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さらにその後のいじわる社長と愛されバンビ
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久世が鈴鹿家で生活をするようになって数週間ほど経ったある金曜日。
調べものをしていていつもよりも大学を出るのが遅くなってしまった万里は、道中恋人から先に家に着いたという連絡を受けて、家路を急いでいた。
角を曲がると、自宅の灯りが目に入り、微かに表情を緩める。
やはり、帰ったときに家が明るいのは嬉しい。
家に入り、真っ直ぐキッチンに向かった。
「……ただいま」
声をかけると、笑顔の男前が振り返る。
「ああ、おかえり」
このやりとりも、最初はくすぐったかったが、少し慣れた。
バックパックを置いて、久世の手元をのぞく。
「今日はちょっと遅くなったから、夕飯買って帰ってきた」
「へー、何買ったの?」
買うにしても作るにしても、どちらかが用意すればいいと思うのに、大抵久世が用意してくれてしまう。
申し訳なく思う気持ちはあるが、素直に喜んだ方が相手も嬉しいようなので、こういう時はひとまず甘えることにしていた。
「通りすがりに適当に選んでテイクアウトしてきたから、色々だ。好きなもの食べていいぞ」
スープは今温めてるから、他のものをテーブルに並べてくれと言われて頷いた万里は、キッチンのカウンターの上の、有名なホテルの名前の入った紙袋から取り出して並べ容器を見て、歓声を上げた。
「って、なんかすっごい美味そうなやつじゃん!」
「俺も食事したことのない店だから、味が好みかどうかはわからないけどな。美味かったら今度ここのレストランを商談に使えると思って」
「日々の食事すら仕事のためのリサーチね…。あんたって仕事大好きだよな」
やれやれと肩を竦めて皮肉ると、不意に久世が顔を寄せてきて……。
「ま、一番好きなのは万里、お前だけどな」
耳元を掠めるダイレクトな一撃に、万里は精神に大ダメージを受けてよろめいた。
羞恥ゲージが振り切れて倒れそうになるのをなんとか堪えて、油断ならない男を押し退ける。
「そ、そういうのはいいですから。おお俺、お腹すいた!」
「はいはい、飯にしような」
そう子供をあやすように言われると、大変腹立たしいんですけど!
久世が有名ホテルでテイクアウトしてきた料理はどれも美味で、冷製肉の盛り合わせをもりもり食べた万里は、すっかりご機嫌になった。
食後、片付けを終えると、ソファでのんびりするのが最近の慣例だ。
土日の夜は『SILENT BLUE』のシフトが入っていることが多いので、金曜日は翌日が休みかつ夜に久世とゆっくりできる唯一の曜日である。
さっさとベッドに連れていかれることもあるが、久世もこうした時間を気に入っているのか、ビール一本分くらいの時間は万里に付き合ってだらだら過ごしてくれる。
なんとなく近くにいるだけで、それぞれ別のことをしていることも多いのだが。
一応、調べ物の続きをしようかとも思ったが、なんとなく集中できそうもなく、今日はただ久世にくっついて夕食の余韻に浸っていた。
「うーん、お腹いっぱい。たまにはああいうのもいいね」
「そんなに気に入ったのか?そこまでお前の胃袋を掴むなんて、ちょっと妬けるな」
「……もちろん、いつもあんたが作ってくれる料理の方が……、好きだけどさ」
さりげない反撃に、微かに驚きに目を瞠った久世は、すぐににやりと悪い顔になって、こちらに迫ってくる。
きし、とソファが鳴って、万里は反射的に逃げようとして、覆いかぶさられるような格好になってしまった。
「俺の方が好きなんて、光栄だな」
「いや、今のは料理の話だけど……って、近い!」
「俺としては、本日のメインディッシュをいただきたいなと」
「う………」
死ぬほど恥ずかしいが、断る理由が一つも思いつかず。
流されるままに頷きかけたところで、通話の着信音が鳴った。
思わずテーブルの上のスマホを見てしまうと、表示された発信者は……、
「……げ、父さん」
調べものをしていていつもよりも大学を出るのが遅くなってしまった万里は、道中恋人から先に家に着いたという連絡を受けて、家路を急いでいた。
角を曲がると、自宅の灯りが目に入り、微かに表情を緩める。
やはり、帰ったときに家が明るいのは嬉しい。
家に入り、真っ直ぐキッチンに向かった。
「……ただいま」
声をかけると、笑顔の男前が振り返る。
「ああ、おかえり」
このやりとりも、最初はくすぐったかったが、少し慣れた。
バックパックを置いて、久世の手元をのぞく。
「今日はちょっと遅くなったから、夕飯買って帰ってきた」
「へー、何買ったの?」
買うにしても作るにしても、どちらかが用意すればいいと思うのに、大抵久世が用意してくれてしまう。
申し訳なく思う気持ちはあるが、素直に喜んだ方が相手も嬉しいようなので、こういう時はひとまず甘えることにしていた。
「通りすがりに適当に選んでテイクアウトしてきたから、色々だ。好きなもの食べていいぞ」
スープは今温めてるから、他のものをテーブルに並べてくれと言われて頷いた万里は、キッチンのカウンターの上の、有名なホテルの名前の入った紙袋から取り出して並べ容器を見て、歓声を上げた。
「って、なんかすっごい美味そうなやつじゃん!」
「俺も食事したことのない店だから、味が好みかどうかはわからないけどな。美味かったら今度ここのレストランを商談に使えると思って」
「日々の食事すら仕事のためのリサーチね…。あんたって仕事大好きだよな」
やれやれと肩を竦めて皮肉ると、不意に久世が顔を寄せてきて……。
「ま、一番好きなのは万里、お前だけどな」
耳元を掠めるダイレクトな一撃に、万里は精神に大ダメージを受けてよろめいた。
羞恥ゲージが振り切れて倒れそうになるのをなんとか堪えて、油断ならない男を押し退ける。
「そ、そういうのはいいですから。おお俺、お腹すいた!」
「はいはい、飯にしような」
そう子供をあやすように言われると、大変腹立たしいんですけど!
久世が有名ホテルでテイクアウトしてきた料理はどれも美味で、冷製肉の盛り合わせをもりもり食べた万里は、すっかりご機嫌になった。
食後、片付けを終えると、ソファでのんびりするのが最近の慣例だ。
土日の夜は『SILENT BLUE』のシフトが入っていることが多いので、金曜日は翌日が休みかつ夜に久世とゆっくりできる唯一の曜日である。
さっさとベッドに連れていかれることもあるが、久世もこうした時間を気に入っているのか、ビール一本分くらいの時間は万里に付き合ってだらだら過ごしてくれる。
なんとなく近くにいるだけで、それぞれ別のことをしていることも多いのだが。
一応、調べ物の続きをしようかとも思ったが、なんとなく集中できそうもなく、今日はただ久世にくっついて夕食の余韻に浸っていた。
「うーん、お腹いっぱい。たまにはああいうのもいいね」
「そんなに気に入ったのか?そこまでお前の胃袋を掴むなんて、ちょっと妬けるな」
「……もちろん、いつもあんたが作ってくれる料理の方が……、好きだけどさ」
さりげない反撃に、微かに驚きに目を瞠った久世は、すぐににやりと悪い顔になって、こちらに迫ってくる。
きし、とソファが鳴って、万里は反射的に逃げようとして、覆いかぶさられるような格好になってしまった。
「俺の方が好きなんて、光栄だな」
「いや、今のは料理の話だけど……って、近い!」
「俺としては、本日のメインディッシュをいただきたいなと」
「う………」
死ぬほど恥ずかしいが、断る理由が一つも思いつかず。
流されるままに頷きかけたところで、通話の着信音が鳴った。
思わずテーブルの上のスマホを見てしまうと、表示された発信者は……、
「……げ、父さん」
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