箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―

物部妖狐

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第一章 死んだらそこは異世界でした

9話 集落に滞在して暫く立ちましたが平和です

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 集落に滞在して気付いたら一週間も経っていた。
その間に私の周りで合ったことと言えば、ゼンさんの汚い部屋を掃除して、料理が下手な彼の変わりにご飯を作ってあげたり、まるで古い時代のお嫁さん見たいな事をしてる。

 他には毎日キューちゃんのところに行ってこの世界の常識や文字を教えて貰っているけど、日本語と違って全然わかりやすい。
どうして漢字に、カタカナ、ひらがなと三つの文字を書かなければいけないのか。
この世界みたいに分かりやすく纏めてくれていたらいいのに……、なんて言えばいいのかなローマ字を逆さにして崩した様な感じの文字だけど、これはこういう感じなんだなぁって思うと覚えるのは簡単で……

『これは……凄いですね、短時間でここまで文字を覚えられた人は初めてです』

 とキューちゃんに驚かれたけど、そこは元居た世界の教育のおかげだと思う。
おかげで直ぐに文字の勉強は終わったけど……、その後の戦闘訓練に関しても、後は実戦で能力の使い方を覚えた方が良いと言われちゃったから、ゼンさん達と旅に出てから少しずつ覚えて行こうかな。

「……でもこの集落、家と畑しか無くて暇だなぁ」

 一月位したら旅に出る準備が出来るから、その間に集落の人達と交流を持ってこの世界に馴染めるように頑張ってみてくださいってキューちゃんに言われたけど、皆私の姿を見て頭を下げたり跪いたりして、まともに会話が出来なくてつまらないなぁ。
さすがに私もこれは良くないなぁって思って、カーくんの所に行ってみたけど……

「暇なのはしょうがないんじゃない?……、まぁ俺からしたら楽しい事が多いけどさ」
「楽しい事って、道具を持って畑を耕してるだけじゃない?」

 そう言えばこの世界に来て少しだけ成長出来た事がある。
ある程度会話をした相手となら、少しだけ普通に話せるようになった事かな……。
現にキューちゃんやカーくん、それにゼンさんとなら緊張する事なく会話が出来るようなったのは嬉しい。

「それがいいんだよ、魔界に居た時は作物が出来るような土地は限られていたから数が限られていたから、楽しくなってしまうんだ」
「えっと、そうなの?」
「シャルネには分からないと思うけど、自分で食べる物を作れるのは嬉しいし……それにこうやって畑を耕しながら、どういう状態の土でなら美味しいや浅いが作れるか研究する事で、魔界に帰れるようになったら役に立てると思うし」
「役に立てるって……、あっちでも一部で出来るって言ったなかった?」
「その一部が問題なんだよ……、草食の種族達からしたら決まった数しか増える事が出来ないし、そうなると肉食の種族も増える事が出来なくなる、前まではそれで良かったけど今はこの世界と繋がったおかげで爆発的に数が増えつつあるんだ、取り合えず食糧事情に関して今はこの世界の生物や植物のおかげで何とかなってるけど、この戦いが終わった後の事を考えたら改善した方が良いと思わない?」

 なんかカーくんが良く分からない難しい話をしてる。
その言い方だと魔界だと、草食の魔族の人達が肉食の種族の食料になってるという風に聞こえるけど私の聞き間違いじゃないよね。
更にはこの世界の生物や植物のおかげって、つまり生物の範囲が何処まで入るのか分からないけどもし人も入ってるならやだなぁって思うけど、お腹が空いた時に人に関して空腹感が少し湧いてしまった事もあるから、魔族の人達や私からしたらたまたま共通の言語を話す事が出来る存在でしかないのかもしれない。

「もしかしてだけど、この世界の人を食べたりしてる?」
「一部の種族は、繁殖の為にこの世界の人型種族の身体を苗床にしたり、体に寄生して子孫を残したりするけど、味の方は個体によって当たり外れが激しいらしいから食べるのには向かないらしい」
「という事は食べた事ある種族もいるんだ……、カーくんは?」
「俺はどちらかと言うと……、この世界で言う所だと蛇の魔族だから一度食事をしたら運動量に応じて最長で一週間は水分以外は取らないで良い方の肉食だけど、最近は野菜を食べるようにしてるかな」
「へぇ……」

 肉食の種族が野菜を食べるって大丈夫なのかな……。
色々と心配になるけど、カーくんが体調を崩さないのなら大丈夫なのかも?

「本来の姿なら消化出来ないんだけど、グロウフェレス君が考え俺達にも使えるようにしてくれた人化の術のおかげで、この世界の人の形になる事を受け入れた人達は食べたい物を食べれるようになったんだよね」
「あれ?それなら私も人化の術を使ってるのかな……」
「使ってる気配はないから、最初からこの世界に合わせて産まれさせてくれたのかもしれないね

「お父様とお母様に感謝しないと……」

 魔神と天神様の気遣いに感謝しながら思うけど、それならどうしてキューちゃんは尻尾と狐の耳が残っていたり、他の人達も獣の姿が残っているのかな。
人の耳と獣の耳両方あるのって不便な気がするから、やるなら完璧に人に化けた方がいいと思うんだけど……

「んー、でもそれなら体の一部に尻尾とかある人ってどうして全身を変えないの?」
「変えないのではなくて変えられないんだよ……、この術は俺達の命そのものに刻む事で使えるようになるんだけど、産まれて来る子孫達の魂にも術式が刻まれて行き、最終的には赤子の時から人の形として産まれるように設計されてるらしい……、でもそれだと何時か自分達が魔族で会った事を忘れてしまうかもしれない、そうならない為に体の一部に種族の特徴を残すようにしたんだってさ」
「ちょっと、難しくて分からないや」
「それでいいと思う……、グロウフェレス君曰く、戦争が終わった後に魔界に帰る事が出来くなった場合、この世界で生きるのに必要な事だって言う話だけど、正直一部の種族からは本来の耳とは別に偽耳と呼ばれる人型種族の耳が生える事に違和感を感じる事が多いらしいしね」
「んー、色々あるんだねぇ……、取り合えずキューちゃんが色々と考えて行動してるのは分かったかなぁ」

……そんなやり取りをしている間に、陽が傾いて行き遠くの空が茜色に染まりつつある。
そろそろゼンさんが集落の外の見回りを終えて帰って来る時間かな、今日は何を作ろう。
って言っても私では人がぎりぎり食べれる範囲の料理しか作れないから、彼に切り分けて貰ったらお肉を焼いて香草で味付けする事しか出来ないんだけど……、最近はそれを美味しいと食べてくれるのは正直嬉しい。
そんな事を思っていると……『そろそろゼン君が帰って来る時間だろうし、お土産に今朝取れた野菜を上げるから持って帰りなよ』ってカーくんが木箱に入った野菜を持たせてくれる。
お礼を言いながら受け取ると、元居た世界で流行っていた歌を口ずさみながら、この楽しい時間がずっと続けばいいなと思って家に帰るのだった。
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