、考え事を始める。

 その姿は、リミアを彷彿ほうふつとさせて……。
 俺は嬉しい反面、ちょっと複雑な気持ちになった。
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