ふたりでゲーム

るふぃーあ

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そう入力すると、念のための書置きを残し、ディスクとコントローラを持って玄関を出た。


「いらっしゃい!かのんくん、早かったねー」
「待たせていると悪いんで」
「ささ、どうぞどうぞ♡」
「お邪魔します」

そう言うと、薄暗い勝手口から中に入る。
全力チャリのせいで、せっかくシャワーしたのにまた汗だくだ。ひんやりとした冷房がありがたい。
広々とした居間に入ると、小さい間接照明がぼんやりと付いていて、液晶テレビが2台、きちんと並んでいた。その前にはゲーム機本体もちゃんと揃っている。

「疲れたでしょ。どうぞ」

お盆の上にはやけにでかいコップがあって、なみなみと麦茶を注いで頂いた。

「うわ、ありがとうございます!スミマセン」
「いいのいいの。お客さんなんだから。まだ暑い?」

エアコンのリモコンを壁から外し、ピコピコと操作している。

女神様は普段見なれない私服で、キティちゃんがプリントされた白地の半袖Tシャツに黄色い短パン。夏っぽいとてもラフな格好だ。
普段はスカートに隠れた部分まであらわになっていて、スラリとしたふとももがめちゃめちゃ目に毒だ。いや目の保養だ。

あーいいなこういうの。こんな美人にお茶を出してもらう機会が、今後一生に一度でもあるだろうか。いやない。
女神自身もお風呂に入りたてなのか、長い黒髪はまだしっとりとしていて、いい香りがここまで漂ってくる。

「めが・・・・・・えっと、JJさんも」
「まりさ」
「はへ?」
「まりさ、でいいよ。かのんくん」
「いやそんな、下の名前なんて、畏れ多い」
「なに言ってんの。同じ高校生でしょ?」
「副会長、でいいですか?」
「だめです」
「じゃあ、せめてJJで」
「はい。それで結構です」

テレビの前のソファに並んで座り、そろって置いてあるテレビとゲーム機をポチすると、僕は持ってきたディスクを「お姉ちゃんのほう」の機体に差し込んだ。
間もなく起動音がして、ゲーム画面が立ち上がる。無線LANも設定してあって、すぐにモンバス村だ。

「どこで待ち合わせましょうか?」

彼女はすでにログインしている。部屋はまだ入っていない。

「シールア2-10-30あたりで」

いつも待ち合わせをしている場所だ。

「んじゃかのんくん、先に一人部屋、立てておきますね」
「お願いします」
「さて・・・・・・なに練習いきましょっか」
「JJの苦手な奴から、ですね」
「私は得意なのが少ないですが。・・・・・・ルーディア、いきましょうか」
「いいですよ」

3匹目となる、水龍ルーディアをCanonの片手剣がザクザクと切り刻み、彼女は苦手な大剣に挑戦して、頭付近で溜め3攻撃を狙う。

「そこだと外れます」
「えっ?」

画面の中で水龍は、仰向けになってモガモガともがいている状態から立ち直り、僅かな差で何もない水中をJJの剣が素通りする。

「あ!ほんとだ・・・・・・」
「大剣は溜めが命ですが、先に先にタイミングを読まないと逆にダメが減るんです」

龍は水中を突進してきて、JJのレイシールドがそれをガードする。わずかに切れ味がダウンする。

「あ、砥石使わなきゃ・・・・・・」
「今はダメです。ちょっと待ってください」

Canonの一撃で尻尾が切れ、龍が怒ったように移動していく。

「今です。どうぞ」
「は、はい」

女神はソファがあわないのか、フローリングの床にぺったん、と座っている。両脚の内側とおしりが直接床についていて、なかなか柔らかい身体のようだ。
JJが砥石を取り出して、水中でしゃき、しゃき、と剣を研ぐ。
その間に水龍は再びこちらを狙い、接近してくる。

「はいそこで右へ移動」
「はい~」

JJはすぐに移動して、龍の突進攻撃をかわした。

「おおっ、ギリギリかわせた~」
「ですね。次閃光投げます」

すでにCanonはアイテムを投擲態勢に入っている。パッと画面が輝いて、龍の頭の上にピコピコと星が回った。

「ここで溜め3、行けます」
「あうう・・・・・・ちょっと待って」

もたもたと水中を泳いでいったJJは、ようやく溜め動作に入る。

「もうだめです。2で解放してください」
「はいい」

ズガン、と音がして、水龍の角がへし折れた。胴の長い龍は、また腹を上にしてもがく。

「胸、破壊できます」
「はい」
「局部破壊しました。罠行きます」
「はい」
「麻酔玉用意して」
「あうあう、待って待って」

カチカチカチ、と彼女が操作する。が、目当ての赤い玉になかなかカーソルが行き当たらない。

「投げます」
「はいっ!」

捕獲しました、と画面にテロップが出て、クエストの終りを告げる。

「はーあ、疲れたあ」
「お疲れ様でした」

コントローラを置き、まだ氷が浮かんだままの麦茶を一口いただく。
女神はやや不満なのか、うきーと奇妙な声を出して頭を抱えている。

形の良い脚が生えている黄色い短パンをもう一度、ソファの上から盗み見る。ここだと彼女の背後からなので、じっと見つめていても気づかれない。
短パンのふちはぴったりではなくて、少しばかりひらっとしていて、姿勢によっては中がやや見えそうな見えなさそうな、罪作りな感じでよくない。いや、いい。

「ちょっと休憩しましょうか。かのんくん、なにか食べますか?」

女神はちょっと息抜きに、という感じで提案する。

「いや、いいですよ」
「せっかくお客さんが来ると思って買ってきたので、ぜひぜひ」

そう言うと彼女は立ち上がり、冷蔵庫へ近づいていく。
戻ってきたお盆の上には色々と載っていた。スプーンが2つ、プリン、ティラミス、コーヒーゼリー、タピオカ入り紅茶。多いな。

「お先にどうぞ」
「いえいえ、お客様が」
「センパイ、何が好きですか?」
「うーん、じゃあ、あたしはティラミスかな」
「コーヒーゼリーいただきます」
「どうぞ。召し上がれ」

言って少し小首を傾げ、ふふ、と笑う。
モデル出身のひとってのは、みんなこういう風な仕草が自然に出るんだろうか。とっても可愛いんですが。

画面には先程倒したルーディアの皮やら爪やらの材料が出ていて、適当にボックスに投げ込んで一旦街に戻しておく。それからゼリーの蓋を開けた。

「いやあ、間近で見るとかのんくん、いや教官、本当に上手ですねえ」
「そうですか?JJも十分上手ですよ」
「操作も早いねー」
「まだまだうまい人は一杯いますよ。僕なんてまだランク400台ですから」

それにしても、4月に買ってもらってからこっち、かなりやり込んだなあ。

「あたしも一応100台になったけど、まだ気持ち的にはランク30台くらい、な感じだなあ・・・・・・さっきもタメ攻撃、3回くらいしか当たってないし」
「無理に溜めを狙わなくていいんです。大剣の場合、なるべく相手の動きを読んで、ガードせずにかわして」
「うんうん」
「そのうちに、相手がどこで止まるか、みたいなのが分かってきますから、そこで当てる、と」
「それがうまく行かないのよね。あともうちょい、で逃げられちゃう」
「50分間、攻撃せずに延々躱す練習してると分かってきますよ」
「そ、そっか・・・・・・それはそれでしんどいね」

女神もソファに座りなおして、ティラミスを少しずつ口に運んでいる。また笑顔が戻ってきた。

「ね、本番ではどんなモンスが出てくるかな」
「連続形式でしょうね。一匹じゃなく」
「うう、それは・・・・・・」
「吸血ミラネルゲルはないんじゃないかと。あれ、闘技場にもあまりいませんしね」
「私あれ苦手。なんかぬるっとしてるっぽくって」

二人してあはは、と笑う。

「確かに気持ち悪い、あれは」
「だよね!もう、近寄らないで!って感じ」
「タマゴ生んだりしますし」
「あの場面だめ、生理的にダメって気がする」
「捕まってちゅうちゅう吸われたりとか」
「うわっ、やめてその話題。もう泣きそうなのいっつも」
「あはは」

どうやら生徒会では無敵な女神様にも、いろいろと苦手なものがあるらしい。

「あのちっさなネルゲルも噛んでくるし」
「ああ、あれもうざいですね」
「うん。離してよー!ってたまに叫んじゃう」

普段は二口くらいでばばばっと食べてしまうゼリーを、わざとゆっくり食べる。なんとなく、これがなくなったら女神との会話も消えてしまう気がしたから。
落としてある、薄暗い照明の下でゼリーカップを見つめる。あと半分くらいかな。

「かのんくんは、どの武器が一番得意?」
「うーん、どれもそれなりに。元々は大剣使いですけど」
「あれを使いこなすのかー。攻撃を初めてから、振り下ろすのに時間がかかる気がするのよね」
「それも計算のうちですよ」
「うーん、そうなんだろうけど・・・・・・」
「最初は弱いモンスで練習すればいいんです。ヴィヴィとか」
「うん、ハンマーもそう言ってもらって練習したよ。ヴィヴィで。でも、上位ランデヴィヴィになるともう、うまく当てにくいのよね」
「だんだんできるようになりますよ」

彼女は食べている途中のティラミスを置いて、再びコントローラを握った。一人でランデヴィヴィの討伐、を選択する。
画面が数回切り替わって、エリマキトカゲを巨大化したようなランデヴィヴィが接近してくる。女神はえい、えい、といいつつ操作しているが、確かにあまりうまく頭に当たっていない。

「そこで」
「えっ?」
「溜めはじめます」
「えっ、はい」
「もう遅いです」
「ええーっ!」
「左に転がって」
「えっ?えっ?」
「横殴りは出さないで」
「うぇーん」

ついに泣きが入り始めた。

「かのんくん、ちょっと持って」
「へ?」
「一緒に操作、して」


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