いじわる社長の愛玩バンビ

イワキヒロチカ

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その後のいじわる社長と愛されバンビ

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『まだ帰れそうにない。仕事終わったらうちに来て布団をあっためてくれててもいいぞ』

 退勤して、スマホを確認した万里は、久世からのメッセージを見て『やっぱりか』と溜め息をついた。
 貸し切りにしとくとか言っておいて結局来なかっただろ、なんて拗ねた返信をしそうになるが、思いとどまる。
 最近の久世は出会った頃よりも忙しそうで、万里はどの程度の距離感でいればいいのか悩んでいた。
 このメッセージの『うちに来て~』というのも、久世の気遣いのような気がする。
 今日の用事は、半分仕事の接待だといっていた。
 その半分が、どの程度久世にとって大変なことなのかはわからないが、疲れて帰ってきて、万里の相手までするのはしんどいのではないだろうか。
 迷った末に、
『課題もあるし、今日は家に戻る。飲みすぎ注意』
 と返して、家路についた。

 家に戻ってきて軽くシャワーを浴びると、万里はさっさとベッドに横になる。
 父は夕方『サタデーなナイトだからフィーバーしてくる』とメッセージを送ってきており、既にサタデーではなくなっているがまだ帰っていない。
 しんとした家は少し寂しいような感じがして、早くも久世の言葉に甘えればよかっただろうかと後悔しはじめた。
 本音を言えば、どれほど遅くなってもいいから、会いたい。
 心の中でそう思っていても、いつも恥ずかしさと遠慮で、素直にそれを伝えることはできなかった。
 きっと……桜峰なら好きな人に素直に甘えることができるのだろう。
 他人と比べても仕方ないというのに、開店前の会話のせいで、色々考えてしまう。
「(桜峰さんの『今夜はサービス』って……どんなことをするんだろうか……)」
 万里も健全な男子なのでエロ本くらい嗜むが、桜峰が言うとソレなイメージしかない。
 久世もそういうのが好きだったりするだろうか?
 昨晩も妙な勢いで迫られてかなり狼狽えたが、桜峰のようになるほど貪られたわけではない。
 我慢させているなら申し訳ないとも思うし、万里に何度も欲しがるほどの魅力がないという理由だった場合、ちょっと笑えなかった。
「(そもそも俺はどうされたいんだ……)」
 久世が万里の生活やペースに合わせてくれているのをありがたいと思っているのに、桜峰が羨ましいとも思う。
 我が儘すぎる。
「(でも、桜峰さんも言ってたけど、我慢されてるのは……やっぱりやだな……)」
 いつも、万里の腰が引けているのがいけないのだろうか。
 もっとウェルカムな態度でいられれば、また違う展開が……?

『万里……』
『昴さん……今日は……酷くして……』

 ・・・・・・・・・・。

 ………無理………!

 万里は己の想像の貧困さに、ベッドの中で悶えた。
 こういう展開は自分ではギャグにしかならない気がする。
 久世だっていつもふざけてばかりのくせに、どこで切り替えているのだろう。
 突然向けられる本気の瞳に、万里は翻弄されっぱなしだ。

『万里』

「っ……………」
 思い浮かべた声の再現率の高さに、ぞくりと背筋が慄いた。
 まずいと思っても脳が昨晩の久世を自動再生する。
『ただ、俺が一刻も早く会いたかっただけだ』
 繰り返されるキスと、身体中に滑る指先。
 恥ずかしいからもうやめてほしいのに、気持ちがよくてもっと欲しくて、わけがわからなくなって……。
「っん……っ」
 反射的に久世の動きをなぞるように滑り降りた手が触れたそこは、既に熱かった。
 他愛なさすぎる自分が恥ずかしい。
 けれど、ここに久世はいない。
 このことを知るのは万里一人なのだ。
 欲望に負けて、下着から取り出し自身を擦り始める。
「っ、ふ、ぁっ」
 昨晩もしたというのに、反応は早かった。
 触れば当然気持ちはいいけれど、好きな人にされる快感には遠く及ばず、切なさが募る。
「や、……もっと………」
 物足りなくても後ろに触る勇気は出なくて、代わりに胸にもう片方の手を這わす。
 物欲しげに尖った先端をキュッと摘むと、びくんと身体が揺れた。

「あ!……す、昴さ……っ」
 
 万里は切なく久世の名を呼びながら、己の手を汚した。
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