ふたりでゲーム

るふぃーあ

文字の大きさ
7 / 22

7

しおりを挟む
「一緒に操作、して」



女神は画面を見つめたまま、コントローラを握ったままでこちらへ差し出す。

「早く早く」
「は、はい」

思いっきり手を触ってしまうんだが。いいんだろうか。
ふと見ると、女神は興奮しているせいか、ソファに座って右足は床に下ろし、左足はあぐらをかくように折り畳んでいる。
両脚の付け根部分、黄色い短パンの隙間から、黄色ではない何かの色が見えた気がして、鼻の奥に何かがぐっとつまった。慌てて目を離す。あとで後悔することは必須だ。

おずおずと彼女の上から手を重ね、コントローラを操作する。半分くらいに減った体力をそのままに、二三度回転して敵の攻撃を避ける。
一旦剣を収納し、敵を狙う・・・・・・がうまくいかない。やっぱり操作しにくい。

だが、なんとかヴィヴィの頭をスタンさせ、その上に溜め攻撃を振り下ろしたところで、決着がついた。

「ふー」
「さっすがー!教官、うまいうまい!」
「いや、でも、やりにくいっすね」
「そう?今ので、だいぶタイミングとか分かったよ?」
「そうですか?」
「でも、もう一回やって欲しいな。微妙なタイミングとか、ああやってもらえたら全部分かりそうな気がする」
「いやでも、操作しにくいような」
「じゃあ」

女神はずるずるぺたん、とソファからずり落ちた。そのままずり、ずり、と自分の前に移動してくる。

「はい、これでよろしく」

女神は僕の両足の間に入る形になり、コントローラを少し上に持ち上げた。僕が操作しやすいように。
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
あの。
股間が。

女神の背中が、股間の何やらにつきそうなくらいなんですけど。
心持ち、お尻の位置を後ろに修正する。

カチャカチャ、と女神はクエストを選択し、先ほどのランデヴィヴィのさらに上位種、ランデヴィーヴァーの討伐を選択する。

「はりきっていきましょー!」

クエスト嬢のセリフを真似する女神様。
ええい、どうにでもなれ。

「じゃあ、いきますよ」
「はーい!」

本日二度目となる、彼女の手を上から握る。
真剣な眼差しで画面を見つめているであろう彼女。その後頭部を、ふしだらな目で見つめている僕。

さきほど嗅いだ、かぐわしい香りが髪から立ち上ってくる。どっきん、と胸が大きく高鳴る。
これ、そおぉーっと髪に鼻をうずめてくんくんしても、気づかれないんじゃなかろうか。そっと。鼻先くらい。
画面が切り替わって、JJが走りだす。

「早いねー、もう終わっちゃったよ」

画面では、青い色をした恐竜が無様に転がり、JJは近くにあった鉱石をカンコンと採取している。
確かにこの態勢は操作しやすかった。普段の一人プレイに近い感じに。

「あんなふうに、いつも避けてるんだねー」
「ええ。ぶつかる、と思った瞬間に回避するんです」
「あたしはいっつも、ぶつかる!と思った瞬間、もうぶつかってるよー」
「それの繰り返し、ですよ」

ちょっと汗をかいてしまった手を、名残り惜しく彼女から引き剥がす。
時計をみると、すでに23時半になっている。

「センパイ、そろそろ・・・・・・」
「ん、そうだね・・・・・・もうこんな時間だね」
「ですね。明日も学校ありますし・・・・・・」
「じゃあ、あと1回だけいいかな。あたし凶龍ガブリズェルが苦手で、なかなか一人で倒せなくって」
「ええ。いいですよ」
「じゃ、今の感じでよろしく!」
「大剣でいいですか?」
「うん!」
「じゃ、いきまーす」

僕は、三度目となる彼女の手を握った。


「ふえー・・・・・・堪能したー・・・・・・」
「お疲れ様でした」

巨大な凶龍を落とし穴に突き落として、バトルが終了した。

「いやあ、もうなんていうか、すごいよ、かのんくん」
「そうでもないですよ。回復ポット3本使っちゃったし、最後捕獲に逃げたし」
「もう、ずっと緊張しっぱなしだったよ」

手を離そうとして気づいた。二人の手には汗がびっしょりとついて、まるで接着したかのようだ。
いつの間にか操作に集中しきっていて、完全に女神を背後から抱きしめてしまっている。

最初は気を使って離していた身体も、股間が背中に押し付けられてしまっていた。なんというか、股で背中を挟みこんでいる状態だ。
前を見下ろす。広く開いたTシャツの隙間から、ピンク色のブラが完全に見えた。完全に。
だめだ、身体を離さないと。今すぐ。まだ理性が残っているうちに。

「かのん・・・・・・くん・・・・・・あの」
「センパイ・・・・・・」

このままずっと、抱きしめていたい。朝まででも。
僕はコントローラから手を離した。
背後から回した腕を、そっと彼女の身体へと________

「あんたたち、何やってんの」

突然声がして、部屋の電気が明るくなった。
反射的に立ち上がり、声のした背後を振り向く。同時に、女神を背中側に隠す。

そこには、女神によく似た女性が立っていた。

「お姉ちゃん・・・・・・」

そうか、女神のお姉さん、か。道理でよく似ている。女神をもっと大人にしたような顔立ちで、やや背も高い。
それに、こう言ってはなんだが、女神は身体の凹凸があまりない。目の前の女性は、はっきりと分かるような豊かな胸をしていた。

「まりさ、夜中に男の子とラブラブでゲーム?感心しないね」

姉、と呼ばれた女性はバスローブのような服を着て、やや険しい眼差しをこちらに向けていた。

「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん」
「ゲームが壊れたから貸して欲しい、って、こういうことか」
「すみません」

僕も頭を下げる。
ふふ、とお姉さんは笑った。

「君まで謝らなくていいの。別に怒ってるわけじゃないわ。・・・・・・・・・・・・いや、正確に言うと少し怒ってる。でも、まりさが男の子に興味があるなんて思わなかったから、ちょっと意外だった、かな」
「申し訳ありません、こんな夜分に」
「だからいいって。別にセックスしてたわけじゃないでしょ」
「せ、せっ・・・・・・」

僕は絶句した。
さらり、と口にしてしまえるところに、大人の気配を感じた。

「あら、そういう雰囲気だったのかしら?ずいぶんとぴったり寄り添っていたみたいけど。まりさ、彼氏がいたならちゃんと紹介してくれればいいのに」
「そ、そんな、彼氏とかじゃなくって、その、かのんくんは」
「かのんくん、って言うの?日本人だよね?」
「それはあだ名です。いまみやなおき、と申します。あの、これは全部自分のせいで」

はいはい、とお姉さんは笑い、コップに麦茶を注いだ。

「大方あれでしょ、まりさが勝手にいろいろと決めちゃって、引くに引けなくなったんでしょ」
「・・・・・・はあ」
「おねえちゃん!」
「図星、かな。この子はいつまでたってもわがままなんだから。ごめんなさいね、ナオキくん」
「いえ、とんでもありません」
「礼儀正しくていい子ね。でもね、まりさ」

お姉さんはソファの方へ近寄ってきた。女神はまだ、ソファの前の床に座り込んだままだ。

「彼を信用しないわけじゃないけど、夜中に男友達を部屋に呼ぶ、ってことがどういうことか、あなたも知らない歳じゃないわね?あなた一人がいい気になっているうちに、レイプされちゃっても文句は言えないのよ」
「おねえちゃん!失礼よ!」
「れ・・・・・・いえ、あの・・・・・・」
「そんな気はなかった、とは言わせないわよ。勃ってたでしょ、さっき」
「たっ・・・・・・」

思わず股間を押さえる。もう、阿呆のように何も言い返せない。

「彼だけは特別、絶対に安心。もしそんな風に思っていたんだとしたら、今夜何もなかったことを彼に感謝するのね。男の子がそういう気持ちを押さえるのって、本当に大変なんだから」
「おねえちゃん!かのんくんはそんなこと!」

よくご存知で。
そう言いたいが、言える雰囲気ではない。

「まりさ、大きな声を出さないの。母さん、起きてきちゃうわよ。こんなところ見られたら、母さんがどんな顔するか。・・・・・・ごめんなさいねナオキくん、今日のところはこれで帰ってね」
「ええ。はい。もちろんです」
「まりさ」
「・・・・・・はい」

普段は他の生徒を圧倒する副会長も、姉の前ではまるで借りてきた猫のようだ。

「さあ、お開きよ。あとは私たちがやっておくから、ナオキくんは勝手口へ」
「はい。あの、本当にスミマセンでした」
「はいはい。これからもこの子をよろしくね。まりさ、お送りしなさい」


「ごめんね、かのんくん。こんなことになってしまって」

勝手口を抜けたところで、女神はそっと言った。しょんぼりしているのが分かる。

「いえ、自分にも落ち度がありますから」
「本当にごめん。また今度、ちゃんと謝るね」
「いいですよ。いろいろとごちそうさまでした」

チャリは門を入ってすぐのところに停めてある。

「じゃあ、僕はこれで」
「気をつけてね。・・・・・・本番、頑張ろうね」

ふわり、とした感触が左の頬に触れた。
夢のような、嘘のような時間。
それが女神のキスだ、と気づいた時には、もう女神の姿は見えなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

処理中です...