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さらにその後のいじわる社長と愛されバンビ
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しおりを挟む手にかかった熱さで、はっと我に返る。
「っ…ぁ…、」
こんな、何度か擦っただけで出てしまうなんて。
恥ずかしくて顔を上げられずにいると、頭の天辺にキスをされる。
「お前も、興奮してるんだな」
囁かれ、反射的に首を横に振ったが、「そうか」ともちろん全く信じていない含み笑いに、更にいたたまれない気持ちになった。
「あ、あんたのも……、」
この恥ずかしさを紛らわすには、さっさと終わらせる他ない。
腹立たしいことにまだ余裕のありそうな久世のものを擦ろうとすると、やんわり止められた。
何故と不思議に思っていると、いつの間にやら取り出していたローションを手渡される。
「自分で濡らせるか?」
どうやら、本当に最後までするつもりらしい。
怪我をしたばかりで、あんなに出血もしたのだから、しない方がいいに決まっている。
そう思う、けれど、万里も欲しかった。
快楽よりも、久世が生きているという実感が欲しいのかもしれない。
自分で挿れてもらう準備をするなんて、恥死しそうな上にできる自信が欠片もなかったが、負担をかけたくない気持ちが上回り、頷く。
ぬるぬるしたローションを手に取ると、恐々後ろを探る。
「んっ……」
「こっち、つかまれ」
不自然な体勢でふらつくのを見かねてか、もう片方の手を久世の肩に誘導されて首を振る。
「や、怪我……が、」
「ここは痛くないから平気だ。ゆっくりでいいからな」
優しさからの言葉のようだが、ゆっくりやったらその分その姿を相手にさらすことになるのだ。
久世の肩に負担にならないようにそっと手を回し、姿勢を整え再チャレンジするが、思ったほど指が深く入らない。
入口の方で小さく卑猥な音が立つばかりで、焦りにじわりと涙が滲んだ。
「うぅ…、」
「手伝ってやろうか?」
頑なに首を振ると、ほろりと溜まった涙が零れる。
「……万里?」
「ぅ……おれ……、なにも、できな……っ、」
「万里…、」
「今日だって、守ってもらうばっかで……、」
こんなことで返せるなんて思ってはいなかったが、それでも何一つできない自分が辛い。
そのネガティブな気持ちを、自分を大切にしてくれている人にぶつけてしまっていることも。
「まったく、お前は」
涙をこらえていると、強張る体を突然抱き寄せられて、驚きに目を瞠る。
「何……」
「お前は真面目すぎるんだよ」
「そんな……こと、」
「俺は楽しいよ。お前とこういうことをするのも、いろんなことに巻き込まれるのも」
「っ……、俺は、昴さんが怪我したら…楽しくない」
「わかった。じゃあ次は楽しんだ上で無傷で済むようにするから」
適当なことを言って、と顔を上げると、久世は本当に楽しげに笑っていて。
その余裕も、自信も、調子のいいことばかり言う口も、腹が立つ。
何も出来なくて、フォローされてばかりで、悔しくて、辛いのに。
それなのに、万里自身もその「次」とやらが楽しみになってくるような気がしてきて、本当に釈然としない。
諦めの境地で、つい笑ってしまった。
「あんたって、ほんと……」
「惚れ直したか?」
「呆れたんだよ!」
まったく、どうしてこの男はこんなに自分に自信があるのだろうか。
今日は、謎の秘密教団に潜入することになって、その後は銃を突き付けられるわ血は見るわで、今までの万里の生活からしたら、想像できないくらいの恐ろしい一日だった。
本当だったら、もっと恐怖に打ちひしがれていたかもしれない。
ショックを受けていても、普通でいられるのは久世がこんな調子だからだろう。
そんなところも、そんなところが好きだと思ってしまう自分も、腹が立つ。
「あんたって、総合的に腹立つ」
宣言しても、焦るどころか楽しそうにしているところなどは、特に。
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