23 / 23
第一章 目覚めたらそこは……
第22話 どうすればいいのか
しおりを挟む
再び宿に戻った私達は部屋を取ろうとしたが……
「イフリーゼ御一行様ですよね?、それでしたらこちらをご利用なさる時はこちらの部屋を使うようにキク様より申しつけられております」
「それはどういう事だ?」
「どういう事かと言われましても、私は上からの言伝をお伝えしているだけなので……」
というやり取りの後、再びあの部屋に戻って来たけれど、どうしてキクは私達を特別扱いするような事をしたのだろうか。
色々と考えてはみたけれど、これと言って答えがでてくることは無い。
ただ、それ以上に大きな問題が起きている以上、この好意は大人しく受け取った方がいいのだろう。
現に、ミコトは家族を喪ったショックから精神的に不安定になっている。
この状況でゆっくりと休める個室を使わせて貰えるのは、助かるとしか言いようが無い。
「あ、またこの部屋なんだ」
「さっき受付で案内されたろ?」
「……ごめん、聞いてなかった」
「……そうか」
とはいえ、宿に着いたはいいが……この後、私達は何をどうしたらいいのだろうか。
冒険者として、昇格試験を受ける準備をするべきか、だがそれだと先程の悲惨な出来事が解決しないだろう。
それとも現場をもう一度確認する為に戻るか?、だが……もしそれで三人を殺せる程の実力を持つモンスターに遭遇してしまった場合、私一人ではどうしようもない。
(リーゼちゃん、これからどうする?)
「……私は取り合えず、一回宿を出て外に行く」
「外にって、兄貴まで何かあったらどうするの?お願いだから何処にもいかないで、ここにいてよ」
「そうしたい気持ちは山々だが、こうなった以上私達今ここで何が出来るのかを見極めなければいけないからな……分かってくれ」
ミコトの事だ、こんな事を言ったら逆上するだろう。
けどそうなると分かっていても、言わないといけない時もある……それにだ、手が付けられなくなったら、セツナの能力で意識を無くして、無理矢理にでも休ませた方がいい。
今は冷静な判断が出来なかったとしても、暫くして頭が冷えて冷静さを取り戻せば問題ない筈だ。
「でもっ!それで兄貴までいなくなったら!?私とセツ姉はどうすればいいの!?」
(ミコトちゃん落ち着いて!大丈夫だから!)
「でも……でもっ!」
(……セツナ、頼む、ミコトを眠らせてやってくれ)
(……うん、でも後で怒られてもしらないよ?)
確かに目を覚ました後、私の顔を見たら怒られるかもしれないが、それ位なら甘んじて受け入れよう。
そう思いながら無言で頷くと、セツナがミコトを優しく抱きしめる。
「え?セツ姉、急にどうしたの!?」
(……ごめんね?ミコトちゃん)
「え?……あ……」
すると、先程まで興奮して手が付けられない状態になっていたミコトが、人形のように力が抜けると、そっと床に横たわらせる。
(……ん、じゃあ後はお姉ちゃんがミコトちゃんの事見てるから、リーゼちゃん……いってらっしゃい)
「あぁ……出来るだけ早く戻る」
(うん、ちゃんと帰って来てね)
「……分かっている」
そうして宿の職員に外に出る事を伝えた後、何処に行くか決めずにあてもなく歩き出す。
……とりあえずはミコトの事は、セツナに任せておけばいいだろうし、眼が覚めのも能力で眠らせた以上は、最短でも一日は目を覚まさないだろう。
長かったらどれくらい眠り続けるのかは分からないが、きっと問題無い……筈だ。
「……とはいえ何処に行くべきか、冒険者ギルドに行く理由もとくにない、洞窟に戻るのも危険だ」
思わず口から独り言が出てしまったのか、すれ違う人に怪訝な顔をされたが、これに関してはしょうがないだろう。
初めてこの街に来た時のように、都合良く天族に出会うなんてことも無い筈だ。
なら……今の私に出来る事は?ここ最近あった事を思い出してみる。
すると……
『その時はこの街の中央に栄花騎士団の本部と貴族が住む区画があるから、そこにある俺の屋敷を訪ねてくれ、……そうだな、周辺を警護している者にこのハンカチを見せてライを訪ねに来たと言えば俺の住んでいる屋敷を教えてくれる筈だ』
という言葉と共にハンカチを渡して握手をして来た、ライと名乗った落ち着いた雰囲気の金髪碧眼の男と、赤い髪を後ろで束ねて三つ編みにしたハスと名乗った元気が取り柄とでも言いたげな男の二人組とのやり取りを思い出す。
「……確かこの街の中央にある栄花騎士団の本部と貴族が済む区画だったな、行ってみるか」
とはいえ、街の中央が何処なのかがそもそも分からない。
だからここは道行く人の中から、誰かに話しかけて道を聞いた方がいいだろう。
そう思い誰でもいいから話しかけようとすると
「……ねぇ、あなた何をしてるの?」
「っ!?」
「……聞こえてないのかしら、ねぇ……何をしているの?」
……いったい、いつ背後を取られたのか。
咄嗟に振り向くとそこには、長い前髪で片方の目を隠した赤目で色白の少女が立っていた。
そして……『ねぇ、もしかして……私の言葉が分からない?』と不安げな声で話しかけて来るのだった。
「イフリーゼ御一行様ですよね?、それでしたらこちらをご利用なさる時はこちらの部屋を使うようにキク様より申しつけられております」
「それはどういう事だ?」
「どういう事かと言われましても、私は上からの言伝をお伝えしているだけなので……」
というやり取りの後、再びあの部屋に戻って来たけれど、どうしてキクは私達を特別扱いするような事をしたのだろうか。
色々と考えてはみたけれど、これと言って答えがでてくることは無い。
ただ、それ以上に大きな問題が起きている以上、この好意は大人しく受け取った方がいいのだろう。
現に、ミコトは家族を喪ったショックから精神的に不安定になっている。
この状況でゆっくりと休める個室を使わせて貰えるのは、助かるとしか言いようが無い。
「あ、またこの部屋なんだ」
「さっき受付で案内されたろ?」
「……ごめん、聞いてなかった」
「……そうか」
とはいえ、宿に着いたはいいが……この後、私達は何をどうしたらいいのだろうか。
冒険者として、昇格試験を受ける準備をするべきか、だがそれだと先程の悲惨な出来事が解決しないだろう。
それとも現場をもう一度確認する為に戻るか?、だが……もしそれで三人を殺せる程の実力を持つモンスターに遭遇してしまった場合、私一人ではどうしようもない。
(リーゼちゃん、これからどうする?)
「……私は取り合えず、一回宿を出て外に行く」
「外にって、兄貴まで何かあったらどうするの?お願いだから何処にもいかないで、ここにいてよ」
「そうしたい気持ちは山々だが、こうなった以上私達今ここで何が出来るのかを見極めなければいけないからな……分かってくれ」
ミコトの事だ、こんな事を言ったら逆上するだろう。
けどそうなると分かっていても、言わないといけない時もある……それにだ、手が付けられなくなったら、セツナの能力で意識を無くして、無理矢理にでも休ませた方がいい。
今は冷静な判断が出来なかったとしても、暫くして頭が冷えて冷静さを取り戻せば問題ない筈だ。
「でもっ!それで兄貴までいなくなったら!?私とセツ姉はどうすればいいの!?」
(ミコトちゃん落ち着いて!大丈夫だから!)
「でも……でもっ!」
(……セツナ、頼む、ミコトを眠らせてやってくれ)
(……うん、でも後で怒られてもしらないよ?)
確かに目を覚ました後、私の顔を見たら怒られるかもしれないが、それ位なら甘んじて受け入れよう。
そう思いながら無言で頷くと、セツナがミコトを優しく抱きしめる。
「え?セツ姉、急にどうしたの!?」
(……ごめんね?ミコトちゃん)
「え?……あ……」
すると、先程まで興奮して手が付けられない状態になっていたミコトが、人形のように力が抜けると、そっと床に横たわらせる。
(……ん、じゃあ後はお姉ちゃんがミコトちゃんの事見てるから、リーゼちゃん……いってらっしゃい)
「あぁ……出来るだけ早く戻る」
(うん、ちゃんと帰って来てね)
「……分かっている」
そうして宿の職員に外に出る事を伝えた後、何処に行くか決めずにあてもなく歩き出す。
……とりあえずはミコトの事は、セツナに任せておけばいいだろうし、眼が覚めのも能力で眠らせた以上は、最短でも一日は目を覚まさないだろう。
長かったらどれくらい眠り続けるのかは分からないが、きっと問題無い……筈だ。
「……とはいえ何処に行くべきか、冒険者ギルドに行く理由もとくにない、洞窟に戻るのも危険だ」
思わず口から独り言が出てしまったのか、すれ違う人に怪訝な顔をされたが、これに関してはしょうがないだろう。
初めてこの街に来た時のように、都合良く天族に出会うなんてことも無い筈だ。
なら……今の私に出来る事は?ここ最近あった事を思い出してみる。
すると……
『その時はこの街の中央に栄花騎士団の本部と貴族が住む区画があるから、そこにある俺の屋敷を訪ねてくれ、……そうだな、周辺を警護している者にこのハンカチを見せてライを訪ねに来たと言えば俺の住んでいる屋敷を教えてくれる筈だ』
という言葉と共にハンカチを渡して握手をして来た、ライと名乗った落ち着いた雰囲気の金髪碧眼の男と、赤い髪を後ろで束ねて三つ編みにしたハスと名乗った元気が取り柄とでも言いたげな男の二人組とのやり取りを思い出す。
「……確かこの街の中央にある栄花騎士団の本部と貴族が済む区画だったな、行ってみるか」
とはいえ、街の中央が何処なのかがそもそも分からない。
だからここは道行く人の中から、誰かに話しかけて道を聞いた方がいいだろう。
そう思い誰でもいいから話しかけようとすると
「……ねぇ、あなた何をしてるの?」
「っ!?」
「……聞こえてないのかしら、ねぇ……何をしているの?」
……いったい、いつ背後を取られたのか。
咄嗟に振り向くとそこには、長い前髪で片方の目を隠した赤目で色白の少女が立っていた。
そして……『ねぇ、もしかして……私の言葉が分からない?』と不安げな声で話しかけて来るのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる