8 / 22
8
しおりを挟む「うーむ、ねみー」
僕は三限目が終わると、机に突っ伏した。
「もう、ゲームしすぎじゃないの?何時に寝たのよ?」
さっそく美沙がつっこむ。
「おうおう、またモンバスのやりすぎか?それともあれか、自家発か?」
タカシがちょっかいを出しに来る。
「自家発?なんかまた作ったの?」
美沙は勘違いをしているが・・・・・・まあそのままにしておこう。正確に説明して、眉を吊り上げて怒られるのも面倒だ。
「お子様美沙には分からねーこった。でもよ、オメー昨日村に来なかっただろ?」
そりゃまあ、隠密にしてログイン隠してたし。女神様と一緒だったし。
「いろいろと人生に悩むことがあってな」
適当にそう流しておく。
「ハハハ、オメーでも悩むことがあるんかい?僕なんて、毎晩宇宙と人類の未来についてだな」
「タカシ、うるさい」
美沙にぴしゃっと言われる。
「直樹、大丈夫なの?」
「ああ。単なる寝不足」
まあ正確には、いろいろな刺激が多すぎる夜だったので、家に帰ってから思い出して処理してたのだが。というわけでタカシの邪推は当たっている。
今朝は、女神からのメールが来なかった。ということは、女神はまだ昨日の夜のことを引きずっているのか、それとも・・・・・・
授業中の携帯・メールは使用禁止。生徒会で投票の結果決めたことだ。休み時間は一応認められているので、休み時間のたびにちらちらと携帯をチェックしているのだが、やはり何のメールも来ていない。
「まあ、次は自習らしいからな」
「え?」
「マジ?」
美沙と僕は同時にタカシの顔を見つめる。聞いてないぞ。
「ああ。A組が二限目世界史だったらしいが、なんか高安のヤロー、今日は出勤してないらしいぜ」
脂ぎった顔つきの、世界史担当の教師の顔を思い出す。美沙も同時に思い出したのか、露骨に顔をしかめた。
あのアブラ顔は、どう考えても女生徒に人気があるとは言えないだろうな。強制わいせつに近いセクハラした疑いもあるって話だし。
「というわけで直樹、オメー寝とけ」
「ああ、そうだな」
ズボンのポケットでバイブが動く。メール着信あり、だ。即座に予鈴が鳴り響く。
さすがは真面目な副会長。ギリギリ休み時間内だった。ちゃんと生徒会則は守った、ってことか。
「昨日はごめんなさいね」
開口一番、女神はそう言った。
「お姉ちゃんには昔っから、頭が上がらなくって」
てへ、と小さく舌を出して微笑む。良かった、昨日のことはもう引きずっていないようだ。
「いえ、あの、後で叱られたりしませんでした?」
「ううん、大丈夫。お姉ちゃん、理解あるから。それよりも」
「いえ、気にしてません。ご家族なら、心配されて当然ですから」
レイプ未遂扱いされたのはもちろん始めてだが、まあ、心当たりが皆無だったかといえばやや後ろめたいし。
「本当に失礼な言い方をしてしまって・・・・・・かのんくんは教えにきてくれただけなのに」
「ええ。でも、軽率でした。夜遅くに女性宅へ行くってことは、そういう風に思われて当然ですから」
なんか、当然ばっかり言ってるな。
しかし、あの時にお姉さんが来なかったら、と思うと・・・・・・どうしても謝ってしまう。
ふと女神は黙り込む。僕もなんとなく居心地が悪くなって黙る。
「率直に言ってしまうんだけど・・・・・・」
「はい、何です?」
「私、かのんくんのことはとても頼りにしているし、一所にゲームなどするのもとっても楽しいの。ただ単に上手いとかだけじゃなくて、ちょっとした会話なんかもとっても楽しいの。でも」
ええ、その先は言わなくても分かってます。
「でも、そういう関係を望んでるんじゃないの。ごめんね。誰ともつきあったりする気持ちはないし」
「ええ。噂は聞いてます」
「本当にごめん。昨日はその、なんていうか、ちょっと軽率だった。その、あの、教官も男の子なんだなーって」
ああ、背中にカタイモノが当たってたの、やっぱりバレてましたか。
気づかないふりをしてくれてたんだ。
「だから、お姉ちゃんにもあの後もう一回言われちゃって、たぶんかのんくんはその、まあわたしなんかじゃ全然何もかもしれないけれど、それでもなんだか我慢させちゃったりとか、苦しめちゃったりとかしてたら、申し訳なかったと思うし」
お姉さん、人生経験というか男性経験というか、豊富そうですね。
それとも男性心理をよくご存じ、というべきだろうか。まだお若く見えましたが。
「ごめん、何言ってるか分かんないかもしれないけど、あたしが一人で考えすぎかもしれないし、もしかしてとっても失礼かもしれないけれど、とにかくちゃんと謝りなさい、と言われたの」
「・・・・・・お姉さん、いい方ですね」
「うん、とってもいいお姉ちゃん。で、」
きーんこーん。
予鈴だ。昼休みの終わり。
「ああっ、ごめんなさい、もっと言いたいことがあるのに!かのんくん、今日も部活?」
「ええ」
「じゃ、待ってる!終わるまで待ってるから!帰りは西門から?」
「はい。自転車なんで」
「分かった!部活終わる頃に西門で待ってるから!」
すたすた、と走り去る女神。
いやあの、屋上の鍵はどうすれば。
ていうか、校門待ち合わせ?女神様と?
・・・・・・バレたらまた、シゴキがキツくなるな。
「今宮ーっ!気合っ!」
「オス!」
7本目の試合が終わったところで、床に膝をついてヒィヒィ言っていた僕は、周囲のセンパイからの声に気合いだけで返事をして、ふらふらしながら立ち上がった。
今日は特にシゴキがキツい。それもそのはず。
『今日から、一年キャプテンを決める』
練習の開始前に現れた顧問から、突然の発表があった。
『今年の一年はなかなかレベルが高い。人数も多いしな。一年生だけで意識を高め合い、切磋琢磨するように。今宮!』
『はい!』
『お前が一年キャプテンになれ。一年全体のレベルアップのために、足りないところや不備を補うようにしろ。いいな』
突然、名前が呼ばれた。
何故?という疑問があるが、剣道部ではセンパイや顧問の先生に言い訳は一切無用、が原則だ。
『はい!ありがとうございます!』
とりあえず、その場は返事をした。
「今宮、悪かったな。オレが推薦したんだ」
普段の倍くらい疲れた練習後、幹部ミーティングに今日から参加することになり、一年生で一人だけ残されてしまった。
そこでキャプテンの大倉センパイが言った。
「小菅や葉月も上手いが、お前も時々いい攻めを見せる。昨日、東から二本取ったようにな」
いや、あれはもう、破れかぶれというか。もう一度やれと言われても厳しいんですが。
「まあ、寡黙すぎる点はあるが、リーダーシップを取ることも勉強のうち、と思ってやれ。いいな」
「はい、キャプテン」
「よし、じゃあ、しばらくの間は金曜週一回のミーティングにも加わってもらう。今日からだ。遅くなるが構わんな?」
「・・・・・・はい」
「一年生の視点から、言いたいことがあったら遠慮なく言え。練習メニューの組み立ても、お前なりに考えろ」
「はい」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる