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ふたりでゲーム
「ね、時間ある?」
ピタ、と周囲のざわめきが止まった。
二限目と三限目の間の休み時間は少し長くて、たいていの女の子はおしゃべりに興じていたりして、気の早い男子生徒なんかは早弁とかしてたりする時間。
普段は誰も話しかけてなんか来ないし、僕も小説の続きとか読んで予鈴を待ってたりする。そんな時間のはず。
呼ばれて顔を上げると、そこには。
女神がいた。
冗談でも何でもなく、目の前にいるのは姫神万理沙 (ひめがみ まりさ)、生徒会副会長。通称「女神様」。
二年生なので、一コ上の先輩でもある。
騒ぎが大きくなる前に、立ち上がることにした。
「はい。もちろん」
教室の扉を閉めた途端、どういうことだー、ナニナニいまの、キャー、などの声が後ろから聞こえてきた。
連れていかれた先は屋上だった。
普段は閉鎖されているはずだが、生徒会の特権よ、とスカートのポケットから取り出されたカギを使って、ギィーと鳴る扉をくぐれば、梅雨明けの真っ青な空が開放的で風も涼しい。
そのまま、女神は手すりの方へ近づいていく。休み時間はあと少ししかないはずだが、まだグラウンドで遊んでいる生徒の声が屋上まで聞こえてくる。
すたすたと前を歩く背中を見つめる。
自分より少し低い背丈、腰の半ばほどまである、長く艶のあるストレートな黒髪。
右の耳の上にだけあるワンポイントの控えめな花飾りは、女神のトレードマークでもある。毎日花柄の色が少しだけ替わっていて、明日は何色だろうか、と話題になるほどだ。
スラリとした体型はやや痩せ気味とも言えるほどで、短すぎない程度のスカートからは、神の造形物としか思えない程の美しいラインを描く両脚が伸びている。あの脚だけで、30回はヌケる。いやヌケた。
極め付けは、まさしくこれも神の造形、としか言いようのないほどに整った小顔。街を歩けば、男の何人かに一人はあれ?どこかでみたような?といった顔で振り向く。
それもそのはず。
姫神センパイはジュニアアイドルだ。いや、正確にはアイドルだった、というべきか。
5年ほど前のグラビア雑誌なんかを漁ってみれば、必ずと言っていいほど、彼女の小学生時代の水着グラビアが見つかる程の有名ジュニアアイドルだった。TVにも一時レギュラー出演していたし、同じ高校の一年上にいたときはまさか、と思ったものだ。
5年前に活動を停止し、それ以来ずいぶんと大人びた顔になったので、すぐにそれとは気づかれにくいらしいが。
詳しくは知らないが、お母さんの意向で芸能人生まっしぐらのところを、お父さんが娘の人生を危惧して一切を辞めさせ、こんな田舎へ引っ込んできたらしい。
中学生の頃はいろいろと荒れていた、なんて噂話も聞くが、今では品行方正、成績優秀な一生徒として学生生活を送っている。
とはいえ、やはり元芸能人というレッテルはいつまでもつきまとうもので、いろいろと言われることもあるらしい。
だが彼女が女神と呼ばれるのはその苗字や経歴、美貌のためだけではない。頭の回転が良く、発言力があり、リーダーシップもあり、企画力や実行力もある。
他人に比べて豊かな人生経験のためか、相談に乗ってもらう生徒も多いらしい。なにか困ったことやトラブルは副会長に、というのが生徒会でも常識だとか。
あともう一つ、彼女が「女神」と称される理由がある。
誰とも付き合わない、と公言しているのがその理由だ。言い寄る男は学園内外を含め後を絶たないらしいが、いちいち返事するのも大変なのだろう。
ごめんなさい、高校生の間はどなたともお付き合いしないことに決めておりますので、が彼女のいつもの返事だ。絶対に男が寄り付かない存在、つまり女神様、というわけだ。
「ね、時間ある?」
ピタ、と周囲のざわめきが止まった。
二限目と三限目の間の休み時間は少し長くて、たいていの女の子はおしゃべりに興じていたりして、気の早い男子生徒なんかは早弁とかしてたりする時間。
普段は誰も話しかけてなんか来ないし、僕も小説の続きとか読んで予鈴を待ってたりする。そんな時間のはず。
呼ばれて顔を上げると、そこには。
女神がいた。
冗談でも何でもなく、目の前にいるのは姫神万理沙 (ひめがみ まりさ)、生徒会副会長。通称「女神様」。
二年生なので、一コ上の先輩でもある。
騒ぎが大きくなる前に、立ち上がることにした。
「はい。もちろん」
教室の扉を閉めた途端、どういうことだー、ナニナニいまの、キャー、などの声が後ろから聞こえてきた。
連れていかれた先は屋上だった。
普段は閉鎖されているはずだが、生徒会の特権よ、とスカートのポケットから取り出されたカギを使って、ギィーと鳴る扉をくぐれば、梅雨明けの真っ青な空が開放的で風も涼しい。
そのまま、女神は手すりの方へ近づいていく。休み時間はあと少ししかないはずだが、まだグラウンドで遊んでいる生徒の声が屋上まで聞こえてくる。
すたすたと前を歩く背中を見つめる。
自分より少し低い背丈、腰の半ばほどまである、長く艶のあるストレートな黒髪。
右の耳の上にだけあるワンポイントの控えめな花飾りは、女神のトレードマークでもある。毎日花柄の色が少しだけ替わっていて、明日は何色だろうか、と話題になるほどだ。
スラリとした体型はやや痩せ気味とも言えるほどで、短すぎない程度のスカートからは、神の造形物としか思えない程の美しいラインを描く両脚が伸びている。あの脚だけで、30回はヌケる。いやヌケた。
極め付けは、まさしくこれも神の造形、としか言いようのないほどに整った小顔。街を歩けば、男の何人かに一人はあれ?どこかでみたような?といった顔で振り向く。
それもそのはず。
姫神センパイはジュニアアイドルだ。いや、正確にはアイドルだった、というべきか。
5年ほど前のグラビア雑誌なんかを漁ってみれば、必ずと言っていいほど、彼女の小学生時代の水着グラビアが見つかる程の有名ジュニアアイドルだった。TVにも一時レギュラー出演していたし、同じ高校の一年上にいたときはまさか、と思ったものだ。
5年前に活動を停止し、それ以来ずいぶんと大人びた顔になったので、すぐにそれとは気づかれにくいらしいが。
詳しくは知らないが、お母さんの意向で芸能人生まっしぐらのところを、お父さんが娘の人生を危惧して一切を辞めさせ、こんな田舎へ引っ込んできたらしい。
中学生の頃はいろいろと荒れていた、なんて噂話も聞くが、今では品行方正、成績優秀な一生徒として学生生活を送っている。
とはいえ、やはり元芸能人というレッテルはいつまでもつきまとうもので、いろいろと言われることもあるらしい。
だが彼女が女神と呼ばれるのはその苗字や経歴、美貌のためだけではない。頭の回転が良く、発言力があり、リーダーシップもあり、企画力や実行力もある。
他人に比べて豊かな人生経験のためか、相談に乗ってもらう生徒も多いらしい。なにか困ったことやトラブルは副会長に、というのが生徒会でも常識だとか。
あともう一つ、彼女が「女神」と称される理由がある。
誰とも付き合わない、と公言しているのがその理由だ。言い寄る男は学園内外を含め後を絶たないらしいが、いちいち返事するのも大変なのだろう。
ごめんなさい、高校生の間はどなたともお付き合いしないことに決めておりますので、が彼女のいつもの返事だ。絶対に男が寄り付かない存在、つまり女神様、というわけだ。
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