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二人分の体重を受け止め、ベッドがぎしりと抗議するような音を立てた。
「御薙さ、っんん……!」
待って、と言おうとした唇を塞がれる。
入り込んできた舌は熱くて、ぞろりと口内を弄られると、制止の言葉を口にしておきながら簡単に理性が霞んだ。
何故、いつの間にこんなことに。
急展開に混乱しすぎて謎の二択にどのように返答したかあやふやだが、現状ベッドに押し倒されているということは、恐らく冬耶が連れ込んでよいようなことを何か言ったのだろう。
耐えて欲しくはなかったのでこれでよかったと言えなくもない。
けれど、色気のある話をしているつもりが毛ほどもなかった冬耶としては、なかなか気持ちが追い付かなかった。
「っぁ、…待っ…、しゃ、シャワー、とか…」
「どうせ汚れるし、後でいいだろ」
顔が離れた隙に乱れた息のまま主張してみたが、適当に流された挙句、服をさっと剥かれた。早業過ぎる。
そもそも、事前と事後のシャワーは兼ねられるのか?兼ねられない気がする。
やはり先に…と思ってみても、のしかかる体は大きく、押し戻せない。
逃がさないような体重のかけ方に本気を感じて、なんだか首の後ろがぞわぞわするような感じがした。
「なんか…微妙に抵抗されると今日は加減が出来なくなりそうだから、ちょっとじっとしてろ」
「ええ……、」
往生際悪くジタバタしていると、予想外の注意をされて思わず動きを止める。
萎えるからとかではなく盛り上がるからというのが甚だ不穏だ。
硬直すれば、無防備な首筋や鎖骨に吸い付かれて、冬耶は首をすくめた。
このまま流されてしまいそうで思わず叫ぶ。
「み、みみ御薙さんには何かこう、葛藤とかないんですか?」
「葛藤?」
御薙はちょっとうるさそうに顔を上げた。
中断されて嫌なのはわかる。申し訳ないと思ったが、これを有耶無耶にしてしまうとまた同じところでぐるぐる悩んでしまいそうなので、納得しておきたい。
「俺が…、『真冬』が実は昔の知り合いだったとかそういう…」
何故そんなことを聞くのかと不思議に思っているような顔で、御薙は一拍間を置いた。
「そうだなぁ…、まあ、驚いたぞ」
「それだけですか…」
あまりにシンプルな返答に、気持ち悪いと思われたらどうしようとあれだけ悩んでいたのに、と拍子抜けする。
「葛藤するほどのことでもないだろ」
「とはいえ、普通は気になりません?」
「そう言われてもな…、流石に子供のお前に恋愛感情はなかったが、でもそんなことは普通にあるだろ?ガキの頃から知り合いで、後から恋愛関係になることも」
「まあ、そうですけど…」
その一般論には相手の性別の変化は含まれていないような。
だがそれも御薙にとっては「驚いた」程度で済んでしまうことなのか。
「逆に、『真冬』と話した時に初めて会った気がしなかったのはそれかって納得できて、なんかすっきりしたくらいだ。……あれは、お前が俺のことをちゃんと覚えてて、気を遣ってくれたからだったんだな」
「それは…、」
元々知り合いだから話は合わせやすかったが、それもこれも下心があったからで、そんな風に肯定的に言ってもらえるようなことでもない。
「あと、同じ気持ちではなかったかもしれないが、俺もお前のことは…『冬耶』のことは気にしてたからな」
「え……」
「まだあそこに住んでた頃は、家の前を通りかかるたびにお前が一人でぽつんと座ってないかいつも確認してたし、仁々木組に世話になるようになってからも、お前がどうしてるかってたまに思い出してた」
「御薙さん……」
少し照れくさそうな告白に胸が熱くなり、御薙を思わず見つめる。
御薙が自分を気にしていてくれたのはとても嬉しい。
この言葉で、幼い頃の切ない想いが報われたような気がした。
「ようするに、あれだ。俺にとっては『冬耶』も『真冬』も同一人物で違和感ないってことだ」
「そ、それなら…よかったです」
「だから、名前で呼べよ」
「え、名前で…?」
突然だ。
「ガキの頃は名前で呼んでただろ」
「それは…、そうですけど」
もうすっかり「御薙さん」で定着してしまって、改めて呼ぶのは、なんだか勇気がいる。
「や、…大和…………お兄ちゃん…?」
子供の頃は、と言われたので、照れもあり昔と同じように呼ぶと御薙は苦笑した。
「それは、なんか開いてはいけない扉が開きそうだから、ちょっと今はやめとけ」
どんな扉なのかはよくわからないが、確かに人に聞かれたりしたら違う意味でちょっと恥ずかしい。
冬耶は意を決して口を開いた。
「大和さん」
それだ、と破顔した御薙が本当に嬉しそうで、眩しく感じた冬耶はそっと目を細めた。
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