77 / 120
その後のいじわる社長と愛されバンビ
7
しおりを挟む『まだ帰れそうにない。仕事終わったらうちに来て布団をあっためてくれててもいいぞ』
退勤して、スマホを確認した万里は、久世からのメッセージを見て『やっぱりか』と溜め息をついた。
貸し切りにしとくとか言っておいて結局来なかっただろ、なんて拗ねた返信をしそうになるが、思いとどまる。
最近の久世は出会った頃よりも忙しそうで、万里はどの程度の距離感でいればいいのか悩んでいた。
このメッセージの『うちに来て~』というのも、久世の気遣いのような気がする。
今日の用事は、半分仕事の接待だといっていた。
その半分が、どの程度久世にとって大変なことなのかはわからないが、疲れて帰ってきて、万里の相手までするのはしんどいのではないだろうか。
迷った末に、
『課題もあるし、今日は家に戻る。飲みすぎ注意』
と返して、家路についた。
家に戻ってきて軽くシャワーを浴びると、万里はさっさとベッドに横になる。
父は夕方『サタデーなナイトだからフィーバーしてくる』とメッセージを送ってきており、既にサタデーではなくなっているがまだ帰っていない。
しんとした家は少し寂しいような感じがして、早くも久世の言葉に甘えればよかっただろうかと後悔しはじめた。
本音を言えば、どれほど遅くなってもいいから、会いたい。
心の中でそう思っていても、いつも恥ずかしさと遠慮で、素直にそれを伝えることはできなかった。
きっと……桜峰なら好きな人に素直に甘えることができるのだろう。
他人と比べても仕方ないというのに、開店前の会話のせいで、色々考えてしまう。
「(桜峰さんの『今夜はサービス』って……どんなことをするんだろうか……)」
万里も健全な男子なのでエロ本くらい嗜むが、桜峰が言うとソレなイメージしかない。
久世もそういうのが好きだったりするだろうか?
昨晩も妙な勢いで迫られてかなり狼狽えたが、桜峰のようになるほど貪られたわけではない。
我慢させているなら申し訳ないとも思うし、万里に何度も欲しがるほどの魅力がないという理由だった場合、ちょっと笑えなかった。
「(そもそも俺はどうされたいんだ……)」
久世が万里の生活やペースに合わせてくれているのをありがたいと思っているのに、桜峰が羨ましいとも思う。
我が儘すぎる。
「(でも、桜峰さんも言ってたけど、我慢されてるのは……やっぱりやだな……)」
いつも、万里の腰が引けているのがいけないのだろうか。
もっとウェルカムな態度でいられれば、また違う展開が……?
『万里……』
『昴さん……今日は……酷くして……』
・・・・・・・・・・。
………無理………!
万里は己の想像の貧困さに、ベッドの中で悶えた。
こういう展開は自分ではギャグにしかならない気がする。
久世だっていつもふざけてばかりのくせに、どこで切り替えているのだろう。
突然向けられる本気の瞳に、万里は翻弄されっぱなしだ。
『万里』
「っ……………」
思い浮かべた声の再現率の高さに、ぞくりと背筋が慄いた。
まずいと思っても脳が昨晩の久世を自動再生する。
『ただ、俺が一刻も早く会いたかっただけだ』
繰り返されるキスと、身体中に滑る指先。
恥ずかしいからもうやめてほしいのに、気持ちがよくてもっと欲しくて、わけがわからなくなって……。
「っん……っ」
反射的に久世の動きをなぞるように滑り降りた手が触れたそこは、既に熱かった。
他愛なさすぎる自分が恥ずかしい。
けれど、ここに久世はいない。
このことを知るのは万里一人なのだ。
欲望に負けて、下着から取り出し自身を擦り始める。
「っ、ふ、ぁっ」
昨晩もしたというのに、反応は早かった。
触れば当然気持ちはいいけれど、好きな人にされる快感には遠く及ばず、切なさが募る。
「や、……もっと………」
物足りなくても後ろに触る勇気は出なくて、代わりに胸にもう片方の手を這わす。
物欲しげに尖った先端をキュッと摘むと、びくんと身体が揺れた。
「あ!……す、昴さ……っ」
万里は切なく久世の名を呼びながら、己の手を汚した。
1
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる