箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―

物部妖狐

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第二章 修行、そして旅に出る

23話 彼女が尋ねに来た

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 あの後、旅に出る準備をする為に家に帰る事になったけど、これと言って私にはやる事が無い。
ゼンさんは古い馴染みに武器のメンテナンスをして貰うと言って、鍛冶屋に行ってしまったし、カー君は旅に出る前に奥さん達が住んでいる家に戻り色々とやる事があるらしく、一人だけ残されてしまった。
だからどうしようかなって手持ち無沙汰にしているうちに日が暮れてしまう。
しょうがなく一人で夕飯を食べると、後はお風呂に入って寝るだけになってしまった。
何て言うかつまらないなぁって思いながら外に出ると、広い庭を歩き出す。
すると、見覚えのある銀色のエッチ……いや、露出の多い着物に身を包んだ女の人が敷地の外にいて……

「あ……セ、セイラさん?」
「あら、あなた、こんな夜更けに何をしているの?」
「そ、そ、それは、あな──」
「ムカつくわね、はっきりと答えたらどう?」
「ど、どうって言われ……ても」

 眼と眼があったらバトルが始まる。
何て言うかこういう流れって、何かで聞いたような気がするなぁ、何かポケットから出て来るペットをじゃれあわせて競技的な戦いをするようなゲームやアニメで、遊んだことが無いから分からないけど、結構有名な作品だったと思う。
でもセイラさんの言うように、はっきりと答えない私の方に問題があると思うから、彼女が怒るのも当然だ。

「まぁいいわ……、マチザワからかなりの人見知りだって聞いてるし……私ね、シャルネさん、あなたに会いに来たのよ」
「わ……たしに?ゼンさんに会いに来たんじゃないの?」
「どうして、私があの戦いにしか脳が無い馬鹿に会いに来なくちゃいけないのよ!」
「え!?あ……ご、ごめ……なさ」
「……いきなり大声を出して悪かったわ、だからそんな謝らないでちょうだい」

 この人はいったい、何のようがあって尋ねに来たのかな。
セイラさんが好意を寄せているゼンさんに会うのが目的なら分かるんだけど、数回顔を合わせた程度で、そんなに交流の無い私に何の用があるのか。
色々と考えては見るけれど、答えが出てくることが無くて戸惑う。

「え、あ……えっと、私」
「とりあえずあなた、今から私と戦いなさい」
「……え?」
「私はあなたに負けたんじゃなくて、ゼンに負けたの!分かる?私の……いや、首都を出て行ってしまってからも、私達は彼の仲間で大事な人なの!そんなゼンと旅に出るあなたの実力が分からないまま、私は彼を送り出したくない!」
「セ、セイラさん、あなた……」

 何も無い空間から彼女の両手に二本の短槍が表れる。
そして武器を構えると姿勢を低くして、あ……後ろからだと凄い光景が見えそう。
今このタイミングで誰かが通り過ぎでもしたら、凄いラッキースケベ?いや、もろみえスケベ?になってしまう。
これは私が何としてでも気づかせてあげないと!

「セイラさん!」
「きゅ、急に大声を出して何よ」
「その姿勢後ろから見たら、色々と見えそう!ほら、スカート短いし!腋からは胸が見えそうだし!服装エッチすぎ!」
「はぁ……?あなた戦いを挑みに来た私に対して何言ってるのよ」
「戦いよりも、服装の方が大事でしょ!?セイラさん、私には負けるかもしれないけど折角美人でかわいいんだから色々と気を付けないと!もし卑猥な事を考えて近づいて来る危ない人がいたらどうするの!?女の子なんだから、ちゃんと気を付けないとダメだよ!」

 思わず大声でまくし立ててしまった。
でもこればっかりはしょうがないと思う、だってさ、女の子が一人夜道を歩いてたら何があるか分からないじゃない。
私が転生する理由になったのも、女性が連れ込まれて乱暴されそうになるところを助けたからだし、この世界にもそういう危ない人がいてもおかしくないでしょ。
だから、人見知りしておどおどと話してる余裕何て無いし、セイラさんが同じような目にあって傷つくところ何て私は見たくない。

「……あ、あなた、しれっと自分の事を私よりも美人でかわいいって言ってない?」
「……へ?」
「そういう所ほんと嫌い、全部嫌い!人を気遣うように見せかけて、自分の方が私よりも上だって言いたいわけ?ほんっとあなたって性格悪いわね!、そういうの男性には受けが良いかもしれないけど、同性には嫌われるから止めたら?」
「そ、そんな考えでいったんじゃ……」

 もしかしたら言い方を間違えてしまったのかもしれない。
だって……セイラさんが顔を真っ赤にして怒りだしてしまったし、雰囲気的に謝ってもダメそう。
ならこういう時はどうすればいいのかってなったら、彼女が落ち着くまで話を聞いてあげるくらいしか無い気がする。

「じゃあ、どんな考えで、どんな気持ちで今の言葉を言ったのよ!ゼンには私がいるから、昔の女である私の居場所はないとでもいいたいの?確かに私は彼からしたら、恋愛対象には見られてないし、むしろ妹みたいな存在として認識されてるのも知ってるわ、でもね!それでも私はあなたよりもずっと近くで、彼が戦ってる姿を見て来たし、この国の為に尽くして来たところも見て来たの、ポッと出のあなたに彼の何が分かるのよ!」
「……確かにセイラさんと比べたら、ゼンさんと一緒にいる時間は短いし、知らない事も沢山あるけど、ちゃんと一緒にいていいなって思ったり落ち着くなって思うところは沢山あったよ?」
「……へぇ、何処か言って見なさいよ」
「乱暴な所があるけどそれと同じくらいに優しいし、結構面倒見が良くて一緒にいると安心するところ、私の事を綺麗とか可愛いって言ってくれたり、こんな性格が悪くて人見知りが酷い私を認めてくれて、隣にいる事を許してくれる、そんなゼンさんの事、とっても大好きだし、これからも一緒にいたいって──」
「もういいわ聞きたくない、あなたの気持ちは分かったから……」

 セイラさんが、更に姿勢を低くして両手の短槍を十字に交差させて先端を私へと向ける。
そして彼女の視線が胸の方に来ると、狙いを定めるように目つきが鋭くなっていく。

「この一撃を止めたり、受ける事が出来たらあなたがゼンと一緒に旅に出ることを許してあげる」
「……それでセイラさんが納得してくれるなら、頑張る」
「そう、なら頑張ればいいわ……」

……セイラさんが音を残さずに一瞬で後ろに下がると、月に照らされた彼女の銀色に輝く髪が一筋の線になって私へと向かってくる。
その速さは、試験で見た時とは比べ物にならなくて、驚きの余り背中から天使と悪魔の翼が出現させ、身体を守る為に身体を包む。
瞬間、金属同士がぶつかり合うような音と共に凄まじい衝撃が身体を襲うのだった。
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