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第一章 死んだらそこは異世界でした
31話 地下に行ってみたら
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やっぱりこの人に関しては凝った料理を態々作らなくても良いみたい。
現に作ったご飯を美味しそうに食べてるし……、でも出来ればちゃんと味わって欲しいなぁって思うけど無理だろうなぁ。
「よし……ごちそうさまっと、相変わらずシャルネの作る飯は上手いな」
「じゃあ片づけて来るね?」
「それ位なら俺がやる、さすがに作って貰って片づけないっていうのは良くないだろ?……いつもなら片づけてくれる奴がいんだけど今日に限って出てこねぇんだよな」
「あぁ……それなら、釜戸の所にいたよ?料理の材料を地下から出して持ってきてくれたかな」
「地下だぁ……?うちにんなもんあったか?」
あったかって言われても……幽霊さんが入ってたからあると思うんだけど、もしかしたらゼンさんに内緒で作ってたりするのかも。
あれ?そう思うとあの食材達もどうやって調達してるのかな……、ちょっとどころか凄い気になる。
「あったよ?試しに一緒に行く?」
「あぁ……、戻すついでに案内頼むわ」
ゼンさんが食器を持つとそのまま下の階に降りて行くのに着いて行くけど、何ていうか本当に寝て起きるだけの家なんだぁって感じる。
食器を洗う為の場所も外の釜戸の近くにあるし、今まで料理を全て幽霊さんに任せてたんだろうなぁ……、でもこれからは私が面倒を見るけど出来れば旅について来て欲しいなぁ。
だってさ、カー君はある程度の料理は出来るけどそこまで食べる事には興味がないみたいだし……ゼンさんに関しては取り合えず食材に火を通して食べちゃう人だから、私以外にもちゃんと美味しいご飯が作れる人が欲しい。
あ、でもそうなるとさっき料理をしてる時に幽霊さんの身振り手振りでの忠告とかを無視しない方が良かったかも、初手バッドコミュニケーションは良くないよね……後でちゃんと謝らないと……
「……外を見る限り何処にもそれっぽいのは無いけど、どこら辺に地下があるんだ?」
「えっと確か外にあるトイレとお風呂が入ってる建物の近くで、ここら辺にあった気がするけど」
「ここら辺って言われてもな……、何かしら動いたような跡があれば分かりやす……いや?なんかここだけ僅かに足元の感覚がおかしいな、ちょっと待ってろ」
「え、あ……うん」
ゼンさんが片足を上げたかと思うと、地面に向かって勢いよく踏み下ろす。
するとドスンっという感じとは違って、何か空洞のような物を蹴ったかのような不思議な音がする。
「あぁ……何かあるな、でも入り口が分からねぇやこういう時は」
「……こういう時は?」
「とりあえず壊せば入れんだろ?」
「ゼンさん……そういう乱暴なのは良くないよ?」
「いいんだよ、ここは俺の家なんだから敷地内に変なのがあったら調べねぇと夜も安心して眠れねぇ……よ?、あ?」
地面に拳を叩きつけようとするゼンさんの目の前で地面の一部が上がりそこから首の無い幽霊さんが現れたかと思うと、壊すのをやめて欲しいと言いたげな仕草でゼンさんに近づくと膝を折って正座をして頭を下げる。
「……何処にもいねぇと思ったらここにいたのかよ、で?これはなんだ?俺が住んでる時にはこんなもん無かった筈なんだけど?」
ゼンさんの声を聞いた幽霊さんが急いで何処からか木の棒を持って来ると、地面に絵のような物を描き始める。
何となく分かる範囲だと、短い髪のこけしみたいな顔をした女の人?が、幽霊さんと話して地下室を作ったみたいな感じだけど、絵の描き方が独特過ぎて詳しく分かりそうにない。
「……わりぃ何一つとして分かんねぇ」
「えっと、多分この短い髪の女の人が幽霊さんと話して作ったみたいだよ?」
「シャルネすげぇな……こいつの言いたかった事分かるのかよ、ただ短い髪の女でここを訪ねてくる奴と言ったら一人しかいねぇな、これを作ったのはセイラだな」
「……あのゼンさんとは相性が悪いっていう人?」
「あぁ、間違いねぇだろうな……、あーえっと名前を忘れちまったけどアンデッドのおまえさ、悪いけど中に入らせて貰うぞ?シャルネもついて来てくれ、大丈夫だとは思うが一人で入って何かがあったらまずいからな」
そう言って地下にゼンさんが入って行くのを追って一緒に行くけど、中は踏み固められた土で作られた階段があって慎重に下りて行くとどんどん空気が冷たくなっていく。
そして階段が終わると真っすぐに続く通路があって、道なりに進んでみると光が届かない場所の筈なのに壁に書かれた文字のような物が光っていて、足元がちゃんと見える位に明るい。
でも……進めば進むほど周囲の壁が凍り付いて行き……
「……こりゃあ、大部屋に出たかと思ったら随分大がかりな事しやがったな」
「凄い寒いけど……どうなってるのこれ」
「地下氷室だよ、冬に出来た氷が解けないようにこうやって保存すんだけどさ、まさか食料を保存する為に作るとはなぁ」
「もしかしてだけど、ゼンさんが戻って来た時に美味しいご飯が食べれるように作ってくれたんじゃない?」
「……そうか?まぁおかげで上手い飯が食えたからいいけどよ、とりあえず寒いからさっさと上に戻ろうぜ?」
……確かにここにいると凍えて風邪を引きそうだから早く戻った方がいいかも、そう思って二人で急いで地上へと上がると『たのもー!ここに三英傑の一人、キリサキ・ゼンが戻って来ていると聞いて尋ねに来た!立ち合いを所望する!』っていう声が聞こえる。
それを聞いたゼンさんが『シャルネ、金蔓が来たぞ?今夜はあいつから巻き上げた金でうまいもん食いに行くぞ!』と笑いながら一人で家の中へと向かって行くのだった。
現に作ったご飯を美味しそうに食べてるし……、でも出来ればちゃんと味わって欲しいなぁって思うけど無理だろうなぁ。
「よし……ごちそうさまっと、相変わらずシャルネの作る飯は上手いな」
「じゃあ片づけて来るね?」
「それ位なら俺がやる、さすがに作って貰って片づけないっていうのは良くないだろ?……いつもなら片づけてくれる奴がいんだけど今日に限って出てこねぇんだよな」
「あぁ……それなら、釜戸の所にいたよ?料理の材料を地下から出して持ってきてくれたかな」
「地下だぁ……?うちにんなもんあったか?」
あったかって言われても……幽霊さんが入ってたからあると思うんだけど、もしかしたらゼンさんに内緒で作ってたりするのかも。
あれ?そう思うとあの食材達もどうやって調達してるのかな……、ちょっとどころか凄い気になる。
「あったよ?試しに一緒に行く?」
「あぁ……、戻すついでに案内頼むわ」
ゼンさんが食器を持つとそのまま下の階に降りて行くのに着いて行くけど、何ていうか本当に寝て起きるだけの家なんだぁって感じる。
食器を洗う為の場所も外の釜戸の近くにあるし、今まで料理を全て幽霊さんに任せてたんだろうなぁ……、でもこれからは私が面倒を見るけど出来れば旅について来て欲しいなぁ。
だってさ、カー君はある程度の料理は出来るけどそこまで食べる事には興味がないみたいだし……ゼンさんに関しては取り合えず食材に火を通して食べちゃう人だから、私以外にもちゃんと美味しいご飯が作れる人が欲しい。
あ、でもそうなるとさっき料理をしてる時に幽霊さんの身振り手振りでの忠告とかを無視しない方が良かったかも、初手バッドコミュニケーションは良くないよね……後でちゃんと謝らないと……
「……外を見る限り何処にもそれっぽいのは無いけど、どこら辺に地下があるんだ?」
「えっと確か外にあるトイレとお風呂が入ってる建物の近くで、ここら辺にあった気がするけど」
「ここら辺って言われてもな……、何かしら動いたような跡があれば分かりやす……いや?なんかここだけ僅かに足元の感覚がおかしいな、ちょっと待ってろ」
「え、あ……うん」
ゼンさんが片足を上げたかと思うと、地面に向かって勢いよく踏み下ろす。
するとドスンっという感じとは違って、何か空洞のような物を蹴ったかのような不思議な音がする。
「あぁ……何かあるな、でも入り口が分からねぇやこういう時は」
「……こういう時は?」
「とりあえず壊せば入れんだろ?」
「ゼンさん……そういう乱暴なのは良くないよ?」
「いいんだよ、ここは俺の家なんだから敷地内に変なのがあったら調べねぇと夜も安心して眠れねぇ……よ?、あ?」
地面に拳を叩きつけようとするゼンさんの目の前で地面の一部が上がりそこから首の無い幽霊さんが現れたかと思うと、壊すのをやめて欲しいと言いたげな仕草でゼンさんに近づくと膝を折って正座をして頭を下げる。
「……何処にもいねぇと思ったらここにいたのかよ、で?これはなんだ?俺が住んでる時にはこんなもん無かった筈なんだけど?」
ゼンさんの声を聞いた幽霊さんが急いで何処からか木の棒を持って来ると、地面に絵のような物を描き始める。
何となく分かる範囲だと、短い髪のこけしみたいな顔をした女の人?が、幽霊さんと話して地下室を作ったみたいな感じだけど、絵の描き方が独特過ぎて詳しく分かりそうにない。
「……わりぃ何一つとして分かんねぇ」
「えっと、多分この短い髪の女の人が幽霊さんと話して作ったみたいだよ?」
「シャルネすげぇな……こいつの言いたかった事分かるのかよ、ただ短い髪の女でここを訪ねてくる奴と言ったら一人しかいねぇな、これを作ったのはセイラだな」
「……あのゼンさんとは相性が悪いっていう人?」
「あぁ、間違いねぇだろうな……、あーえっと名前を忘れちまったけどアンデッドのおまえさ、悪いけど中に入らせて貰うぞ?シャルネもついて来てくれ、大丈夫だとは思うが一人で入って何かがあったらまずいからな」
そう言って地下にゼンさんが入って行くのを追って一緒に行くけど、中は踏み固められた土で作られた階段があって慎重に下りて行くとどんどん空気が冷たくなっていく。
そして階段が終わると真っすぐに続く通路があって、道なりに進んでみると光が届かない場所の筈なのに壁に書かれた文字のような物が光っていて、足元がちゃんと見える位に明るい。
でも……進めば進むほど周囲の壁が凍り付いて行き……
「……こりゃあ、大部屋に出たかと思ったら随分大がかりな事しやがったな」
「凄い寒いけど……どうなってるのこれ」
「地下氷室だよ、冬に出来た氷が解けないようにこうやって保存すんだけどさ、まさか食料を保存する為に作るとはなぁ」
「もしかしてだけど、ゼンさんが戻って来た時に美味しいご飯が食べれるように作ってくれたんじゃない?」
「……そうか?まぁおかげで上手い飯が食えたからいいけどよ、とりあえず寒いからさっさと上に戻ろうぜ?」
……確かにここにいると凍えて風邪を引きそうだから早く戻った方がいいかも、そう思って二人で急いで地上へと上がると『たのもー!ここに三英傑の一人、キリサキ・ゼンが戻って来ていると聞いて尋ねに来た!立ち合いを所望する!』っていう声が聞こえる。
それを聞いたゼンさんが『シャルネ、金蔓が来たぞ?今夜はあいつから巻き上げた金でうまいもん食いに行くぞ!』と笑いながら一人で家の中へと向かって行くのだった。
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